本番と同じ、ロンシャンレース場で行われるフォワ賞も勝ったエルは凱旋門賞に臨む。
「…行ってこい、エル!」
「ハイ!」
俺はそう言ってエルを送り出す。
あれからというもの、エルに様々な特訓を施した。
これで負けても仕方ない…というレベルにはしてある。
後はエルがどれだけ頑張れるか…という話だ。
◇ ◇ ◇
一通りの特訓を終えたエルに俺は話しかける。
「エル、一つ聞かせてもらってもいいか?」
「ケ?別にいいですケド…」
俺はエルに話していく。
「…エル、お前はこの凱旋門に全てを懸ける覚悟はあるか?」
「全て…デスカ?」
エルが聞いてきたため、俺は続けていく。
「ああ、…はっきり言わせてもらうぜ。
今のお前のままじゃ、ブロワイエには勝てねえ。
よくて競り負けるくらいだろうよ」
俺がそう話すとエルは反論してきた。
「な、なんでそんなこと言うんデスカ!?
レースなんて、走ってみなきゃ分かんないじゃ…」
「それぐらい今のお前とブロワイエじゃ差があるってことだよ!
この凱旋門はただ走るだけで勝てるような甘いレースじゃねえんだ!」
俺はエルの服の胸ぐらをつかみながら、エルに叫んでいく。
「今、お前は日本にいる全てのウマ娘達の想いを背負ってるってことを忘れるな!
…スぺ、グラス、スカイにキング!
それからルナやエアグルーヴのようなウマ娘だってこの舞台に立つことは出来なかった!
そんな中途半端な覚悟であいつらに魅せるレースができるわけがねえだろうが!」
俺はそう言ってから我に戻り、エルから手を放す。
「…すまない、エル。…取り乱した」
「いえ、確かにそうデスね…。ハンターさんの言う通りデス…」
耳を畳み、落ち込むエルに俺は続けていく。
「でもな、このレースに全てを懸けるって言うなら勝機はあるよ。エル」
「すべてを…」
そう呟くエルの言葉に続けるように俺は話していく。
「ああ。…ただ、この作戦をやるならお前の脚を今以上に酷使することになる。
今のトレーニングだとエルの脚の負担を考えたものになっているが、これをするっていうならそのリミッターを破壊するってことだからな。
それにこれが成功するかどうかは本番次第だ。負けたうえに二度と走れなくなるって可能性もある」
俺はそこで一呼吸おいて続けていく。
「…だから聞かせてくれ、エル。
お前はこのまま何もせずにブロワイエに負けるか、一か八かの俺のギャンブルに乗るか。
…お前はどっちにしたいんだ?」
「わ、私は…」
エルはそこで言葉を詰まらせる。
「…無理に乗れとは言わねえよ。日本に戻った後のことも考えたらな」
俺がそう話すと、エルは口を開いた。
「…ハンターさん。…お願い、します!」
そこにいたのはいつものエルじゃない、素のエル。
…覚悟はできたみたいだな。
「分かった、今までより数十倍はハードになるぞ。
ついて来る準備はいいな?」
「もちろんデース!」
エルは俺にそう返した。