スズカを含めたすべてのウマ娘が続々とゲートに入っていく。
この瞬間だけ、レース場にあった高まったボルテージは鳴りを潜め、静かな時間が流れる。
ルーヴルも言っていたが、この時間が流れるのはどこの国も共通らしい。
…そして。
ガタンッ!
今、ゲートが開かれてレースがスタートする。
ボルテージも一気にレース前の活気を取り戻して、選手たちを後押しする応援歌が流れ始める。
今回レース中に流れる応援歌は選手個人に対するものではなく、選手全員に対する応援歌のためいつものものとは少し違った。
…Huntersすげえ。ここに来てこの曲を選曲するかよ。
Huntersは飛び跳ねながらタオルを回し、スネアドラムをリズミカルに鳴り響かせる。
…恐らくHuntersだからできるものだろう。
前に聞いた話だと音楽系の人も何人かいるって言ってたし。
それでこのボリュームだ。
…相手のサポーターじゃなくてよかったよ。
俺はそう思いながらスズカへと視線を向ける。
スタートでは出遅れており、最後方に位置を取っている。
…最初からぶっちぎる戦法はまださすがにできねえか。
そして第4コーナーを回っても、スズカはまだ上がってこない。
…沖野さんから聞かせてもらったが、医者の言うことにはスズカが走れるようになっただけでも奇跡らしい。
この姿を見れただけでも儲けものか。
…そう思っていたが、スズカにそんな心配は不要だった。
「…仕掛けてきたな、スズカ!」
俺はそう笑みを見せる。
大欅を過ぎたあたりでスズカは大きくギアを入れた。
一気に前を集団を追い越していく。
…スズカが追い込んでくるとは思ってなかったであろう観客からは大歓声が上がっている。
そしてスズカはさらにその前方にいたサンバイザーも捉える。
…サンバイザーも粘ってくるが、スズカはそれを嘲笑うかのように再加速する。
そのままスズカはサンバイザーを突き放してゴールする。なお右手は大きく上に突き上げられていた。
…後でスズカに聞かせてもらったが、あの追い込みは俺の走り方を参考にしたとのこと。
右手を突き上げたのも、俺を見習ったらしい。
…歓声を浴びるスズカを見てブロワイエは立ち上がって拍手を送る。ルーヴルも同様だ。
「すばらしいレースを見せてもらったわね。ブロワイエ」
「ええ。明日は、もっと盛り上げてみせるとしよう」
…ブロワイエのやる気も十分みたいだ。
敵が強いに越したことはない。
しっかりと迎え撃ってくれよ、スぺ。
今回の応援歌はフィーバーテーマ(東北楽天ゴールデンイーグルス)。関西限定チャンステーマ時代の歌詞を参考にしてる部分もあります。この曲はスネアドラムがエッグイ。