凱旋門賞当日、俺はスタンドの最前列でエルを見ていた。
「…上からの方が見やすいんじゃないの?」
ルーヴルがそう俺に話しかけてきた。
「ここがいいんだよ。エルの勝つところを最前線で見たいしな
それにお前もだろルーヴル。フランスの会長さんがこんなところにいていいのか?」
「ちょっとアンタと話したかったのよ、すぐに戻るわ」
ルーヴルはそう続けていく。
「…ブロワイエはジャパンカップに行くわ。凱旋門賞というタイトルを引っ提げてね。
今年は私もそれについてくつもり。
この後正式に連絡はするつもりだけど、日本に行ったときは盛大に歓迎しなさいよ?」
へえ、日本に来るのかブロワイエ。
「了解した。『お前の時みたいに』、盛大に歓迎してやるよ」
「ブロワイエは私のようにはならないわよ!」
ルーヴルは俺にそう叫んできた。
◇ ◇ ◇
レース直前、俺を見つけたエルは走って俺の方に寄ってくる。
「エル、ブロワイエや他のウマ娘達は間違いなく強い。
だけど、俺の特訓を耐えきったお前ならできるはずだ。
勝つって信じてるぞ」
「もちろんデース!私に任せておいてくだサイ!」
エルは元気よく俺にそう返してくる。
「…間違いなく、日本であいつらも見てくれてる。
…生徒会副会長として命令だ。
世界を取って来い、エルコンドルパサー!」
「了解デース!」
エルはそう言ってゲートへと向かっていった。
◇ ◇ ◇
ファンファーレが鳴り響き、続々とウマ娘達がゲートに入っていく。
エルが入ったのは2枠。
…これを実行するにあたって東条さんに「直前で作戦変えてもいいですか?」と確認し、「作戦はお前に任せる、ハンター。責任は私が取るわ」という言葉を貰った。
それなら心配することはない。東条さんにも感謝である。
すべてのウマ娘がゲートの中に入り、ロンシャンレース場には一瞬の静寂が流れる。
この一瞬の静寂はどこの国でも変わらない。
…そして。
ガタンッ!
「…さあ、思いっきり楽しんで来い、エル!」
ゲートが開かれると同時に俺はそう話す。
エルは他のウマ娘を気にせずに先頭に立ち、加速しながら差を3バ身、4バ身と離していった。
◇ ◇ ◇
日本、トレセン学園。
「大逃げだと!?」
エルコンドルパサーが他のウマ娘を引き離しながら、ぐんぐんと加速していくのを見て、東条ハナは立ち上がりながらそう叫んだ。
「グラスちゃん、エルちゃんが大逃げをしたことって…」
スペシャルウィークの言葉にグラスワンダーは「いいえ」と首を振る。
「エルの走りが結果的に逃げになることはあっても、初めから逃げる走り方なんて見たことないです。
しかもこの凱旋門賞という大舞台で…」
「…エルコンドルパサーなら出来ると確信したんだな、ハンター」
シンボリルドルフはテレビ画面を見ながらそう呟いた。