46話
「…えぐすぎんだろ」
俺はスズカの毎日王冠の走りを見てそう呟いた。
グラスやエル、それにエイシンフラッシュやナイスネイチャも一緒に出たものの、全く気にせずに走っていった。
…俺も頑張らないとな。
来たるウインタードリームトロフィーに向けて、俺もしっかり調整していかないとな。
◇ ◇ ◇
スぺの菊花賞は、スカイがレコードを出して負けた。
…レコード出されたらどうしようもない。
俺の次のレース、ウインタードリームトロフィーダート予選第1戦、これも京都だ。
…という訳で京都に来ている。
今日はスピカのメンバーはいない。
…それでも俺は俺の走りをするだけだ。
俺はホテルの中で、ストレッチをしながらそう思った。
◇ ◇ ◇
レース当日。俺は試してみたいことがあった。
沖野さんからは俺が相談すると「お前に任せる」とだけ帰ってきた。
それなら問題ないだろう。
もう耳になじんだ俺の応援歌を聞いて、ゲートに入る。
…数少ない本番のレースで試せるとしたらここしかない。
ゲートが開かれると同時にウマ娘たちはスタートを切る。
…そして俺は、最初からギアを全開にして走り出した。
本戦だったらまずできないこと。予選プラスその第1戦だからできることだ。
他のウマ娘も驚いている。
…それもそのはずだ。このところ俺は追い込みしかしていない。
逃げを打ったのは一時のエルとの併走トレーニングの時のみ。
スタンドからも驚きの声があがる。
だが、その後すぐに俺の応援歌が流れてくるのが聞こえてきた。
モンキーターンに後押しされて、俺は第2コーナーを回る時にはトップスピードだった。
…俺が今回大逃げ策をとったのはファル子の気持ちを感じるため。
勝つために必要なことは、まず敵を知ること。
そのために大逃げをかました。ファル子のように走れば、何かつかめると思ったからだ。
…第4コーナーを回り、後ろとは差があるものの俺の足も落ちてきたように感じた。
後ろからは全員の目が俺をターゲットにしているのが伝わってくる。
でも、外から見ていた限り、スズカやファル子やブルボンといった大逃げ組はここからの加速力が段違いだ。
後ろからのプレッシャー、そして誰もいない前方へと駆けていくこの気持ち。
…ずっと後ろからターゲットに狙いを定め、一気に追い込む俺にはなかなか味わえないものだ。
俺はそこから京都の坂を登り切り、右手を上に掲げながら先頭でゴールテープを切る。
後ろを確認してみるといつもよりかは差は縮まっていた。
足もこの前の本戦と比べると明らかに消耗していた。
…やっぱ慣れないことはするもんじゃねえな。
勝利のSee Offを聞きながら芝を滑りながら叫んだ俺は、そう感じていた。