ゲートが開かれて、ウマ娘達がスタートしていく。
いつも通りスズカは最初からかっ飛ばして周りのウマ娘との差を付けて行く。
エルもいつもより早いペースで走り、2番手につけ、その後ろにはヒシアマがいる。
…とはいえ、スズカと他のウマ娘の差は縮まらない。
第3コーナーを回り、1000メートル通過。
「57秒4…!?」
フジがそう驚く。
「…いつも以上にハイペースだなスズカ」
…持つのかコレ。
他のウマ娘達との差は何バ身離れて来ただろうか。
このレース展開にスタジアムは湧き上がり、学園のカフェテリアでも驚きの声がざわめいている。
そして、スズカはそのまま快調に飛ばしていくか…と思ったが。
…スズカの表情が変わった。
「…っ左脚!」
俺は椅子から立ち上がりそう叫ぶ。
スズカのペースが急激に落ちた。
走り方もおかしくなっている。
走っている他のウマ娘もスズカを見ながら追い抜いていく。
「…ま、まさか故障ですか!?」
フジが俺の声に反応する。
「…ああ。左の筋肉系か、骨かは分からねえが、とにかくこのままじゃまずい…!」
ペースが落ちてきているとはいえ、走ってるウマ娘の速度は時速60キロを軽く超えてくる。
このまま転倒でもしたらただじゃすまないし、ただでさえやられた左脚へのダメージは地面に着くたびに大きくなっている。
そんな中、スタンドから柵を乗り越えて飛び出した影が2人。
スぺと沖野さんである。
スぺは一気に加速してスズカの元へ走っていく。
「…頼む、間に合ってくれ…」
俺は座って手を握る。
…その場にいない以上、俺はこうすることしかできない。
なんでこんな時に行ってないんだよ俺は…。
スぺはしっかりとスズカを受け止めて、左脚を地面につけさせないでターフに横たわらせる。
「…よくやった、スぺ…!」
「ハンターさん、スズカは…?」
俺はフジの言葉に返していく。
「…とりあえず命は守られたよ。後は選手生命の方だな、こればっかりは運に任せるしかねえが…!」
電話は出来ねえ。沖野さんも東条さんも今はそんな状況じゃねえだろうし、ゴルシやルナたちみたいなあっちにいるウマ娘達も同様だ。
俺は学園内で連絡が来るのを待った。
◇ ◇ ◇
「…沖野さん!」
連絡を受けた俺は、病院へとやってきていた。
「…ハンター、来てくれたか」
「スズカは、スズカは診断どうなったんすか?」
俺の疑問に沖野さんは答えてくれた。
「左足首の骨折だ。また歩けるようにはなると思うが、以前のように走れるかは分からないらしい」
「…やっぱ骨ですか。
…でも、可能性は0じゃないんですね?」
「ああ」
…まだギリギリ残ってくれたって感じか。
俺は部屋の扉を開けて、スズカの部屋へと入っていく。
「は、ハンターさん…」
「まずはお疲れ様、スズカ。命が無事だっただけでも俺は嬉しいよ。
…俺としても、お前の復帰を信じてる。
スピカのメンバーからも言われただろうけど、…絶対、帰って来いよ。
…スピカの最年長、いや生徒会副会長としての命令だ」
「…はい、また走れるように頑張ります」
スズカは笑いながら、俺にそう返してきてくれた。
…目はまだ折れてなかった。それだけでも好材料だろう。