90話
ある日の昼休み。
生徒会室でいつものようにいたところ、唐突に理事長が放送を始めた。
『昼休憩中、失礼ッ。
全生徒、全トレーナーに告ぐッ!
私はここにアオハル杯を復活させることを決定したッ!』
理事長の放送を受けてブライアンがヒシアマが作ってくれたという弁当を食べながら疑問を呈す。
「アオハル杯…、なんだそれは?」
そんなブライアンに答えたのはエアグルーヴだった。
「確か、以前行われていたチームの強さを競い合うチーム対抗戦だったはずだ。
…ですよね、ハンターさん?」
俺はエアグルーヴの言葉を肯定する。
「ああ、そうだな。スピカとかリギルとかのチームとは関係なしに、チームを組んで最強のチームを目指すっていう大会だ。
トゥインクルやドリームトロフィーとは別開催になるから俺達の負担は増えるけどな」
ルナも俺に続けていく。
「だが、先輩方に聞いてもその経験はいつもの個人戦では得られないものらしい。私も一度相談してみようと思っていたのだが…」
「ルドルフ、どうするつもりだ?」
俺がルナにそう話していくと、ルナは「君たち個人に任せるよ」と返してきた。
「理事長がそう決定した以上、我々生徒はそれに従うまで。
各々がチームに誘われても、参加するかどうかは君たちの判断に任せるよ」
「了解です」
エアグルーヴはルナにそう返し、俺とブライアンは静かに頷いた。
◇ ◇ ◇
…だが、それは早々と覆されることになる。
「…そういう訳で、管理教育プログラムの導入、アオハル杯開催の見直しを行います」
秋川理事長の海外出張に伴いやってきた樫本理事長代理が話したのは俺達をガチガチに制限するものであった。
「…生徒会ではっきりと反対の意思を示すことはできないんデスか?」
という訳で自由な学校が好きなタイキを含めて何人かのウマ娘が反対の意を示すため生徒会室に来ていた。
「…そうは言っても、理事長代理の言ってることにも一理あるんだ。
俺も口酸っぱく言ってると思うけど、オーバーワークで怪我をするのは絶対にしてはならないからな」
…俺はタイキの言葉にそう返していく。
現に理事長代理のチームであるチームファーストからは何の文句も出ていない。そう言うのを好むウマ娘も少数派であるがいるだろう。
「…でも、あの管理教育プログラムを受け入れたら私、補習で満足に練習できなくなるんです!
お願いします!」
「…フクキタル、まずお前は補習を受けないように勉強せんか…」
エアグルーヴがフクキタルにそう返した後、ルナは口を開いた。
「…君たちの言いたいことは分かった。
だが、君たちの一存で生徒会の総意とするわけには行かない。
…生徒の3分の1以上の署名、これを持ってきてくれるのであれば生徒会としても明確に反対の意を示すよ」
…全校生徒が幸せになって欲しいと言うルナらしい提案である。
ルナがそう言ったことにより、その場は解散ということになった。
◇ ◇ ◇
「ルナ、お前は理事長代理についてどう思う?」
寮の自室で、寝る前に俺はそうルナに話を聞いた。
「理事長代理の管理教育プログラムは確かに厳格だが、我々ウマ娘を守ることになるのは間違いない。
生徒会長としてすべてのウマ娘の幸せを願うものとしては、導入も反対はできないというところだ」
…さすがはルナだ。まさに優等生という雰囲気である。
「…そうか。
じゃ、生徒会長じゃなくて一人のウマ娘としての本音は?」
俺がそう聞くとルナはこう続けてきた。
「…明確に反対の意を示させてもらうよ。
私もこの学校の自由な校風に憧れ入ってきた。
東条トレーナーも私に対して的確なトレーニングを指示してくれてはいるが、もっと走りたいと思うことが多いからな」
「お前らしい答えだよ全く」
毅然とした雰囲気で、周りとは一線を画すウマ娘であるルナでさえも本音はこれだ。
多くのウマ娘の答えもこれに近いことは間違いないだろう。
「…生徒会室で言っていたが、君の意見もそうだろう?ハンター」
「もちろんだよ。走りたいっていうのは俺達ウマ娘の本能だからな」
俺はルナにそう答えていく。
「…やっぱり、お前は私の妹だな、ハンター」
「まあな。伊達に10数年お前の妹してねえよ」
俺はルナの言葉にそう返していった。