61話
「エル、ハンターさん!お帰りなさい!」
トレセン学園に戻ってきた俺とエルにグラスがそう声をかけてくる。
「エル、見事な走りだった。日本のウマ娘として、ハンター以来の凱旋門賞制覇、見事だったぞ。
ハンターもよくここまでエルをサポートしてくれたな」
ルナはエルと俺にそう返してくる。
「…いやー、ギリギリでシタ…。
ハンターさんの特訓がなかったら負けてたと思いマス…」
「謙遜すんな、エル。あれはお前の力だよ。
俺はその力の出し方を変えてやっただけにすぎねえからな」
俺がそう言いながらエルの頭を撫でると、エルは尻尾をブンブンさせながら笑顔を見せてくる。
「…ハンター、スピカなら今ターフに出ているはずだ。行くなら行ってこい」
「了解っす」
「あ、じゃあワタシも行きマス!」
俺とエルはスピカの面々の元へと向かおうとした。
「…そうだ。オペラオーに言っておくことがあるんだった」
「…はい!ボクにですか?」
俺はそう言ってオペラオーに話していく。
「オペラオー。この前の京都大賞典、テレビで見させてもらったぞ」
オペラオーは俺の言葉を聞いて体をビクッ!と震わせる。
「…あのレース、お前は恐らくスぺをマークしてたんだろうけど。
あの位置にいるなら他のウマ娘の状況も分かるだろうし、早めに対象を他のウマ娘に切り替えることも大切だ。
菊花賞が終われば、本格的に同年代だけじゃなくて上の年代との勝負も増えてくるんだからよ。
…『マークする相手を間違えた』だけで絶対済ますな。
そんなこと思ってると、トプロやベガ、ドトウに菊花賞かっさらわれるぞ。
自分の走り方、何回でも振り返っとけ」
「は、はい!」
俺はオペラオーにそう話して置いた。
…数週間後、オペラオーが菊花賞を無事勝ち取ったのは別の話だ。
◇ ◇ ◇
俺とエルがターフに向かうと、スピカの面子が練習していた。
「あ、ハンター!おかえりー!」
俺に気づいたテイオーがそう手を振る。
エルはスぺの元へと向かっていった。
俺は沖野さんから頭を撫でられる。
「ハンター、よくやったぞ」
「いえ、エルの実力っすよ。
またこれからよろしくお願いしますね、トレーナー」
俺はトレーナーにそう話していく。
そして、エルがグラスに引きずられていった後、俺はスぺに話しかけていく。
「スぺ、京都大賞典見させてもらったぞ」
「え!?」
スぺも俺の言葉を聞いた後、オペラオーと同様に尻尾をビクッ!とさせる。
「あのなぁ…、調整不足にも程があるっての」
俺はスぺの手を掴んで大体の体重を調べる。
「おおかた○○㎏ぐらいか…、増え過ぎだな」
「い、言わないでくださいよ!」
スぺはそう言ってくるが、俺は気にせず続けていく。
「調整ぐらいトレーナー任せじゃなくて自分でもある程度は出来るようになれ。
ヤバくなったらトレーナーが止めてくれるだろうからさ」
「は、はい…」
スぺはそう言って耳を垂らす。
そんなスぺに沖野さんが話しかける。
「まあスぺ。ハンターが言うことは最もだが、終わったことを考えても仕方ないぞ。
次は秋の天皇賞。その先はジャパンカップも照準に入れてるんだ」
秋の天皇賞の後はジャパンカップ…か。
スぺとブロワイエの対決、見られそうだな。
「ところでトレーナー、今日はどんなメニュー?」
「なんでもかかって来やがれ!せいやっ、あたたたっ、とりゃー!」
テイオーとゴルシはそう話し、ゴルシは蹴りを繰り出したり、拳を突き出したりしながら転んでいく。
「お前ら、無駄に気合入りすぎ。体を置いてけぼりにするな!
…特にスぺ!」
「は、はい!」
そう言って沖野さんはスぺに話していく。
「前のレースはハンターが言う通り仕上がり不足が原因だ。お前、隠れてトレーニングしてねーか?」
「ええっ!?」
「…してたんだな、まったく…」
俺はスぺの反応にそう返していく。
沖野さんはため息をつきながら、改めて話していく。
「…決めた!お前らはしばらく休養!
特にスぺは、次の天皇賞まで…そうだ」
沖野さんは何かを思いついたように話していく。
「一度、実家に顔出してきたらどうだ。お前、正月も帰らなかっただろ?」
「じ、実家ですか!?」
沖野さんはニヤッと笑いながらスぺを見つめていた。