中身入りロボット、魔法少女の騎士になる。   作:ダイコンハム・レンコーン

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外が嵐だったので急いで書き上げました。割と急展開。

※今回は少し掲示板要素アリ。

2021/12/01/7:58 文章をざっと見直しておかしな所があったので修正(本筋には影響ありません)

追記:ID追加してみた


吹き荒れる嵐

 僕が辰虎(たつとら)リュウコちゃんとの会話を終え、二階にあるこの部屋の窓から外へ出ていくのを見届けたのとリッターが帰って来たのは同時だった。

 

 僕はリュウコちゃんから魔法について、軽く指南を受けた。

 

 ・まず僕の魔法陣は黄色、つまり雷魔法に対応していると言う事。

 ・そして魔法には()()を除き決まった手続きが存在せず、当人の認知と意識を元として発動すると言う事。つまりイメージが大事。

 ・だけどその意識を固定する為のルーティンとして詠唱や図形を用いる人も居るらしいと言う事。

 

 そして魔法使いのルールも教えてもらった。

 

 ・魔法使いは無闇に魔法の存在や魔王の存在などについて非魔法使い、つまりは一般人やロボットには言ってはならない、聞かれてはならないと言う事。

 ・魔法使いは非常時でない場合は結界や人払いなどの魔法を使用し、非魔法使いに見られる可能性を限りなく排除した上で魔法を使用すると言う事。

 ・もしも魔法の存在が知られた場合、人間ならば記憶を消す魔法を、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言う事。

 

 あまり外に出る事のない僕にとっては他二つはあまり関係がなかったから、三つ目が一番重要だった。そんなニュースは聞いた事もなかったけど、魔法使いがよほど巧妙に隠れているか、隠蔽されているかのどちらかなのだろう。それと……今までリッターを普通に外出させてたけど、魔法使いに会うリスクを考えると本格的にネット通販暮らしも考えないとなあ。

 

 後、極め付けはこれ──メタモルフォーゼ(変身魔法)

 

 魔法とは世界を塗り替える技、この魔法を自分自身に使用すると強靭な身体と圧倒的な膂力、そして魔法の行使にあらゆる最適化が施された仮想の肉体が手に入る。それに加えて魔力で編まれた服と武器まで貰えると言うのだから至れり尽くせりだ。でもこれは前述の()()の魔法で、それぞれの属性で決まった祈りの言葉、『詠唱』が必要らしい。僕も一応教えて貰ったけど、そんなすぐに使うだろうか。

 

 ただ彼女は「力を手に入れたからって調子乗んじゃねーぞ? 暫くはアタシもこの屋敷の近くに居る。何か起きたらアタシの名前を呼べば良いからな」と言っていた。去り際にはメアド交換と僕の魔法陣のスクリーンショットも自分のスマホに送る形で貰った。口調はどこか荒っぽい感じだったけど優しい子だったなあ。

 

 そう感慨に浸っていると、ノックの音がした。

 

 コンコンコンコンコン。──5回のノック、妙に几帳面な態度は間違いない、リッターだ。

 

「入って良いよ」

「ただいま帰りましたよ、ノゾミ」

 

 リッターはボディの型や声からして(恐らく)女性型ロボットだと思うけど、僕の部屋にはいつもこうしてから入ってくる。でもこれってどちらかって言ったら淑女って言うよりなんか紳士的だよね。

 

「……あれ、リッター、少し濡れてる? 何かあったの?」

 

 部屋に入って来たリッターの顔を見る。いつも通りの横に倒した涙型の瞳、その際の部分に水滴が垂れているのが見えた。ロボットは汗をかかないし、リッターが出ていた時に雨が降っていた訳でもない。と言う事で気になったのである。

 

「外に出ている際に風邪を引いた方とすれ違いまして。念のため身体を水洗いしていました。メイド服も新しいものに着替えていますので問題はありません」

「へえ、夏風邪かな」

 

 ああこれ、また人助けしてたんだろうな。──僕は確信した。

 

 リッターは昔から困ってる人が居たら片っ端から助けようとする性格(?)なのだ。多分風邪を引いた人を家まで運んだ、とかだろうね。

 

 僕はどちらかって言ったら鉄血冷血のロボットより、優しいロボットの方が好きだから全然オーケーなんだけど……まだ掲示板の事が頭に引っかかる。リッター自身が厄介事に巻き込まれたりするならやめさせた方が良いのかな。魔法使いの話もあるし……でもどっちの理由も言えないor言っても信じられない話だから頭が痛い。言えば聞いてくれるだろうけど、それはあくまでロボットで人に従順だから。リッターの意思は関係なくなっちゃうから、出来ればやりたくないよね。

 

「……リッターは」

「はい、何かありましたか」

 

 首を傾げるリッター、この距離感がどこまでももどかしい。

 

 リッターが本当の両親だったなら言いたい事も言えたのに。ロボットは決して人の大事な一線には踏み込めない。人はロボットを自在に弄れるのに、だ。まるで中世ヨーロッパ()の小説で出てくる奴隷みたいな都合の良い人形。昔の僕はそう言うのが苦手で、本当の所を言えば最初は冷めた目でリッターを見ていた。

 

 ……でもリッターは違った。

 

 リッターは僕以外にも平等だった。それは本来誰かに買われて使われるロボットとしては異質なのだろう、公共の物でもないのに購入者以外の利益の為に、時にそちらを優先する事すらあるロボットなんて本来ならおかしな存在だ。()()かもしれない。でも僕はそれで良かった。

 

 だから僕はリッターのメンテナンスをする様になった。リッターが自分自身でバグを見つけてしまわないように、バグを治してしまわないように。勿論適当にやってる訳じゃない、ちゃんとロボットの運用に関連した資格も取ってるし。いざそうなった時に何も知らずに今のリッターと別れるのが嫌だったって理由もある。でも、自分のわがままでリッターを縛るのも嫌だ。

 

 言葉を真っ直ぐに届けるには、人とロボットじゃ遠過ぎる。人からロボットに踏み込もうとすれば何もかも人間本位になってしまう。それはロボットの個性の蹂躙と支配だ。

 

「……なんでもないや」

 

 だから上手く言えない。それがいつも悩ましい。

 

「でしたら、私は夕食の支度に行ってきます」

「うん、今日も美味しいやつ、待ってるよ」

「はい、任されました」

 

 ねえリッター、君は何を考えているのかな。君の言葉で聞いてみたいな。──僕から聞くのは怖くて仕方がないよ。

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

203:異世界の名無し ID:/LCw2NyA4

 にしても近未来で魔法少女って……。

 

204:異世界の名無し ID:VclBrOrq6

 ま、ジャンルの掛け合わせは今に始まった事じゃないし多少はね? 

 

205:異世界の美少女イッチ ID:nNcEEDidp

 我を崇めよ。

 

206:異世界の名無し ID:fYHk9TyVG

 >>205

 わからせたい。

 

207:異世界の名無し ID:bfJl5UwUl

 調子に乗ったTSメスガキイッチがわからされるスレはここですか? 

 

208:異世界の名無し ID:5WDKhhOli

(近未来式ネグレクト喰らってるイッチは既に社会の世知辛さをわからされてる可能性が)濃いすか? 

 

209:異世界の美少女イッチ ID:nNcEEDidp

 僕の可愛さよりネグレクトの方が食い付き良いの腹立つ。

 

210:異世界の名無し ID:VTa/aMOxg

 ここの掲示板の住人は良くも悪くもピュアで過激な事に敏感だから仕方ないね。

 

211:異世界の名無し ID:00T4eIdnZ

 >>210

 ピュア……? 

 

212:異世界の名無し ID:Vww2l0GA/

 >>211

 邪悪と書いてピュアと読む。

 

213:異世界の名無し ID:eJeW5t8HR

 異世界で奴隷買ったワイ、ピュア過ぎて童貞を捨てられない模様。

 

214:異世界の名無し ID:sdZDukLos

 そいやイッチもピュア()過ぎてアッチの経験値0やったな。

 

215:異世界の美少女イッチ ID:nNcEEDidp

 >>214

 流れ弾やめろ。魔法打つぞ。

 

216:異世界の名無し ID:djVkkizm+

 >>215

 これは暴力系ヒロイン。

 

217:異世界の名無し ID:/goNgBE99

 てか魔法少女って何するんだよ。

 

218:異世界の名無し ID:alk2DS6nb

 そりゃもうR-18よ。

 

219:異世界の名無し ID:JC0rFceHV

 絶対エロい事されるゾ。

 

220:異世界の美少女イッチ ID:nNcEEDidp

 一般的なイメージとそう変わらないよ。

 

221:異世界の名無し ID:alk2DS6nb

 >>221

 やっぱR-18じゃん。

 

222:異世界の名無し ID:JC0rFceHV

 >>221

 えっど

 

223:異世界の名無し ID:Cfa/fIlfe

 >>222

 江戸(えど)は、東京の旧称であり、1603年(慶長8年)から1868年(慶応4年)まで江戸幕府が置かれていた都市である。 現在の東京都区部の中央部に位置し、その前身及び原型に当たる。

(Wikipediaより抜粋)

 

224:異世界の名無し ID:Rmthy8WqD

 江戸博識ニキありがとう。

 

225:異世界の美少女イッチ ID:nNcEEDidp

 >>223

 エドテン(プレ)やめーや。

 

 真面目に言うと大体は人を害する魔物って奴が居てそれを狩るのがお仕事らしい。

 

226:異世界の名無し ID:YV+1zs1+P

 へー、ファンタジー世界の勇者とか冒険者とかとやってる事変わらへんな。

 

227:異世界の名無し ID:kyQE7NkR1

 舞台は近未来だけど魔法少女もファンタジー枠だから当たり前ちゃ当たり前なのか? 

 

228:異世界の美少女イッチ ID:nNcEEDidp

「使命!」ってガッチガチの感じじゃなくて見つけたらやる、みたいな努力義務なんだけどね。

 

229:異世界の名無し ID:tBIpTohQ+

 って事は脚が悪くて自宅警備員なイッチはあんまり関係ないんか。

 

230:異世界の美少女イッチ ID:nNcEEDidp

 >>229

 それはそう。

 

231:異世界の名無し ID:zphh/Z1Af

 自宅警備員系魔法少女とか夢が壊るる^〜! 

 

232:異世界の美少女イッチ ID:kNEAneLni

 ん? 

 

233:異世界の名無し ID:09mZ9iUkN

 >>231

 夢を抱けるほどピュアかワイら? 

 

234:異世界の名無し ID:qNB46jskq

 俺なんかピュア過ぎて世界の人類の祈り受信して聖龍に覚醒進化したぞ。

 

235:異世界の名無し ID:NaNbbj9q9

 魔王に殺されかけたドラゴンニキおかしな事なっとるやん。

 

236:異世界の名無し ID:mX+wXxA8C

 ワイはピュアやのにショタ勇者を誘惑するサキュバス扱いされて今教会から指名手配されとるで。

 

237:異世界の名無し ID:09mZ9iUkN

 >>236

 ピュアとは? 

 

238:異世界の名無し ID:5VT2tdMne

 >>232

 と言うかイッチは何があったんや。

 

239:異世界の美少女イッチ ID:nNcEEDidp

 手元のスマホに避難勧告が入ったんだけど

 

240:異世界の名無し ID:5VT2tdMne

 ファッ?! 

 

241:異世界の美少女イッチ ID:nNcEEDidp

 大雨と暴風警報ってさっきまで雲一つ無かったのに。

 

242:異世界の美少女イッチ ID:nNcEEDidp

 ごめん、一旦スレから離れる。

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 夕食の準備をしていたリッターがノックも無く部屋に入って来た。余程慌てて居たのかメイド服の上から身に付けたエプロンも外さずに。

 

 でもまさか避難勧告にインターセプトを喰らうとは……おかげで収穫ゼロだ。魔法少女って聞いて奇妙な反応する人も居なかったし、この前にドラゴンの転生者が言ってた魔王って言うのが僕の聞いた魔王と同一人物か確認する前にこんな事になっちゃったし……掲示板を見てただ疲れただけな気がする。

 

「何もありませんでしたか、ノゾミ」

「うん、でもこれ……」

 

 僕は窓に向けて指を指す。篠突く雨と吹き晒す風がガラスをけたたましく打ち鳴らす。

 

「今先程アクセスフリーの航空ドローンの録画ログを確認しましたが、どうやらこの雨雲は突然発生した物の様です」

「それってゲリラ豪雨って事?」

「恐らくは」

 

 そう言うリッターは窓の外を眺めながら何度か頭を振っている。あれは何か複数のチャンネルを持つ端末にアクセスしている時のリッターの癖の様な物だ。ああやって首を振るのをスイッチにチャンネルを切り替えているらしい。他のロボットはやってないみたいだけど。

 

「屋敷は大丈夫なのかな」

「造りはしっかりとしているので問題はありません、しかし」

「しかし……?」

 

 

 

 ──✳︎──

 

 

 

 ──胸騒ぎがする。

 

 俺はそう言う事は無かった。心臓も無く、曖昧さも無いロボットの言葉としては相応しくなかったからだ。

 

 だがじりじりと強まる雨足と風が、まるで火の付いた導火線を見ている様な錯覚に陥らせる。何かが起きる、そんな予感がする。

 

 幾つかのアクセスフリーの航空ドローンの録画は見たが、風が強くドローンが飛べない今、リアルタイムの様子までは確認出来ない。

 

 避難すべきか否か、俺は考える。

 

 普通ならば既に避難出来る状態ではない、外は大雨と暴風で足の不自由なノゾミを連れて移動する方が遥かに危険だ。屋敷の中でやり過ごすべきだ。

 

 しかしあの掲示板に書かれた事が真実なら? これこそがその事件の前触れなのではないか。ならばノゾミを連れここから逃げるべきだろう。

 

 どっちだ、どっちが正しい。

 

 理屈では前者が、直感では後者が正しいと言う。まるで身体と魂が分離している様だった。

 

「ノゾミ、私達はこれから……」

 

 俺は直感に従いノゾミに話そうとするが──

 

 

 

 ──その時、部屋の電気が消えて、窓の割れる音がした。




後編へ続く。
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