エルがゴール板を通過した瞬間、ロンシャンレース場は沈黙に包まれた。
…そりゃそうだろう。大エースのブロワイエが日本から来たウマ娘に負けたのだから。
そんな中で俺は。
「…いよっしゃー!」
…大きく叫んでいた。
「ハンターさーん!」
「お、おわっと!?」
エルもそんな俺を見つけて近づいてきて、フェンスを乗り越えながら俺に抱き着いてきた。
「やりまシタよ、ハンターさん!
ワタシ、凄く嬉しいデス!」
「ああ、よくやったよエル!」
俺は笑顔を見せるエルの頭を撫でながらそう褒めていく。
「ハンターさん!ワタシ、世界最強のウマ娘になれまシタか?」
「もちろんだ、エル。お前は世界最強のウマ娘だよ。
俺はお前というウマ娘に関われたことを誇りに思うよ、エル」
そう言いながら、俺もエルを抱きしめる。
「ハンターさんがいなかったらワタシ多分このレース取れてなかったデス。
ありがとうございました、ハンターさん!」
俺とエルがそう話しているとブロワイエが近づいて来ていた。
「…見事だったよ、エルコンドルパサー。
君と走れてよかった」
「ハイ、ワタシもあなたと走れてよかったデース、ブロワイエ!」
通訳を俺がしながらエルとブロワイエは話していき、お互いがっしりとした握手を交わす。
「良いレースだった、またどこかで一緒に走ろう」
ブロワイエがそうエルに聞くと、エルは首を振っていた。
「…イエ、ワタシのトゥインクルはこの凱旋門で終わりにシマス。
…ここからはドリームトロフィーに移籍しようカナって」
…エルもドリームトロフィー来るんだな。
「ドリームトロフィー、日本でやっている更に上のレース…か」
「…ブロワイエ、ルーヴルから聞いたがジャパンカップ来るんだろ?
日本で待ってるぜ」
「ええ、日本のウマ娘に『ブロワイエが凱旋門のリベンジに来る』と伝えてください」
「ああ、もちろんだよ」
ブロワイエの言葉に、俺はそう話していた。
◇
「ええ、ありがとうございます、東条さん」
その日の夜、俺は東条さんと話していた。
『ハンター、お前に行ってもらえて本当に良かった。
エルに今までやったことのない大逃げをさせるなんて、私にはできないからな』
「いやー、正直賭けでしたよホント。
今までのエルのままじゃ間違いなくブロワイエには勝てないなって思って。
帰ったら思いっきり抱きしめてあげてください」
俺の言葉に「分かった」と東条さんは返してくる。
『そういえばハンター。
エルがドリームトロフィーへ移籍するって言ったのは本当か?』
俺は東条さんの言葉に同意する。
「ええ、『私のトゥインクルは凱旋門で終わりにする』…と。
エルの戦績なら文句なしでドリームトロフィー移籍できるでしょうし」
『…了解した。私の方でも手続きを準備しておこう。
日本には予定通り帰れそうか?』
「ええ。元からそれで動いてましたしね。
予定通り帰りますよ」
俺は東条さんとそう話していった。