「理事長代理、これを受け取って下さい」
俺は樫本理事長代理に書類の束を渡す。
「これは…、署名ですか?」
俺が提出したのは管理教育プログラム導入・アオハル杯中止に反対するウマ娘達の署名である。
タイキ達が集めてきてくれたが、全校生徒のおよそ半数以上はあるだろう。
だが、理事長代理は表情を変えない。
「…これで私が考えを変えると思っているんですか?」
その言葉に「いや?」と首を横に振る。
「あくまで大多数のウマ娘達の意見はこうですよってことを改めて知らせたかっただけですので」
そして俺は「…ここからは一ウマ娘のシンボリハンターとして」と前置きしたうえで話していく。
「…確かに管理教育プログラム、良いものだと思います。怪我をするウマ娘達の数も減ることでしょう。
アオハル杯中止も、ウマ娘達の負担減のためにはいいことだと思います。
…ですが、そこまで俺達の判断が信頼できないのですか?
ウマ娘達は十人十色、千差万別。誰一人として同じウマ娘はいません。
テイオーのように怪我に弱いウマ娘もいれば、ゴルシのように怪我にめっぽう強いウマ娘もいます。
チームファーストのように規則に縛られた方が伸びるウマ娘がいれば、ウチのスピカのように自由にした方が伸びるウマ娘もいます。
トレーナーは俺達の状況をしっかりと判断して、その個々に対してトレーニングを柔軟に変えていくのが仕事だと俺は考えてます」
俺は更に話を続けていく。
「そしてアオハル杯中止。開催すれば俺達の負担は増えて怪我をするリスクはさらに高まると思います。
…ただ、先輩方やアオハル杯を経験したことがあるトレーナーから話を聞けば、アオハル杯で得られる経験はトゥインクルやドリームトロフィーでは得られないものだと。
その経験を得られないままこの学校を去ることはできません。
…すべてのウマ娘に無条件で参加を認めろとは言わないです。負担が比較的少ないドリームトロフィーのウマ娘たちだけに限定してもかまいません。
どうか再考の程、よろしくお願いします」
俺はそう言って頭を下げる。
そして俺が理事長室を出ようとすると、理事長代理は「…分かりました」と俺を呼び止めた。
「…そこまで言うなら私にも考えがあります。
シンボリハンター副会長、私と賭けをしませんか?」
「賭け…ですか?」
俺がそう返すと、理事長代理は続けてくる。
「私のチーム、チームファーストとあなた達とでアオハル杯で勝負をしましょう。
もし私たちが負ければあなたたちの主張を認め、管理教育プログラム、ならびにアオハル杯中止を撤回します。
…ただし、そちら側が負ければ無条件で私に従ってもらいます。いいですね?」
「もちろんです。俺たちも全力でそちらを倒しに行きますが、大丈夫ですよね?」
「ええ、構いませんよ」
…よし、理事長代理をノせることは出来た。
後は俺達次第…だな。
俺はそう感じながら理事長室を後にした。