俺はターフの上で軽く体を動かして、走る準備をする。
まあそこまで本気で走る予定はないが、Huntersの応援を聞いてると脚は自然と速くなる。
「…よし、それじゃ行きまーす!」
俺がスタンドに向けて右手をあげると、Huntersの方からも同様に手が上がる。
「…しっかり見といてくれよ、キング。…これが最強の応援団の力だ!」
俺はそう呟きながら、思いきりターフを蹴り出した。
◇ ◇ ◇
俺がターフを蹴り出すと同時に、いつもと変わらないHuntersの応援が俺に届いてきた。
ちなみに「俺たちの新曲、是非試してくれ!」と言われたので今日はいつものモンキーターン、コーリン、大チャンステーマ、デコトラといった曲ではない。
俺の耳に聞こえてきたのは、まるでそのフィールドを魔境へと変えてしまうような、そんな曲であった。
…「U.N.オーエンは彼女なのか?」を原曲とするこの曲。
まるで、吸血鬼の館に誘われたかのような、そんな雰囲気を漂わせる曲である。
俺は向こう正面に差し掛かりながらチラッとスタンドに視線を向ける。
Huntersの応援はトランペットが特別うまいわけでもない。
演奏会でプロのトランぺッターと対戦したら間違いなく負けるであろう。
…ただ、彼らが響かせる音には俺を勇気づけようとする気持ち、それがフルに詰まっている。
そして言わずと知れた、その音に更に上乗せする統一感のある大歓声。
「なんとしてもハンターを俺たちの応援で勝たせる!」、その気持ちは年齢はバラバラであっても一つ。
それが威圧感のあるHuntersの応援を産み出しているのである。
「…キング、お前ははりきり過ぎて全員を置いてけぼりにしてる。
誰にも負けない応援は、全員が一丸とならないことには、成立することはない」
俺はそう思いながら、最後のホームストレートに入る。
…応援の熱は向こう正面を走っていたときよりもダイレクトに俺の体にぶつかってくる。
それと共に、俺の脚も最後のスパートをかけるように回転が速くなっていく。
この応援団を俺の味方にすることが出来てよかった。
相手側でこの応援をされたらたまったものじゃねえ。
そう思いながら、俺は駆け抜けていった。
今回のチャントは神戸拓光(千葉ロッテマリーンズ)の応援歌、通称『オーエン歌』。歴代ロッテの応援歌の中でも屈指の盛り上がりを見せる曲です。