中身入りロボット、魔法少女の騎士になる。   作:トーリスリッターをすこれ

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注意:掲示板要素アリだよ。


それぞれのはじまり

 "俺"が目覚めたのは"彼女"と初めて出会った日の事だった。

 

 真っ暗な視界の中、幾つものウィンドウが瞬く様に開閉を繰り返す。

 

 幾つもの白いデジタルな文字列が空虚な暗闇の世界を駆け巡る。

 

 それが暫く続いた後、OKの二文字が脳裏を駆けた。

 

 その瞬間、視界は突然開かれた。

 

「起動したか」

 

 目覚めてまず目にしたのは、グレーのスーツを着た白髪混じりの壮年男性の姿。その胸にはタオルに包まれたまだ幼い一人の赤子が抱かれていた。

 

 周りを見回すと気品あるワインレッドの絨毯と白と金のボーダーの壁紙、後は頭上にシャンデリアと壁際に並べられた高そうな暗い木目の家具があるだけで、他のヒトは一人も居ない。

 

 訳の分からない光景だった。まず思ったのはこうで、次に思ったのはここが天国じゃないかって事だった。()()()()()()()()()()筈だったから。

 

「……誰ですか」

「私の名はオハラだ。姓は雑賀」

「ここは何処ですか」

「ここは私の別荘だ。これから君にはこの子の世話を頼みたい」

 

 そう言ってオハラと名乗る男は俺に今まで抱えていた赤子をこちらの胸元に差し出して来た。俺は今までの話は置いておいて、とりあえず手を伸ばし受け取ろうとした。

 

 その時、俺は気付いた。

 

()()()()()()()()()()()()()()

 

 それは、真っ白に塗装された金属だった。節々には黒いビニールの様な物が張られている。俺が知る俺の手よりはやや細く見えたが、硬度は間違いなく此方が上だろう。

 

 ふと、見下ろす。そこに居たのは俺の腕の中で泣きもせずじっとこちらを見る赤子。

 

 気付けば俺は、赤子の頬に触れていた。まだ心の何処かでこの事実を疑っていたのだろう。だが、節々が黒く、真っ白なこの指で赤子の頬を撫でても、温もり一つ感じられなかった。

 

 この時俺は直感で理解した。

 

 ここは天国じゃない。そして俺は、ヒトでなくなったんだ、と。

 

 それに気付いてもなお平静な心が俺の答えを肯定していた。黙りこくっている内に心臓の音もしない事に気付いて、更にその確信は深くなった。

 

 オハラにはその様子が質問を終え、話を催促している様に見えたのだろう。彼は話の続きを始めた。

 

「その子は女の子だから色々と出費も嵩むだろうけど、育てるのに必要な資金はこのクレジットカードから自由に使って貰って構わない。君の中にはパスワードと電子署名も記録されているからね。紛失したり盗難された場合は君の方でクレジットカードを止められる様に手配しておくから手続きはそっちで……」

「お……。私は、何ですか」

「ん? 決まってるじゃないか。君は汎用ヒト型ロボット『イータ』だろう」

「そう、ですか」

 

 自身の腕を見た瞬間薄々気付いてはいたが、実際に聞かされると納得するしかない。俺はイータなるロボットになってしまったらしい。外見が気になるが、腕に抱いている赤子が泣かずじっとこちらを見ていると言う事は、少なくとも怖そうな見た目ではないのだろうと一人納得する。

 

 それでも気になった事は他にもある。

 

 オハラは俺一人に子育てを任せようとしているのか、とか。

 

 クレジットカードの話や別荘の話と言い金持ちである事に疑いは無いが、ならばなぜ他にヒトを雇ったりしないのか、とか。

 

 そして最後に──

 

「なぜ……」

「ん? どうしたんだい」

「オハラさん、なぜ貴方は()()()()()のですか」

 

 俺は感情の無い淡々とした中世的な声(合成音声)で問いかける。自分でも驚く程に、それには感情を感じなかった。

 

 だがそれ以上にオハラの態度は冷え切った物に思えた。彼の目には何の色もない。それはこの子に対する物なのか。

 

「う〜ん。それは何と言うか肩の荷が降りたって感じかな。生まれつきで脚が不自由らしいし、介助するのとか大変でしょ? それにこの子を一眼見てしまったら妻の子じゃないとバレちゃうからね」

 

 すると、当たり前の様にニコニコとしてオハラはそう言った。それはつまり、この赤子が彼の不義の子である事を意味していた。

 

 ああ、なるほど。俺はどうやら勘違いをしていたらしい。

 

 そう言えば、目の前の男はこの赤子を一言たりとも()()()とは言っていなかった。つまり、我が子などと思っていないのだ。俺はてっきり親と子に近しい間柄なのだと夢想してしまっていた。

 

 だが違った……どうやら、この男はこの子の"親"じゃなかったらしい。強いて言えば、()()()()()()()()だ。

 

 きっと、俺がヒトであったのならこの手は怒りで震えていただろう。感情を無くしていなかった事が救いに感じる暇も無い程、その時の俺は怒っていた。

 

 だが手は出せなかった。赤子に差し出したままの右手の指が、小さな両手で握られていたから。

 

 金色の産毛、つぶらな青い瞳、白い肌。目の前の男とは似ても似つかない。思えばこの時初めてこの子の目をしっかりと見た気がする。

 

 振り払おうと思えば振り払えた、だがそんな気は起きなかった。

 

 何を考えていたのか、その時この子は俺を見て目を細めたのだ。途端に、先程まで感じていた怒りは消えた。代わりに感じたのは、この子を守り育てようと言う使命、あるいは決意の様な物だった。

 

 うっすらだが話の筋は見えた──目の前の男は不義の子を厄介払いする為、ロボットを購入し別荘で育てさせようとしている。

 

 話を整理すればこんな物だ。こんなつまらない一文に収まる男を気にかけている暇は無い。

 

 俺だって死んだと思ったら次の瞬間ロボットになっていただけの存在で、そこを深く考えていてもしょうがないし、この子の世話を出来るのは今俺しかいない以上、この役から降りたくもない。それにこの身体がロボットだって言うのなら、生まれ変わりでよくある話の元の人格云々で悩まなくて良い分、得だとも言える。

 

 今はとにかく、この子の事を考える。俺はそう決めた。

 

「分かりました。私が必ずこの子を育て上げます」

「うん、じゃあ頼んだよ」

 

 男は手をフラフラと振りながら部屋を出ようとする。が、途中で何かに気付いた様子で振り返った。

 

「あ、そう言えば苗字だけどその子は雑賀じゃなくて平井だから、そこん所、よろしくね」

 

 何故か男は苗字だけを言って部屋を出ようとする。苗字が違うのは薄々分かってはいたが、名前はどうしたのか。嫌な予感を振り払って聞いてみれば、男は「ごめん、そっちで考えておいて」と、言ってそそくさと部屋を出て行った。

 

 呆れて物も言えないとはこの事だろう。俺は暫くの間、誰もいない部屋で固まっていた。

 

 すると視界の端で小さな手が振られる。この子の名前を決めなければならない、と俺は今更ながらに気付いた。

 

 だが、良いのだろうか。名前を付けるのが無関係の俺で。そう勢いのまま動こうとした時、妙に冷静な俺の頭がブレーキを掛ける。

 

 この子が成長していった時、親から名前すら与えられなかった事にショックを受けるのではないだろうか。今すぐにでもあの男を追いかけて名前を……いや、それじゃあ余計にショックが大きくなるかもしれない。あの男ならその場で雑に考えた名前を付けるかもしれないからな。なら結局は俺が付けるしかない。もしこの時の事をこの子から聞かれたのなら、その時はその時だ。

 

 掛けたブレーキを壊し、決意で竦む意思を進める。ロボット一機に子育てが務まるか、俺の旧い常識じゃ測れない。だが俺と言う個人が合わされば、どうとにでもなる筈だ。

 

 この子は俺の子も同然と思って接する。不振がられない様ロボットとしてある程度の線引きをする必要はあるのかもしれないが、許される限り俺はこの子の側に居続けてやる。誰が何と言おうと。

 

「貴女は誰が何と言おうときっと望まれて生まれて来た筈です。少なくとも私は、いや俺は、今君をこの手に抱いて、生まれてくれて良かったと思ってる。

 

 だから、君の名前は──ノゾミだ」

 

 

 

 ──✳︎──

 

 

 

【人生】我、金髪碧眼色白美少女に転生せり。part1【勝ち組?】

 

1:異世界の美少女イッチ

 釣りじゃないぞ。

 

2:異世界の名無し

 は? 俺なんか銀髪紫眼褐色美少女に転生してるんだが? 

 

3:異世界の名無し

 速攻転生マウントやめてもろて。

 

4:異世界の名無し

 本当にござるか〜? 

 

5:異世界の名無し

 転生者掲示板でも最近フェイクとかあるしな。画像pls。

 

6:異世界の美少女イッチ

 ほい

『ダブルピースする金髪碧眼色白美少女の画像』

 

7:異世界の名無し

 こマ? 

 

8:異世界の名無し

 ガタッ! 

 

9:異世界の名無し

 全裸待機してて良かったぜ

 

10:異世界の美少女イッチ

 >>9

 服着ろ淫獣。

 

11:異世界の名無し

 で、最近はファンタジー世界に転生するのが流行りみたいだけどイッチはどんな世界に転生したんだ? 

 

12:異世界の美少女イッチ

 >>11

 近未来世界。一家に一台ロボットとかそんな感じの世界。僕の家にもリッターって名前のメイドさんみたいな役割のロボットが居たりする。

 

13:異世界の名無し

 近未来って聞くとファンタジー世界よりロクでもない世界とかありそうやな。

 

14:異世界の名無し

 カレ◯デバイス、エン◯ェルユニット……うっ、頭が……。

 

15:異世界の美少女イッチ

 勝手に不穏な空気にすんのやめーや。我美少女ぞ。

 

16:異世界の名無し

 美少女が一体何の威厳になるんですかねぇ……。

 

17:異世界の名無し

 てかこれイッチは初めてスレ立てたんだよな。これまで何やってたんだ? 

 

18:異世界の名無し

 一人遊びでお楽しみしてたんでしょ。

 

19:異世界の名無し

 ワイ世界見通せる千里眼持ち、イッチは同居してるロボットにビビって一人遊び出来てない模様。

 

20:異世界の美少女イッチ

 >>19

 お前ふざけんなよ。

 

21:異世界の名無し

 草

 

22:異世界の名無し

 草

 

23:異世界の名無し

 イッチガチギレで草。

 

24:異世界の名無し

 いややったんワイやけどワイでもバチ切れるわ。

 

25:異世界の名無し

 >>21

 >>22

 >>23

 梯子外されてて草。

 

26:異世界の美少女イッチ

 真面目に話をすると僕は今16歳なんだけど、何故かこの歳になるまで掲示板を使えなかったんだよね。

 

27:異世界の名無し

 あっ……。

 

28:異世界の名無し

 あっちゃあ、またそのパターンか。

 

29:異世界の美少女イッチ

 え、何? 

 

30:異世界の名無し

 今度は何が起きるかな。

 

31:異世界の名無し

 一応聞くけどイッチは物心付いても掲示板が使えなかったんやな? 

 

32:異世界の美少女イッチ

 せやで。

 

33:異世界の名無し

 ならそのパターンやと高確率で一年以内に何らかの事件に巻き込まれるで。

 

34:異世界の美少女イッチ

 え? マジで言ってんの? 

 

35:異世界の名無し

 >>34

 これまで色んな転生者のスレ見てきたけどマジやで。もっとイッチの詳しいスペックとか聞けたら何かヒントが見つかるかもしれん。

 

36:異世界の美少女イッチ

 分かった、以下スペック。

 前世

 享年:20

 見た目:フツメンの男

 持ち物:特に無し

 

 今世

 歳:16

 見た目:金髪碧眼色白の美少女

 持ち物:脚の障害

 

 因みに友達は居ない。僕は金持ちの父親の不義の子らしいからあんまり学校とか外に行かせたくないらしくて、義務教育とかリッターに教えてもらってた。メイドさんとかも居なくて家事とか僕の介助もリッターにしてもらったりしてた。

 

37:異世界の名無し

 ……

 

38:異世界の名無し

 えぇ……(困惑)

 

39:異世界の名無し

 僕っ子TS転生者って確定したのに誰も盛り上がらないとかマ? 空気冷え過ぎだろ……。

 

40:異世界の名無し

 それってつまり……ネグレクトってこと!? 

 

41:異世界の美少女イッチ

 そうなるかな。この世界でも完全にロボットに育児丸投げは虐待では、みたいな感じらしいし。

 

42:異世界の名無し

 クォレハプラマイゼロで無罪ですね……。

 

43:異世界の名無し

 何の罪なんですかね……? 

 

44:異世界の名無し

 美少女誕生罪? 

 

45:異世界の名無し

 誘い受けショタ勇者の性◯隷に充てがわれてる長身筋肉質美女奴隷のワイはトントンで無罪やな。まあショタ揶揄うのは楽しいけど。

 

46:異世界の名無し

 唐突な性癖の開示、本気だね。

 

47:異世界の名無し

 ここには色んな転生者が居るけど結構アレな方の環境だな。ロボットと二人きりで16年間過ごすって自分なら気が狂いそうだわ。

 

48:異世界の美少女イッチ

 いや、案外ロボットは人間味があって退屈しないよ。寧ろ足が不自由な僕でも大丈夫な様に24時間体制で面倒見てくれてるし、話し相手としてもAIによくある会話の破綻とか無かったし、結構エンジョイしてる。

 

49:異世界の名無し

 へえ、未来のロボットって凄いんやな。

 

50:異世界の美少女イッチ

 でも気になる事があるんだよね。

 

51:異世界の名無し

 気になる事って、こっちはもうすでに山ほどあるんやが。

 これからイッチに何が起きるのかとか、親子関係とかロボットの扱いとか。後々話すんやろうけど。

 

52:異世界の美少女イッチ

 僕の世話役のリッターは汎用タイプで量産品の『イータ』って商品名のロボットなんだ。で、AIが自己学習で進化するのがウリらしいんだけど、リッターは僕が物心付いた時から人間と同じに見えるくらい感情を感じるんだよね。

 

53:異世界の名無し

 ロボットに感情って良くある話やな。そう言う系やと初期搭載されてるロボットとかもおるけど。

 

54:異世界の名無し

 例えば? 

 

55:異世界の美少女イッチ

 僕がこの世界で初めて風邪引いて寝付けなかった時とか、何も言わなくても自室で充電してたリッターがコードを持って僕の部屋で充電しながら子守唄とか歌ってくれたり、氷嚢を変える度に『大丈夫ですよ。必ず治りますから』って声掛けてくれたりしてさ。『甘い物を食べれば気が紛れます』ってすり下ろしリンゴとか作ってくれたりした。

 

56:異世界の名無し

 ……ママ? 

 

57:異世界の名無し

 ママァ……。

 

58:異世界の名無し

 ロボットやのにバブみを感じる。何やこれ。

 

59:異世界の名無し

 確かにただのAIにしては出来過ぎな気もするな。何というか文字だけで見ても思いやりみたいなの感じるし。

 

60:異世界の名無し

 なんかイッチに何が起きるか分かった気がする。

 

61:異世界の名無し

 お? 

 

62:異世界の名無し

 名探偵ニキか? 迷探偵ニキか? 

 

63:異世界の名無し

 多分、そのリッターって言うロボットがどっかの闇組織とかに狙われるパターンちゃうか? 

 

64:異世界の名無し

 なるへそ。

 

65:異世界の美少女イッチ

 え? リッターが狙われるの? 

 

66:異世界の名無し

 だってイッチには確かに親子関係のトラブルとか美少女故のトラブルとかありそうやけど、今の段階ならその親代わりのロボットが一番クサいやろ。

 

67:異世界の名無し

 確蟹。

 

68:異世界の名無し

 感情のあるロボットとか研究対象になりそうだしな。

 

69:異世界の美少女イッチ

 じゃあどうすれば良いの? 

 

70:異世界の名無し

 腕力を鍛える。

 

71:異世界の名無し

 美少女らしく相手を魅了していけ。

 

72:異世界の美少女イッチ

 いやマジでお願い助けて。リッターは家族みたいな感じだし、守れなかったら絶対後悔する。

 

73:異世界の名無し

 マジって言われてもまだ確定じゃないからなあ。でもイッチも本気でその親代わりのロボット守りたいって感じだから下手な事も言えないし。

 

74:異世界の名無し

 もしかしたら別方向から問題が来る可能性もあるし、今は選択肢を狭める様な事はしない方が良いと思う。

 

75:異世界の名無し

 用は現状維持って事やな。

 

76:異世界の美少女イッチ

 現状維持ってちょっと不安だなあ。それって毎日ビクビクしながら過ごす事になるよね。

 

77:異世界の名無し

 でも何の心構えも出来てない状態から問題に巻き込まれるよりは百倍マシだと思う。俺なんかドラゴンに転生して早々魔王に殺され掛けたりしたし。

 

78:異世界の美少女イッチ

 じゃあ分かった、とりあえず普段通りに暮らしながら様子を見てみる。その間一旦掲示板にレスするのもやめとく。これ結構集中力使うし。じゃあね。

 

79:異世界の名無し

 おう。

 

80:異世界の名無し

 その後、イッチの姿を見たものは居なかった……完。

 

81:異世界の名無し

 いてらー。

 

82:異世界の美少女イッチ

>>80

 勝手に終わらせるな。

 

 

 ……

 

 

 …………

 

 

 ………………

 

 

150:異世界の美少女イッチ

【速報】我、魔法少女にならないかとスカウトされる。

 

151:異世界の名無し

 は? 

 

152:異世界の名無し

 は? 

 

153:異世界の名無し

 はぁ? 

 

154:異世界の名無し

 /人◕ ‿‿ ◕人\ <僕と契約して、魔法少女になってよ! 

 




因みに中身入りロボットの見た目はファ◯アボールのドロッ◯ルお嬢様を大人っぽくしたイメージです。

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