「や…、やったー!スズカさん、ハンターさんやりました!」
スぺはそう言いながら俺とスズカに抱き着いてくる。
「ええ、おめでとう!」
「ああ、よくやったぜ。俺はお前を誇りに思うよ」
スズカは改めてスぺを抱きしめ、俺はスぺの頭を撫でる。
そんな中、エルが俺達に近づいてきた。
「…スぺちゃん」
…このエルはいつも俺たちが見ているエルとは違った。
「…ありがとう。
ワタシ負けたけど、今まででいっちばん楽しいレースでした!」
「…私も!エルちゃん、ありがとう!!」
スぺはエルにそう言いながら抱き着いた。
東京レース場から惜しみない拍手が送られる。
エルにとっては初めての敗北だ。悔しさもあるだろうが、間違いない。
…これは素のエルだ。
スぺがスピカの面々にもみくちゃにされてる中、俺はエルに近づき話す。
「…素に戻ってたな、エル。久々に見たよ」
エルは俺と同じように小声で返してくる。
「今の素直な気持ちを伝えたくて、いつものワタシじゃダメだなって…」
そのままエルは続けていく。
「…でも、負けるっテ…、こんなに悔しいんデスネ…」
エルの目には涙が浮かんでいる。
ここまで負けなしで突っ走って来たんだ。その悔しさは計り知れない。
俺はエルの頭に手をポンと置く。
「…ああ。こっからどうするか、それはお前の頑張り次第だ。
この後東条さんやルドルフにしっかりしごいてもらって来い。俺も時間空いてるなら走ってやっからよ」
「…ハイ!」
エルは俺にそう元気よく返した。
◇ ◇ ◇
…ダービーから戻ってきて。
「も、もう一本…!」
俺はトレセン学園のダートコースを走っていた。
…1週間後、サマードリームトロフィーの予選第2戦がある。
ここで勝つことが出来れば、本戦への出場確定だ。
…ドリームトロフィーを連覇している俺が、予選で終わって良いわけがない。
それにHuntersに聞いたところ、第2戦用、本戦用と別の応援歌を用意してくれたそうだ。
その期待に答えないわけには行かない。
「よっしハンター、ラスト一本、全力で行け!」
沖野さんからそう俺に声がかかる。
「よーい、スタート!」
俺は土煙をあげながらダートを駆け抜けていく。
…俺のライバルは、間違いなくアイツ、スマートファルコン。
俺が去った後のトゥインクルシリーズのダートを盛り上げ続けた第一人者だ。
あいつの走り方は…とにかく逃げる。アイツの大逃げはスズカにも劣らないだろう。
…追い込みを信条とする俺にとっては、良い相手だ。
ファル子も恐らく勝って、本戦でぶつかる筈だ。
そのためにもここからしっかり準備して行かないとな。
俺はいつものようにスピードを上げていった。