中身入りロボット、魔法少女の騎士になる。 作:ダイコンハム・レンコーン
※今回は掲示板要素(少なめ)アリ。
追記:よくよく考えたらただのメガネじゃ目つきの悪さ誤魔化しにくいとわかったので、メガネは色入りメガネに変更になりました。
追記2:ID追加してみた。
魔法少女は魔法少女に惹かれ合う?
【人生設計】我、金髪碧眼色白美少女に転生せり。part2【壊れる】
1:異世界の美少女イッチ ID:nNcEEDidp
と言う訳で、家が半壊した。
2:異世界の名無し ID:sNOHnm9OD
えぇ……?
3:異世界の名無し ID:ZbQSYja6A
どう言う訳なのだよ。
4:異世界の名無し ID:11uUSAYIP
前スレあれ以来イッチが音信不通だったから皆心配してたけど、まさか嵐で家が壊れたのか?
5:異世界の名無し ID:/qoskQlFQ
そう言えばそんな話もあったな。
6:異世界の美少女イッチ ID:nNcEEDidp
違うぞ。なんか急に出て来た敵みたいな言動してる魔法少女みたいな奴にやられた。ついでに死に掛けた。
7:異世界の名無し ID:Ed+Qn4f0N
草。
8:異世界の名無し ID:hqr6ubqcM
草生えない。
9:異世界の名無し ID:ZnjRytO5x
サバンナに焼け野原生える。
10:異世界の名無し ID:8lsqDHWBn
>>9
焼畑農業やめてもろて。
11:異世界の美少女イッチ ID:nNcEEDidp
まさか本当に大事件に遭遇するとはね。
12:異世界の名無し ID:wRooPGcOg
基本的にここの掲示板は暇人の集まりやからな。転生者の行動とか逐一記録してる奴とかおるし助言とかは案外信頼出来たりするで。
13:異世界の名無し ID:O6Nbdqkwl
>>11
で、どうやって助かったん?
14:異世界の名無し ID:alk2DS6nb
そらエッな命乞いで。
15:異世界の名無し ID:jhJpEa/oL
同じネタ擦り過ぎはつまらんぞ。
16:異世界の美少女イッチ ID:nNcEEDidp
>>13
他の魔法使いに助けられた。
17:異世界の名無し ID:8Gg1RfbEN
魔法使い?
18:異世界の名無し ID:QFbyqAA72
魔法少女とちゃうんか?
19:異世界の美少女イッチ ID:nNcEEDidp
魔法少女って名前を使ってるのは自分流。その界隈では魔法使いって呼ばれてる。だから魔法使いになるのに男女は関係ない。
20:異世界の名無し ID:tzcAClNTD
ならワイは魔法使いになっても魔法少女にはなれんのか。
21:異世界の名無し ID:f60MQKvF/
次があればワンチャン。
22:異世界の名無し ID:oc1UoyXmh
>>21
頭爆豪か?
23:異世界の美少女イッチ ID:nNcEEDidp
おかげで命はまだこうしてある訳よ。流石に二度目の死は嫌だし。
24:異世界の名無し ID:XdIaNXY6m
じゃあイッチは今何してるんや
25:異世界の美少女イッチ ID:nNcEEDidp
>>24
今は残った部分で生活してる。リッターは家が半壊した時の影響で専用の高電圧給電口が使えないから長めの充電中。
26:異世界の名無し ID:XdIaNXY6m
なるへそ。
27:異世界の名無し ID:Wj65BSZ2O
まあ、イッチが無事で良かった。屋敷も思ったより大丈夫そうやったし。
28:盗撮魔 ID:GJJQ2D9c7
千里眼持ちワイやけど、イッチがゴタゴタに巻き込まれてる姿はよう見えへんかったんや。イッチの方で何か心当たりあるか?
29:異世界の名無し ID:amrrBc6hu
千里眼ニキちすちす。
30:異世界の美少女イッチ ID:nNcEEDidp
>>28
多分、前にレスした時に発生してた嵐は魔法か何かだと思うから、それが影響したんじゃないかな。
31:異世界の名無し ID:qNB46jskq
>>30
うへえ、それ俺殺しに来た魔王の権能無効魔法みたいじゃん。あれの所為で俺不壊の権能持ちだったのに殺されかけたし。
32:異世界の名無し ID:t/egSGhgv
不能の権能?(難聴)
33:異世界の名無し ID:mX+wXxA8C
旦那様のショタ勇者も道中で会った邪魔くさい邪神殺す時に似た様な質の魔法使ってたな。ワイがほぼ脳筋みたいなモンやからよう分からんかったけど。
34:異世界の名無し ID:xe2nXkriA
>>32
耳悪いね〜眼科行け(XXハンター)
35:盗撮魔 ID:GJJQ2D9c7
ワイの千里眼をジャミングするとかその世界の魔法どないなっとるんや……。
36:異世界の名無し ID:oX7yN+vCN
>>34
その語録が色んな意味で正しく使われてるの初めて見た。
37:異世界の名無し ID:s7tuNpf0C
自分はごく普通のファンタジー世界に転生してるけど、権能無効の魔法とか神レベル扱いなんですよ。イッチの世界はインフレが限界に達した少年漫画世界か何かで?
38:異世界の名無し ID:jT5dCHNZF
>>33
しれっと結婚してんじゃねーよwww
39:異世界の美少女イッチ ID:nNcEEDidp
>>33
薄々分かっては居たけどこっちとは時間の流れだいぶ違うんだな。こっちはまだ掲示板出来る様になって二日目ぞ。
40:異世界の名無し ID:t59jGDCVe
普通の掲示板と違って書き込んだ日時とか表示されへんしなここ。
でも一日の概念とか惑星の大小とかでも変わってくるし、そこら辺の事考えると案外全部ちゃんと同時系列で進んどるんかもな。
41:異世界の名無し ID:WjtYsdZp/
>>40
天文学に自信ニキの来訪が待たれるな。
42:異世界の名無し ID:kleiZ3EaK
でもとりあえずイッチの無事が分かって何よりだった。
43:異世界の名無し ID:QyQzysjRg
せやな、それが一番良い報告だった。
44:異世界の名無し ID:Hq3WSTKsX
転生する世界によってはすぐ死ぬ奴もおるしな。
45:異世界の名無し ID:K3vUM6xj3
私みたいに奴隷になって行く先によっては心か身体を壊される転生者も居るしね。因みに心因性の失語症ナウ。無様過ぎて笑える。
46:異世界の名無し ID:qNB46jskq
俺みたいに魔王と出会うとか言う負けイベ押し付けられる奴もいるしな。
47:異世界の美少女イッチ ID:nNcEEDidp
さてはこのスレ、ロクな人生歩んでる奴が居ないな?
48:異世界の名無し ID:DMypGL4qg
とっくにお陀仏した奴らの集まる所や。どっち道ロクな生き方は出来へんやろ。
……
…………
………………
「ふぅ……、コレでひとまずは一件落着、かな」
車椅子に腰掛けながら、僕は目を見開く。
2階の窓から外を見ればもうそろそろ太陽は真上に登ろうかと言う頃合い。外では今が夏だと狂った様にアピールする蝉の音の大合唱。ここ周りが雑木林だから蝉時雨が凄まじいのなんのって。
掲示板をあんな形で離席した僕は、流石に悪いと思ってこうして生存報告を終えた。
今朝は色々ありすぎて思い出すだけでも疲れたよ。例えば謎の魔法使いに助けられた後とかね。
そう振り返りながら、僕はつい数時間前の事を思い出す──
──騎士の姿をした魔法使いがどこかへ去っていくのを見届けた僕(変身体)は、少し置き場所の変わっていた電動車椅子に座り変身を解いた。
変身を解くと太ももに負った傷は無くなっていた、同時に足も動かない状態に戻ってしまった。どうやら一種のアバター、仮想の肉体を作るのが変身魔法の力らしい。
で、変身を解いてただの平井ノゾミとなった僕はあの騎士が戻って来るのを待っていた。『一般人が魔法を見たら記憶を消す』と言うルールだが、僕は一般人ではなく可憐な魔法少女だ。さっきは騎士の威圧感に咄嗟に正体を隠してしまったが、戻って来た時に僕こそが先の魔法少女だったのだ! と言えば問題は無い。
ま、リュウコちゃんの事は知らないみたいだったけどあの騎士は僕(美少女体)を守ろうとしていた訳だし、話せば理解してくれるだろうな〜と僕は考えていた。
……けれども、僕の元に騎士は来なかった。代わりに来たのは
「大丈夫でしたかノゾミ」
何故か起動状態のリッターが現れ、僕を見つけるやいなやその硬い胸に抱き締めていた。いつもより痛いくらいに。
「無事ですね、無事なんですね。どこも痛くはありませんか」
「大丈夫だよ、リッター。でも胸がゴリゴリしてちょっと痛いかな」
「ノゾミ。もう今は電源を切った事を追及する気はありません。ただ無事で良かった。それ以上の事はありません」
「ねぇリッター、ちょっと痛いんだけど、聞いてる?」
リッターの肘関節で、ギギギ、と
「ノゾミ……良かった」
「……」
だけど、淡々と、それなのにどこか感情が篭っているリッターの言葉に、緊張が解けて泣きそうになったのはここだけの秘密だ。
──でも戻って来たのがリッターなら話は変わる。
リッターはロボットだ。だから魔法使いに関わる情報は話せない。予定が狂ってしまった僕は咄嗟に言い訳を並べた。とんでもない言い訳を。
「ねぇ、リッター? 変な事言うけど、良い?」
「はい。なんですか」
「僕って、
それは、記憶喪失。
強引だけど、今はこうする以外の方法が思い付かなかった。下手に一部だけ真実を話すなんてして尻尾を出せばリッターなら言葉尻を確実に掴んで全部暴いてくる、そう思ったからだ。とって付けた様な言い訳に見えるのは百も承知だった。
「それは……」
それに対しリッターは妙に長い間を置いてこう言った。
「……私にも分かりません。再起動した時には、屋敷の外に居ましたから」
「そっ、か。ごめんねリッター、おかしな事を聞いて。気付いたら書斎で車椅子に座ってたから、不思議だなって」
僕はてっきり嘘だと疑われると思ったけど、リッターはそれを聞いたきり何も言わなかった。不思議には思ったけど、どうにも答えは出なかった。
それにリッターも騎士や魔法について一切知らない風だったので僕の方も下手に触れる訳にもいかず、
──これが、今朝の顛末だ。
あの時戻って来たリッターは充電を消耗し切った状態で、今は長い給電時間中。でもどこでそんなに消耗してたんだろうか、次のメンテナンスでバッテリーが弱ってたら取り替えよう。
──トンカントン、ギコギコ、トンカントン。
そんな事を考えていると、遠くの方から規則正しい工事の音が聞こえてくる。あれだけ派手に吹き飛んだエントランスホールをそのままと言う訳には流石にいかない。今は屋敷に業者を呼んで吹き飛んだ部分を一度綺麗に解体している最中だ。流石に近未来とは言えどすぐに元通り、って事は無いらしい。それでも着工から三日もせずに解体出来るって言うんだから凄いけどね。
「……もうそろそろかな」
僕は備え付けの冷蔵庫の中にあったタッパー入りの焼きそばとペットボトルの麦茶を取り出し、電子レンジで焼きそばは温めてからそれを持って部屋を出る。おお、作り置きとは言えなかなかに美味しそうなソースの香り。小分けにされた鰹節と青のりの入った袋も持って行こう。
何するのか。そりゃ昼休憩の差し入れに決まってる。
この世界では単純な作業の殆どが機械に置き換わってるけど、それでも人の目はかかせないようで、建設や解体において最低でも1人は人間の現場責任者を置かないと作業が出来ないルールになっている、とリッターが言っていた。
だからリッターは充電の為にスリープモードに入る前に「来てくれた作業員の為に差し入れでも用意しておきましょう」みたいな事を言って片手間にこの焼きそばを作っていた。なんだかリッターってお母さん、いや"オカン"みたいな所があるんだよなあ、いつもの事だけど。
因みに今日来てくれた作業員は現場責任者が1人、他の作業員は皆ドローンやロボットみたいで、朝から休みなく働いている。
エントランスホールが壊れているので、やや遠回りをしてから解体現場へ向かう中、廊下の窓の外に、倒れた木に腰掛ける作業服を来た黄色いメットの人影が見えた。多分あの人だ。
バリアフリー化されたスロープ階段を降り、裏口から外に出てすぐに例の人影は見つかった。
近くにゴミ袋の様な物も無いし、まだ昼食もとっていない筈だ。今なら大丈夫だろう。僕はそう考えてその背中に近付く。
「あの、休憩中すいません」
「えっ?」
僕は面食らった。タオルを首に掛ける作業服の背中に声を掛けたら、返って来たのは紛れもない少女の声だったからだ。
そして更に。
「……綺麗」
振り返ったその少女の顔が、やたらと綺麗に映ったからだ。
二重のパッチリとした瞳、額に浮かぶ汗、紅潮する小麦色の肌。年は同い年か、1、2歳上辺りか。
健康的なそれらがやたらと眩しく見える。これは今世の僕がインドアだからだろうか。そしてそこに興奮を覚えないのは今の身体の所為だろう。かれこれ後数年もしたら今の生活が前世の年数を超えてくる。何だかんだ言って僕も女の子になっていってるんだろうね。
「……あっ! もしかしてこの木、勝手に触っちゃいけないヤツでしたか!? すいませんその! え〜とあの!」
「違います違いますよ! コレ、差し入れです!」
ボ〜ッと見ていたら、折れた木から飛び上がる様に立った少女が慌てて弁明しようとしたから、僕も慌てて焼きそばと麦茶の入ったポットを差し出した。
「えっ、そんな、悪いですよ!」
「悪くありませんよ。折角来てもらってるんですから」
遠慮する少女に少しずつ距離を詰めていく僕。こうなったら遠慮大好き日本人は話が長くなる。だから必殺技を使わせて貰おう。
まずは車椅子で相手の足元に近付き!
「それとも……」
首の角度は45度! 髪が一気に片側に流れる事でよりその動きは強調される!
「焼きそばは……」
そして上目遣いに相手を見やり、捨てられた子犬の様な切ない顔で決め!
「お嫌いでしたか……?」
これぞ儚げな車椅子美少女にこそ許される技──「儚げな美少女に丁寧語で喋られたらどうやっても断れない」だ。
「……かわっ! 食べます食べます! あ〜大好きなんですよ私焼きそば!」
「良かったです!」
僕にっこり、彼女もにっこり。これぞWin-Winってね。効果は抜群だった様で、急いで焼きそばの入ったタッパーとペットボトルに入った麦茶を受け取ると、ヘルメットを脱ぎ、折れた木に座ってせっせと食べ始めた。
──そして、僕の目線は彼女の頭に吸い寄せられる。別に頭に不可逆性の致命傷がある訳ではない。
ヘルメットの中には折り畳まれた髪が詰まっていたのだろう、予想よりもボリュームのある彼女の髪は風に乗ってパッと開くのだが、その髪が特徴的だった。
──薄い黒に金色の毛先。
赤い髪や青い髪は見た事がある、と言うか昨日見たばかりなのでそれに比べればまだ現実味のある色だ。だがそこじゃない、色はどうだって良い。奇抜な色なんて今の世の中幾らでも着けられる。
気になったのは、それがお洒落の為にしている様に見えなかった事だ。
俗に毛先カラーやら裾カラーやら言われている彼女のそれだが、僕の勝手なイメージではそんなお洒落をする人間は大概他の部分もお洒落にしているだろうと思っている。ネイルだとか、化粧だとか、仕事中でもお洒落を忘れない、ある意味尊敬出来る人達だ。
でも彼女は割り箸を握る指先を見てもピンク色の長くもない普通の爪だし、ピアス穴すらも無い、化粧だってしている様には見えない。……て言うか化粧無しで綺麗に見えるのはかなり凄いな。
そう、言ってしまえば難癖みたいな物だ。けども気になった。何か勘の様な物が働いたのかもしれない。
工事現場で働く少女、あまりお洒落をしていないのに毛先カラー、休憩中なのに食事も取っていなかった──
──もしかして、お金が無い?
趣味:人間観察と言えば驕り高ぶった重度厨二病患者の精神病棟みたいな終着点だが、その手前くらい、自分の観察眼を試す程度の軽度厨二病患者ラインならば多くの人が踏み入ったのではないだろうか。どうやら僕は2度目の、かつ遅めの厨二病を患ったらしい。初対面の相手に心中とは言えこんな失礼極まりない妄想をしてしまっている。
……と言うか、何で僕は見ず知らずの他人の懐事情に頭を働かせているんだ。
やたら気になるこの感じ、恋、じゃないな。どこかで繋がっている様な……いや、繋がってはいない。似てる、のかな。
「ああ、そっか。これ魔力だ」
ふと、口に出た。
僕と彼女、互いにある特殊な共通点、あるとすればそれだ。人が見知らぬ人と出会った時、安心や親愛を得る過程で自然と共通点を見出していく様に、本能でそれが分かった。
「……やっぱり知っていたんですね」
「君、関係者だったんだね」
それもそうか、ここは正体不明の存在に攻撃を受けた場所。詳しく調べればこの世に存在しない筈の力、魔法に辿り着けるかもしれない情報源でもあるんだ。
仮にリュウコちゃんが言っていた様にあちらこちらに魔法使いが居るのなら、この痕跡を一般人に見せる筈もない。処理させるなら同じ魔法使いにさせるだろう。
「で、君が来た訳だ。なるほど良くできてる、用意するのは現場責任者1人で良いからね」
「平井ノゾミさん、貴女は過程を飛ばしがちってよく言われませんか? ミステリアスで可愛げがありますけど」
「やだなあ、褒めても焼きそばしか出ないよ? 後、僕だけ名前を知られてるって言うのはフェアじゃないよね、君の名前は?」
彼女の顔は、先程までの溌剌とした物から打って変わり落ち着いたどこか冷たく怜悧そうな顔に変わっていた。黄色は女児アニメ文脈で言ったらパッション枠なんだけど、どうやら彼女はクール系らしい、見た目はガテン系の服装だけど。
「私の名前は
「キズナちゃんね。でもまだ言いたい事とかあるんじゃないの?」
いつの間にか焼きそばを完食していた彼女は、作業服のポケットから取り出した金のフレームの
「そうですね……ノゾミさん、私達のチーム、『トライスター』に入りませんか?」
「チーム? 魔法使いのチームがあるって事?」
「魔法使いはその殆どが単独で行動しますが、中にはこうして足並みを揃える者も居ると言う事です」
「ただねえ、昨日変なヤツに襲われたばかりの子に突然過ぎない?」
するとキズナちゃんは僕の頬に手を当てる。こうして間近で見ると、メガネでも隠せない程目付きが悪いのが分かる。さっきまでのパッチリとした目は演技なのだろう。今の彼女は若干インテリヤクザの風格がある。
「だからこそです。貴女を守る為に必要な事だと私は考えています」
「へえ、因みにこうやって他の子も勧誘したのかな」
「はい、先輩から『可愛い子ぶるのは君には無理だから、勧誘するならこうしろ』と言われたので」
「あ、言っちゃうのね」
こうして目を見て初めて分かった、キズナちゃんの双眸に輝く黒に似た紫紺の瞳、やや凶相めいたそれは昨日会ったばかりのリュウコちゃんを思い出す。
リュウコちゃんも若干ガラの悪い見た目をしていたが、あの子も女の子をナンパする為にあんな口調や格好をしていたのだろうか。信頼が揺らぐぞ。……と言うかあれからリュウコちゃんからの音沙汰が無いんだけど、大丈夫なのかな。
「……確かに、昨日の事で自衛にも限界はあるって分かった」
「でしたら──」
振り返り、屋敷を見る。
少し悪巧みを思い付いた。
「でも、無理だね」
「なぜですか?」
「僕にとって何よりも護りたい隣人がロボットだからだよ」
キズナちゃんは少し考え、僕の考えを読んでみせた。
「なるほど、魔法使いのルールですか。……所で、そのロボットは魔法について何かご存知では?」
「いや、何も知らないよ」
自分の命の次に、いやそれと同じくらいに護りたい存在はロボットであるリッターだ。ロボットだからと言って他に代わりなど居ない。
だから、どうにかリッターを安全圏に置く手段を探そうと、そう意気込んでいた時。
「──しかし、近代社会の歪みですね。ロボットが賢くなり過ぎて、ただの金属の塊にありもしない命を見出す」
キズナちゃんは、少し俯いて懺悔する様に言葉を溢した。
「……それ、もしかして僕を煽ってる?」
「いえ、私の独り言です」
ルールを捻じ曲げるには少なくとも何か力が必要だ。数か地位、それか物理的な。もし彼女にそれがあるなら利用するのも手だと思ってたけど──
「それにルールは絶対です。変わりはしないでしょう」
「そう。なんで?」
「人の欲望の行き着く先、それが機械です。ですがそれはあくまでも道具でしかない、それも人の願いを叶える為の。それがあらゆる生命体の願いに結びつく力、魔力と出会えばそれは……人の願いの為に全てを歪める最悪のランプの魔神になってしまう」
「……それが魔法を知ったロボットを破壊する理由って事? ロボットの言い分は聞かないのかな?」
「見過ごせば歯止めが効かなくなりますから。その先に待つあらゆる物事を解決する
──どうやら、僕と彼女は噛み合わないらしい。
この身体で過ごす事齢16年、僕はその殆どをリッターと暮らして来た。それは他者から見ればとても孤独に見えるのかも知れない。人の愛を知らない可哀想な子なのかも知れない。現に掲示板の人は最初、それに対し憐れみの様な言葉を投げてたし。
でも僕はその前に20年間人に囲まれて生きて来た経験がある。だからこそリッターには紛れもない人にも負けない愛があったと思っている。今更誰が何と言おうとリッターを道具になんて思えやしないし、命のある無しはともかく、リッターは僕にとって簡単に切り捨てられる存在なんだと言われているようで腹が立った。
「でも今の世の中、どこにだってロボットは居るでしょ。"起こるかも知れない危険"それを恐れて片っ端からロボットを破壊しなくちゃいけない被害を生むくらいなら、柔軟性を欠いたルールを改善した方が良いと思うけど」
「それでも絶対不可侵は存在します。潔癖な程に禁忌に触れず触れさせず生きるのも今を守る為にまた必要な事です。それにより犠牲が生まれようと必要経費でしかありません」
まるで紙に書かれた他人の台詞を読む様に、どこかキズナちゃんは上の空でそう言った。彼女の言葉の中には自分の言葉がどこにもない。
それに僕は自由だった。足は動かなくてもリッターが居たから。対して彼女は五体満足の健康体なのに、何かに縛られている。それが魔法使いになのか、チームになのか、それとも個人的な何かになのかは分からない。何かを諦めている様な彼女の態度、それが更に癪に触る。
「……じゃあ悪いけど、今の君のチームに僕の身を置く事は出来ないかな。今のままじゃ寧ろ
「そうですか。残念です」
昨日に続き、今日も交渉は決裂だ。どうやら僕は16年の対人経験のブランクで話し合いがド下手クソになっちゃったらしい。……匿名会話アプリとかで練習した方が良いのかなこれ。
「それと……」
背中を向けて去ろうとした僕に掛かる声。
「まだ何か」振り返ってそう僕が言おうとした時、彼女は空のタッパーを僕に見せて言った。
「頂きました、ご馳走様でした。美味しかったです」
そう言った彼女は、氷の様に冷めた表情を少し緩め微笑を浮かべる。それが無意識かどうかは分からないが、微かに彼女の人となりが見えた気がした。
とんだ奇襲に、出かけていた悪態も引っ込んでしまう。
「それ、礼ならさっき僕が言ってた彼女に言って欲しいんだけどな。そもそも君に差し入れを、って言ったのは彼女なんだよ?」
「あ、そう、でしたか。……タッパーは洗って明日返します」
「言っとくけど一応、明日の分の差し入れもあるから。彼女のお手製、残したら承知しないぞ。後……僕も言い過ぎた、ごめん」
行き場のない苛立ちで、低い声色かつ掲示板での口調が少し出てしまっていて。でも彼女は気にも止めず、恭しく頭を下げて礼と謝罪を言う。
「……はい、ありがとうございます。私も貴女の事をよく知らないまま差し出がましい事を言ってしまい、申し訳ありませんでした」
そうして、キズナちゃんはヘルメットを被り現場へと戻って行った。
──さっきのキザなヤツよりも今の柔らかい方が受け良いと思うんだけどなあ。僕はついそんな事を考えていた。
と、彼女に対する印象が幾分か持ち直していた事に気づいて、呆れる様に口から溢す。
「はあ、やっぱり美少女ってズルいよなあ」
そして、もう一言に自戒の言葉を。
「……歳を重ねただけじゃ大人になれない、か。精神年齢40代があんな女の子にキレちゃってまあ、情けないよね全く」
一難去ってまた一難、台風一過の後始末。
自分の身を護る為、リッターを危険に晒すか否か。予想よりも遥かに早く訪れた問いかけに、僕は結局答えを出せなかった。
今話は悩みながら書いたのでいつも以上にガバいかもしれません。
追記
今話の回想のリッター視点は用意する予定が無いので互いの思考を要約。
ノゾミ「(騎士が帰って来ても言えば分かってくれるやろ)変身解除」
リッター「ただいま(ノゾミは無事か?)」
ノゾミ「ファッ?!(リッター?! あ、よくよく考えたらこの事件リッターには何も話せる要素ないやん! せや! 記憶喪失のフリしたろ!)」
リッター「良かった、ノゾミが無事で(魔法使いはどこ行ったんだ? まあ、今はいいか)」
ノゾミ「いや〜何も思い出せないんだけど、リッターはどう?(無理があるけどゴリ押すしかないやろこんなん)」
リッター「(っ! もしやノゾミは先の魔法使いに記憶を消されてるのか? 魔法使いのルールに則るならばつまりノゾミは一般人……? そうなると魔法の事を話すのは不味い気がするな)私も何も知りません」
ノゾミ「あっ、そっかぁ……(あれ? これで話終わり?)」
リッター側の考えはこんな感じです。
誤字報告ありがたや。