「…アノー、ハンターさん。殺気というかなんというか…、たまにグラスが見せるようなオーラが出てるんデスケド…」
俺と並んだエルは俺が放っているオーラを感じて震えている。
「俺はトレーナーへの怒りをこのレースで発散しようって思ってるから。後エルがそう話してたってグラスに伝えておこう」
「ケ!?じょ、冗談デスよ!」
俺の言葉にエルは慌ててそう返してくる。
「とりあえず、今から俺はスズカ並み…とはいかないけど、スカイ並みの逃げで走る。しっかり追いつけるように走ってくれ」
「分かったデース!」
「俺が逃げを打つことなんて滅多にないんだ。しっかり吸収してくれよ?」
俺がそう話すとエアグルーヴが話してくる。
「ハンターさん、エル、準備は…?」
「大丈夫だ」「OKデース!」
俺とエルは同時にそう返す。
「ヒシアマー!しっかり着順見といてくれよー!」
俺がそう叫ぶと「分かってるー!」という声がゴールにいるヒシアマから帰ってきた。
「それでは、よーい…はじめっ!」
エアグルーヴの号令と共に、俺は一気に加速していく。
逃げはあんまりやったことがない。やったのは併走を含めて数度だけだ。
…まあできないわけじゃないが。単純にギアを変えるのを早くするだけだ、それ以外の何でもない。距離も長距離じゃなくて中距離だしな。
俺はガンガン後ろを気にせずに加速していく。
…逃げは孤独だ。今回の相手はエルだけだが、本番のレースとなれば十数人が俺を目指して走ってくる。
…今もエルの息遣いが後ろから聞こえてくる。いつもだったらこれが俺の前から聞こえてくるんだけどな。
やっぱなんともいえねーな。この空気感は。
途中で再加速できる脚、そしてこの何とも言えない空気に耐えるためのメンタル。逃げウマとしてはこの二つが重要だ。
…ホントにスズカは毎度毎度よくやるよ。
そういえばこの前「先頭のさらにその先を目指したい」って言ってたからな…。
俺は第4コーナーを回り、ホームストレートへと入っていく。
…ちっ、やっぱ追い込みの時に比べたら足が重いな。でもここからが勝負だ。
エルも最大スピードで追いかけてくる。
もう一度、加速する!
俺は一気に再加速していく。
…ゴールは見えた。エルも2バ身くらい後ろにいる。
俺が併走トレーニングだとは言え、こんなとこで負けるわけにはいかねーんだ!
俺はそのままスピードを維持しつつ、ゴールへと飛び込む。
「ゴール!」
…走り終わった俺は息を整えていく。
「…あっぶねー、ワンチャン負けるとこだったよ」
エルはそう話す俺に膝に手をつきながら話していく。
「いや、ワタシも限界だったノデ多分追いつけなかったデース…。さすがはハンターさんデスよ…」
「おいおいエル、クラシックの後で走ることになる本気のスズカの逃げはこんなもんじゃねーぞ?
お前もしっかりトレーニング積んでいけ。
俺も空いてるときなら手伝ってやるからよ」
「了解デース…」
俺は東条トレーナーの元へと戻りながら、エルにそう話していった。