響け!ユーフォニアム〜北宇治のスーパー自由人〜   作:キングコングマン

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見学②

 

 「へぇー、アッキーと滝野の妹かー。凛花ちゃんはちょっとアッキーに似てるかな?さやかちゃんは……うん、まあこう言う兄妹も居るよね」

 

 そしてトランペットのパート練習。凛花とさやかを見比べながら、加部は2人の印象を口にする。

 

 「褒めてんのか貶してんのかどっちだよ」

 

 加部の微妙な評価に、滝野からツッコミが入った。

 2人ともどちらもトランペット希望だ。見知った顔も居るからか、合奏練習の時に比べれば凛花はあまり緊張していない。

 

 「ちょっと吹いてみてよ!来年、後輩なるかも知んないし!」

 

 「いいですよー」

 

 「は、はい!」

 

 続けて加部にそう言われて、凛花はリラックスした様子で、さやかは少し緊張気味に、返事を返す。

 やっぱりさやかはどこかまだ緊張が抜け切ってない様だった。

 

 「ど、どっち先吹く?」

 

 「どっちでもいいよー。さやかちゃんがやりやすい方で」

 

 尚も緊張気味にそう尋ねるさやかに対し、気の抜けた声で凛花は返す。こう言う部分は流石忍の妹と言ったところだろうか?

 演奏する事に対しての緊張はあまり無い様だ。

 

 「あ、ありがと。……じゃあ先に吹くね」

 

 そう言って吹く準備をして、さやかは一つ深呼吸をする。

 

 _______♪ー♪♪♪ーーー♪♪________

 

 やはり経験者であるからか、基本はしっかりとしている。緊張気味で音が少しブレているが。

 

 「おー、流石経験者。ちょっと硬いけど土台はしっかりしてるねー」

 

 そして最初に褒めたのは、忍だった。

 

 「ほ、本当ですか!?」

 

 忍に手放しに褒められ、途端に明るい笑顔を見せるさやか。それがきっかけとなったのか、さっきまでの緊張は何処へやら。水を得た魚の様に興奮した様子で忍に近づく。

 

 「ありがとうございます!!でも、まだまだ忍先輩には届きません!!技術もそうですけどやっぱ表現力はレベチです!!そもそも私なんかと忍先輩を比べるなって話ですけどね!!あと合奏練習中もやっぱり忍先輩は____」

 

 「はーい。さやかちゃんそこまでー。皆んな困ってるよー?」

 

 「あぁん!忍先輩!」

 

 慣れた手つきで凛花に忍から引っ剥がされるさやか。演奏では緊張してたのに皆がいる前でよくやるものだ。案の定、優子が凄い顔になっている。

 

 「兄ちゃんもデレデレしない!今は部活中だよ!!」

 

 「で、デレデレなんかしてないけど……」

 

 凛花に叱られ、バツの悪そうな顔をする忍。まあ女の子に褒められて悪い気はしないので、そこは許してあげても良い気がするが。

 ともかく、次は凛花の演奏だ。

 

 「あはは、次は、凛花ちゃんの演奏が聴きたいなー?」

 

 中世古がそう言うと、緩み切っただらし無い笑顔を凛花は浮かべる。

 

 「はぁい!香織先輩!見てて下さいね!私の演奏!!」

 

 先程までのしっかりとした妹はどこへいってしまったのか、これ以上無い猫撫で声で凛花は返事を返す。やっぱり彼女もカオリストな様だ。

 

 「……ん゛ん…」

 

 一つ咳払いをし、凛花の雰囲気が変わる。先程までの緩み切った表情とは一変、真剣にピストンの具合や管にホコリなどが付いてないか確かめる。

 

 「はい、じゃあ行きまーす」

 

 リラックスした様子でそう宣言すると、凛花はマウスピースに口をつけて演奏を始めた。

 

 ________♪♪♪、♪ー♪♪_______

 

 「すごっ」

 

 「ヤバっ、うっま」

 

 パートメンバーの面々から、驚きを持って迎えられる。レベルとしては、完全に中学生の域を超えている。

 彼女も忍と同じく5歳の頃からトランペットを吹いてきてきた。やはり楽器の演奏は"経験"がモノを言う。技術的な部分では、コンクールメンバーと遜色無い程だ。

 そんな凛花の演奏を聴いて、加部と吉沢の表情が少しばかり強張った。

 

 「やっぱり上手いね。流石秋川くんの妹さんかな?」

 

 中世古がニコリと笑ってそう感想を述べる。しかし、凛花は少し浮かない顔だ。

 

 

 「……うーん、ちょっとイマイチですね。安定してないところがありましたし」

 

 

 先程のカオリストぶりとは打って変わって、凛花は微妙な表情でそう呟く。あれでまだ納得行ってないのかと、パートメンバーは苦笑いを浮かべた。

 

 「チューニングちゃんとやったか?」

 

 しかし忍だけはいつもの光景の様で、凛花のトランペットを見ながらそう聞く。

 

 「あー、それかも。いきなり吹いたしねー」

 

 「ちゃんと準備してから吹けって」

 

 「分かってるよぅ……あと低めの音も安定してなかったかな?」

 

 「いつもと違う感じだった?」

 

 「うーん……」

 

 そしてメンバーそっちのけで兄妹で何処が悪かったなどの会話を始める。褒められたのに自分の演奏に納得しない辺りはやはり……

 

 「……中身はそっくりかな?」

 

 中世古が困り顔ながらも納得したように呟く。

 この音に対してのこだわりは兄妹揃って同じな様だ。

 

 

 ________________

 

 

 

 「どうだった?北宇治」

 

 そして時刻は夕方になり帰り道。並んで歩くのは秋川家の兄妹。凛花に対して、忍はそう聞く。

 

 「うん、良かった。やっぱ全国行く高校は違うねー」

 

 満足そうな笑みを浮かべて凛花はそう返す。経験者である凛花の目からしても、北宇治のレベルの高さには満足な様だ。

 

 「そりゃどうも。滝先生の指導も良かったろ?」

 

 「うん。あんだけ細かく指導してくれる人初めてかも。あとイケメンだしねー」

 

 ケラケラと笑いながら最後に付け加える様にそう言う凛花。滝先生のイケメンはともかく、その指導力には凛花も目を見張るものがあった。自身でも気付かない部分を滝先生が把握して、的確なアドバイスを送る。 

 

 「パートメンバーも面白かったろ?」

 

 「そーだね。さやかちゃんのお兄さんも居るし、高坂先輩はやっぱめちゃ上手かったし、優子さんも優しいからいいんだけど……」

 

 不満がある訳ではない。しかし凛花としては一つ残念な事があった。

 

 「はぁー……香織先輩、なんで今年卒業なんだろー……」

 

 心底残念そうにため息をつく凛花。今日1日で随分と中世古にお熱な様だ。

 

 「ふーん。そんなにか?」

 

 「はあ!?なに"そんなにか?"って!!来年香織先輩見れないとかこっちとしてはあり得ないんだけど!!」

 

 興味なさそうな忍に対し、声を荒げて反論する凛花。

 祭りの日と今日で2日間しか会ってないのによくもここまで好きになれるものだ。この人たらしぶりも彼女がマドンナと呼ばれる所以だろうか。

 

 「しょうがねーだろ。……ってか香織先輩が居ないからって志望校変えたりしねーだろうな?」

 

 「そりゃないけど……はぁ……私のモチベーションは真っ逆様だよ……」

 

 がっくしと肩を落とし、大袈裟に落ち込む凛花。そんな妹の姿に忍も大きくため息をついた。

 

 「はぁ……まあいいや。……後は気になるところとか無かった?」

 

 「うーん、気になるところかぁ……」

 

 忍にそう聞かれて、凛花は腕を組んで考える。トランペットパートはレベルも高いし問題無さそうだ。では、合奏練習。全体を見て、凛花が思う事とは……

 

 

 「うーん、ちょっとだけど、低音が弱いかも」

 

 

 凛花のその言葉に、忍は一瞬だけ眉を顰めた。

 

 「あー、まあ、そーだよなぁー……」

 

 そして難しい顔をして呟く様に忍はそう返す。

 

 「なにその返事?兄ちゃんらしくない」

 

 いつもなら発言がハッキリしている忍が言い淀む姿を見て、凛花は訝しむ。

 

 「ちょっとユーフォの方に問題があってね。……俺らだけじゃどうにもなりそうにないからどうしよっかなーって思ってるところ」

 

 「はあ、そうなんだ。……で、問題って?」

 

 「……フツーに、親子間の問題だよ。受験も近いしね」

 

 言いにくそうに忍がそう言うと、何が起きてるのかなんとなく察したのか、凛花も神妙な表情になる。

 

 「……そっか。ちゃんと話し合って解決出来ればいいね」

 

 「……"話し合う"、かぁ……」

 

 今日も来なかったそのユーフォニアムの演奏者は、ちゃんと親と話し合っているのだろうか?

 凛花の言葉を聞いて、そんな事を思う忍だった。

 

 

 

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