響け!ユーフォニアム〜北宇治のスーパー自由人〜   作:キングコングマン

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発表

 「ではこれより、オーディションを始めます」

 

 放課後、遂にオーディション。滝先生が音楽室でそう告げると、室内に緊張感が張り詰める。

 

 「私達が参加する、A編成でのコンクールは、1チームにつき最大55名しか参加する事が出来ません。つまり、ここにいる何名かは、必ず落選してしまう事になります」

 

 滝先生が淡々と続けてそう言うと、部員の顔がさらに強張る。

 

 「皆さん、緊張してますか?」

 

 「してまぁ〜すぅ……」

 

 滝先生の問いかけに誰かが情けない声でそう返すと、軽く笑いが起こった。

 

 「ですよね。……ですが、ここにいる全員、コンクールに出場するのに恥じない努力をして来たと、私は思っています。胸を張って、皆さんの今までの努力の成果を見せて下さい」

 

 滝先生がそう言うと、皆、真剣な顔つきに変わる。それは、先生の言う通り、自らが努力をして来たと言う何よりの証だった。

 

 「では、始めます」

 

 「「「「よろしくお願いします」」」」

 

 こうして、オーディションが始まった。

 

 

 ____________

 

 

 トランペットのオーディションの順番は、すぐに来た。

 まずはパートメンバーが音楽室の前に集められ、1人ずつ音楽室に入って行き、滝先生と松本先生の前で1人、演奏する。

 

 「では、中世古さんから」

 

 「はい」

 

 「頑張って下さい!香織先輩!」

 

 まずは三年生から。中世古が呼ばれ、吉川が応援の言葉を掛ける。

 それに応えるように頷くと、中世古は音楽室に入って行く。

 音楽室の外で待っているので、オーディション中の中世古の演奏は、他のパートメンバーの耳にも入る。

 やはり上手い。強豪校でもメンバーに入れるほどの音色だ。

 そしてもちろん、ソロパートの音色も聴こえてきた。

 トップバッターの中世古が終わると、次は笠野が入って行く。笠野は、中世古と比べると少し長めだったように思う。

 それが終わると、次は2年生組。最初は滝野が入って行った。

 そんな感じで、淡々とオーディションは進んで行く。

 そして遂に_______

 

 「次、秋川君」

 

 「うーい」

 

 忍の順番が来た。気の抜けた返事を返すと、楽器の中の埃を飛ばすように息を吹きかけ、音楽室へ向かう為に立つ。

 

 「……秋川」

 

 すると、順番待ちの吉川から話し掛けられた。

 

 「何?」

 

 「………何でもない。トチったら、只じゃおかないわよ」

 

 吉川から、応援とも取れない、激励とも取れない微妙な言葉を掛けられる。

 

 「とーぜん。滝先生と松もっさんをメロメロにしてくるわ」

 

 それに軽く笑ってそう返すと、忍は軽い足取りで音楽室へと入って行った。

 

 

 

 「2年3組、トランペットの秋川忍です。よろしくお願いしまっす」

 

 「はい、お願いします」

 

 音楽室に入ると、中央に滝先生と松本先生が並んでいた。オーディション前の挨拶をすると、滝先生からも挨拶を返される。

 

 「秋川君は、去年ソロコンテストで最優秀賞を取ってますね?……流石に、大舞台を経験したとあって、あまり緊張はしてないですね」

 

 滝先生が、机の上に置いてある紙を見ながらそう言う。恐らく、今までの奏者の評価や点数などが書いてあるのだろう。

 

 「そりゃ、もちろん。今からだって滝先生と松もっさんに早く聴かせたくて、ワクワクしてますよー」

 

 「松本先生だ!バカモノ!」

 

 相変わらず忍がひょうきんにそう言うと、松本先生から注意の言葉が入る。

 そのやりとりを見て、滝先生は満足そうに頷いた。

 

 「良いですね。いつも通りです。では、早速始めましょうか。では、36小節から」

 

 「はいはーい」

 

 こうして、秋川忍のオーディションが始まった。

 

 

 「はい、結構です。では、次に行きましょう」

 

 忍のオーディションは、滅茶苦茶早かった。指定されてた場所から、何小節か吹いただけで、滝先生に止められ、次の部分に移る。そんな事を何回か繰り返した後、遂にその場所が来た。

 

 「ソロパートです。124小節から、良いと言うまで演奏して下さい」

 

 淡々と滝先生からそう言われる。しかし忍は少し俯いて、何か考え込む様に黙る。

 

 「……どうしましたか?ソロパートですよ」

 

 それに怪しんだ滝先生は、再度忍に演奏するよう促す。

 そして数秒、一通り考え終わったのか、何か決意したような表情で忍は前を向く。

 

 「……はい。では、行きます」

 

 そして、ソロパートを吹き始めた。

 

 

 ____________

 

 

 

 数日後、音楽室。

 今日は、待ちに待ったオーディションの結果発表だ。

 再び、音楽室が緊張感に包まれている。「受かってますように……」や、「あんだけやったんだから大丈夫」など、発表を目の前に反応は三者三様だ。

 

 「それでは、合格者を読み上げる。呼ばれた者は返事をする様に」

 

 「「「はい」」」

 

 松本先生がそう告げると、すぐさま結果発表が行われる。

 

 「まずはパーカッション、田邊名来!」

 

 「はい!」

 

 「加山紗希!」

 

 「はい!」

 

 名前が、読み上げられて行く。

 呼ばれて喜ぶ者、ガッツポーズをする者。

 

 「瀧川ちかお!」

 

 「はい!」

 

 「サックスは以上の7名」

 

 「うぅっ……!!」

 

 松本先生に名前を呼ばれず、泣き崩れる者も居る。

 各々全力で挑んだオーディション。その結果に、一喜一憂する者がいる。

 ______そして、トランペットパート。

 

 

 「では、最後にトランペット!中世古香織!」

 

 「はい!」

 

 「笠野沙奈!」

 

 「はい!」

 

 「滝野純一!」

 

 「はい!」

 

 「吉川優子!」

 

 「はい!」

 

 

 

 「秋川忍!」

 

 

 「……はい!」

 

 

 「高坂麗奈!」

 

 「はい!」

 

 

 

 

 「以上6名!ソロパートは、高坂麗奈に担当してもらう事になる」

 

 

 

 

 松本先生がそう告げると、音楽室の騒めきが一層大きくなる。吉川に至っては、「えぇ!?」と、驚きの声を隠せないでいた。

 

 「……はい!」

 

 そして、そんな騒めきを一掃する様に、高坂は高らかに、返事を返す。

 

 

 そんな光景を忍は、薄く微笑んで見つめていた。

 

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