関係者用駐車場に車を停めて、俺とスぺはレース場の正門へとやって来た。
ここに来るまでの看板や屋台、そしてターフやスタンドなど、スぺは色んなところに目を輝かせていた。
…っていうか食いすぎじゃねえか?いつの間に買ってんだよ。
まあ、まずはパドック連れてくか。
俺はスぺをパドックの方に誘導していく。
「…スぺ、ここがパドック。走る前のウマ娘を一人ずつお披露目する場所だ。いつかお前も立つことになるだろうけど」
「はー…」
スぺは目を輝かしたままだった。
ちょうど場面は一番人気のサイレンススズカ。…最近伸び悩んでるみたいだけど今日はどうだろうか。
…と、思っていたところ。
「トモのつくりもいいじゃないか…、まさに」
「早速何してんだコノヤロォ!」
俺の蹴りは見事に入り、スぺのトモを触っていた男は一気に飛んでいく。
「…ふう、大丈夫かスぺ。ウチのトレーナーが失礼したな」
「は、はい…。というかウチのって…」
スぺは顔を赤くして、吹っ飛ばされた男を見ている。
俺はスぺの言葉に続けていく。
「そ、この人トレセン学園のトレーナー。行動はアレだけど見る目は保証するよ。
…沖野さん、いい加減その癖やめた方がいいっすよ」
俺がそう話すと沖野さんは「そうはいってもなー…」という感じだ。
「やっぱり実際見てみないと分からないことってあるだろ。…というかお前今日はオフにしてたはずだろ、なんでここ来てるんだ?」
沖野さんの言葉に「今日はコイツの案内でココ来てるんです」と続けていく。
…そういえば、スぺがこっちに来てることアイツらに言ってなかったな。
「沖野さん、ちょっとスペシャルウィークのこと、見ててもらえますか?」
「別にいいが、何かあったか?」
「いや、ちょっと電話したいなって思って。元々スぺはそのまま寮に連れていく予定でしたし。
…スぺ、もしまた足触られたら思いっきり蹴っ飛ばしていいからな。この人慣れてるから多少のことなら大丈夫」
そう言って俺はパドックの人混みから離れていった。
◇ ◇ ◇
「…すまないフジ、今大丈夫か?」
『ハンターさんですか?…別に構わないですけど、何かありました?』
俺が電話したのは栗東寮の寮長フジキセキ。スぺが入る予定の寮の寮長だ。
「ああ、今日入る予定のスペシャルウィークっているだろ?」
フジは『そうですね』と返し、俺は話を続ける。
「実は今、府中レース場に来ててな。
…多分だけどウイニングライブも見ることになるだろうから、そこから急いで車を回したとしても6時には間に合わないと思う。
悪いけどその辺りの調整ってできるか?あれだったら今すぐにでも送り届けるけど。
元々ここに連れてきたのは俺だから責任は俺が取るよ」
フジは『いや』と言葉を続けていく。
『その子には今は思いっきりレースを見させてあげてください。
…ハンターさんも見たと思いますけどスペシャルウィーク、色々あるみたいじゃないですか。
…その代わりと言っちゃなんですけど、イタズラに付き合ってもらいますよハンターさん』
俺はその言葉を聞いて苦笑いしながら話していく。
「…ほどほどにしてくれよ?ヒシアマにならどれだけやっても俺が許すけど」
『ちょっと、ハンターさん!?今のってどういうことだい!?』
…いたのかヒシアマ。
ヒシアマゾン。俺の寮、美浦寮の寮長であり、フジの主なイタズラ対象である。
「なんだ、ヒシアマもいたのか」
電話越しでフジの苦笑いを含む声が聞こえてくる。
『ちょうど話してたとこでしてね。ヒシアマでしっかり練習してからさせてもらうことにしますよ』
『だから、やめなってフジ!?』
ヒシアマのそんな叫びが聞こえてきた。