…ゲートに続々とウマ娘が入っていき、静かな時間が流れる。
…この静寂はGⅠだろうが、どこでも変わらないみたいだ。
俺はふうっと息を吐いて気持ちを落ち着かせる。
…そして。
ガタンッ!
ゲートが開かれてレースがスタートする。
俺はいつも通り、最後方に位置取って足を貯めていく。
…今回はずいぶんとスローペースだな。ルドルフもシービーもけん制し合っているのだろうか。
海外のウマ娘達もそれに合わせてか、バ群の中に組み込まれている。
…先頭のウマ娘は2番手のウマ娘に10馬身の差をつけて逃げている。
だとしたら、少しマズいか。
このペースで行くと、間違いなく間に合わない。3コーナー過ぎで仕掛けさせてもらうとするか。
そのままレースは進んで行き、第3コーナーに差し掛かる前先頭のウマ娘は俺達とは15バ身くらいの差を付けて行く。
…いつもの外側を抉る作戦だと間に合わない可能性が高い。
なら。
「…仕掛けさせてもらうぜ!」
俺はギアを入れて一気に加速していく。
だが、今回俺が通るのはいつもの外側ではない。
「…雨だろうが、なんだろうが、これぐらいの荒れ方ならどうってことねえ!」
今までのレースとこの大雨により、あれてしまった内側である。
走りにくく、ここを走るウマ娘はほとんどいない。
…なら、その内側を一気に抉る!
俺はそのまま、ルナのいる集団も追い越して、先頭のウマ娘との差を9バ身、8バ身と徐々に縮めていく。
…他のウマ娘たちも仕掛け始めたその中で、俺に食らいつこうとしてくる影が二人。
「…やっぱり、こうでなくてはな。ハンター!」
「…君だけを自由にさせるわけには行かないよ!」
ルナとシービーである。
「…負けてたまるかっての!」
俺もそう言いながら二人に負けないように再加速する。
前のウマ娘は大分タレてきていた。
俺達との差は4バ身、3バ身と縮まっている。抜き去ることはできるだろう。
となれば、勝負は俺達3人。それ以外に来ている気配はない。
坂の途中で、先頭にいたウマ娘を追い越して最後の直線に入る。
…スタンドからは「あのルドルフとシービーが負けるのか…!?」というざわめきが大きくなっている。
…俺は貯めておいた脚を使って、さらに加速する。
「さすがにまだ残しているよな!」
「そう来ると思ってたよ!」
だが、ルナもシービーも負けていない。
俺に食らいつくようにして、加速してくる。
その状態のまま、俺達3人はゴール板を通過した。
…結果がどうなっているかは分からないため、右手は突き上げられなかった。
…だが、俺のベストは尽くした。負けたとしても悔いはねえ。
レースを終えた俺達3人は掲示板に順位が灯るのを待っていた。