76話
あれからというもの、スピカの面子はガンガンと勝ち進んでいった。
俺は復帰したドリームトロフィーの連覇記録を伸ばし、スズカも同じようにGⅠ勝利の後、満を持してアメリカに渡った。
スぺもジャパンカップの後の有馬記念でグラスに競り勝ち、宝塚記念の雪辱を晴らした。
テイオーは怪我があり、ルナのように無敗の3冠とはならなかったものの、怪我から復帰の有馬記念で劇的な勝利を収めた。
マックイーンは天皇賞連覇をなしとげ、長距離ではトレセン学園内では指折りの実力者となった。
ゴルシは宝塚記念の連覇の後、凱旋門賞に渡った。…さすがに俺は向こうに行っていない。
ウオッカとスカーレットはバチバチのライバル関係を築き上げた、秋の天皇賞は語り草となっている。
そして、全員がドリームトロフィーに移籍して、全員が本戦へと駒を進めた。
俺も今回はダートから芝へと変更した。
スピカが全員参加するということもあり、今回ばかりはこっちに参加させてもらおうということである。
まあ俺がいなくてもダートはファル子やイナリといった面子がしっかりしてくれた、もう心配することはない。
◇ ◇ ◇
…で、だ。俺は今ドリームトロフィーの抽選会に臨んでいる。
「…おい、オグリ。食いすぎじゃねーか?」
「そうだろうか?いつもと変わらないとは思うが…」
「お前は相変わらずマイペースだな」
俺はオグリとそう話して、人混みから外れる。
会場から外に出ると、沖野さんと東条さんが何か話していた。
「お、ハンター。どうしたんだ?」
俺を見て沖野さんがそう声をかけてきた。
「少し風に当たろうかなって思って。…ジャマでしたら戻りますけど」
そう話すと東条さんが「別に大丈夫だ」と話してくる。
「…ちょうど、お前が一時スピカから離脱してメンバーがゴルシだけになった時の話をしててな」
「…あー、あのときっすか。本当に迷惑かけちゃいましたね…」
凱旋門賞が終わった後、ホテルに戻ると俺の右膝が尋常じゃないくらい痛み出した。
恐らくレース中はアドレナリンとかが出ててそこまで痛まなかったんだろうが、ホテルに戻り安堵したため痛みが襲ってきたのだろう。
その後応急処置として右ひざにサポーターを巻き痛み止めなども貰い、日本に戻って病院で診断をしてもらったところ、『右膝前十字靭帯損傷』という診断がされた。
原因は長年のレース・トレーニングによる脚の酷使。断裂の危険性もあったと言われた。
元から凱旋門賞を最後にトゥインクルを引退することを決めていたため、ある意味今までよく持ちこたえてくれたというのも俺の中ではあった。
…とはいえ、その後もドリームトロフィーに参加する予定もあった俺は、その後の丸1年を完治・リハビリに費やすことになった。
しばらくの間は入院することになり、俺は怪我が完全に治るまでの間ではあるがスピカを離脱した。
理由は俺という怪我人に意識を集中して欲しくないためである。
その後怪我が治り、ある程度レースの感覚が戻ってきた俺はスピカに復帰。ドリームトロフィーにも参加して今に至る。
「まあお前のことだからある程度は分かっていたけどよ。その後にスカーレットとウオッカ、それにスズカやスぺも来てくれたんだしな」
「ホント、俺のわがままを通してくれてありがとうございました、沖野さん」
俺の言葉に沖野さんは「まあいいってことよ」と返してくる。
そんな中、俺を呼ぶ声がした。ルナである。
「ハンター、そろそろ抽選が始まるそうだ。こっちにきてくれないか?」
「りょーかい。…いったん俺はこれで」
俺はそう言って部屋の中へと戻っていった。