56話
エルはフランスでの2戦目、サンクルー大賞で無事勝利を収めた。
凱旋門とレース場は違うものの、同じ芝2400で勝てたのは大きい。
無事にフランスへの対応は出来ていると言っていいだろう。
ちなみに現在は東条さん・ルドルフ・エルの4人でミーティング中である。
『…ハンター。エルのレースを見てて思ったことはあるか?』
画面越しにルナがそう聞いてきた。
「…うーん、やっぱレースのテンポだろうな。
この前のレースでもそうだったけど、やっぱこっちはスタートのペースが遅いからエルが逃げ気味になってる。
…そうだろ、エル?」
俺がそう聞くとエルも首を縦に振る。
「そうですネ…。日本だともっと前に行くウマ娘が多いデスけど、ここだと初めは全体的に固まってる気がシマス…」
現に、サンクルー大賞ではエルがバ群の中に取り込まれそうになった。
あそこから抜け出すのは俺やルナでさえもかなり難しいだろう。
「…分かった、こちらでも作戦は考えさせてもらう。ハンターもデータ収集を続けてくれ」
「了解です、最後までデータは集めていきます」
俺が東条さんにそう答えると、ルナが話してきた。
「…ハンター、久々のフランスだがどうだ?」
「どうもこうもねーよ。…でも、久々にルーヴルには会ったぜ。
「ほう、あのルーヴルか。私も久々に会いたいものだな」
ルナがそう答えるのに俺は続けていく。
「後、ブロワイエだったか?そいつにも挨拶されたな。なかなかの強者ぽかったよ」
「ブロワイエって、ヨーロッパ最強のウマ娘と評されているあのブロワイエか!?」
俺の言葉に東条さんがそう聞いてくるので俺は「そうです」と続けていく。
「恐らく俺がエルのサポートに付いてることで、エルのことは結構警戒してるでしょうね」
俺がそう話しているとエルが話してきた。
「ブロワイエなら、ワタシこの前会いマシタ!…これがそのブロワイエのサインデース」
エルが見せてきたのはフランス語の入門本。そこにはフランス語で何か書かれている。
『エル、ちょっとそのサインをもっと近づけて見せてくれないか?』
ルナがそう言ってくるため、エルはその本をスマホのカメラへと近づける。
「…なるほどな」
…終始笑顔だったルナの目から一瞬だけ笑みが消えた。
「…エル。そのサイン、俺にも見せてくれないか」
「いいデスけど…、何かありまシタ?」
俺はその書かれた文字を見て東条さんに話す。
「…東条さん、エルの調整、早めて行ってもいいですか?」
『構わないが…何かあったか?』
東条さんに答えるように俺は本に書かれた文字を訳していく。
「やっぱりというかなんというかですけど…、『私の方がコンドルより速く飛べる』…と」
それを聞いて東条さんとエルも笑顔が消えた。
「…そうか。ハンター、エルにできる限りのことをしてやってくれ」
「了解しました、東条さん。
…エル、予定だと明日から1段階上げる予定だったけど、今から行くぞ。行けるな?」
「ええ、もちろんデス!」
目に炎が入ったエルはそう元気よく返してくれた。