「…やっぱりこっちの芝、違和感あるわね。
走る時の抵抗感が全然ないわ」
ルーヴルはグラウンドを軽く走ってそう話す。
「日本じゃこれが普通なんだよ。俺達からしたらそっちの芝は足に絡みついてきてやってらんねえっての。
凱旋門じゃ俺もダートの走り方にしたしな。エルもダートそこそこ走れるウマ娘だし」
俺はそうルーヴルに話していく。
日本に来たブロワイエとルーヴル。
ブロワイエにはルドルフが対応しており、俺はルーヴルの対応である。
…そして、「久しぶりに日本の芝走ってみたいわ」とルーヴルが言うのでグラウンドに連れてきたのである。
「…で、お前の感覚的にはどうなんだ?」
俺の言葉にルーヴルが答えてくれる。
「もちろんブロワイエが勝つと思ってるわよ?
…ただこの芝はブロワイエも未体験ってことを考えたら、可能性は50%かしらね。
現に私も全然対応できなかったし」
ルーヴルの目は真剣である。本気でそう思ってるってことなのだろう。
「…でも、調整はしっかりしてきてくれたんだろ?」
「…ええ。ブロワイエの状態は絶好調だと思うわ。
エルコンドルパサーに負けたことが大分頭に残ってるみたいよ」
そして、ルーヴルはスマートフォンを取り出してさらに続けてくる。
「…で、アンタはアタシに付きっ切りでいいの?
凱旋門の時はエルコンドルパサーに付きっ切りだったじゃない」
「…今回はな。フランスだと俺はエルのサポート役として行ったけど、今回は生徒会副会長としてお前を歓迎する立場だし」
ルーヴルは「そうなのね」と俺に返して、続けていく。
「じゃ、ちょっと軽く私に付き合ってくれない?久々にアンタと走りたいわ」
「…ほぼ丸1年現役から離れてたんだぜ俺。お前の望む走りは多分できねえよ」
「私も似たようなもんよ。最近事務仕事の方がメインだし。
だから軽くでいいって言ってるでしょ。私はアンタと走りたいって言ってんのよ、ハンター」
「…んなこと言っても、俺達のことだからどうしてもガチにはなるだろうが…」
俺はルーヴルの言葉にそう呟きながらも続けていく。
「…まあ、お前がやりたいって言うならいいけど。
何メートルにするんだ?」
「2400、凱旋門の距離と同じでどう?」
「了解したよ、ルーヴル」
俺はルーヴルにそう返して、スタート地点へと向かっていった。
◇ ◇ ◇
「じゃ、よーい…、スタート!」
スタート地点から、俺とルーヴルは同時にスタートを切る。
ルーヴルは快調に飛ばして段々とスピードを上げる。
…ルーヴルの基本戦法は逃げ…とまでは行かないくらいの先行。
それに対して俺はいつも通りゆっくりとスピードを上げる。
ほかのウマ娘がいないとはいえ、俺がペースを上げるタイミングは変わらない。
第4コーナーで俺はギアを変えて一気にスピードを上げていく。
ホームストレートに入りながら、俺は一気にルーヴルとの差を詰めていき、差は2バ身、1バ身となっていく。
トップスピードになった俺はルーヴルと並ぶ。
「…まっけ、ない、わよ!」
「…んなもん、こっちも、一緒だっての…!」
そのまま俺とルーヴルはほぼ同タイムでゴール板の前を通過した。