響け!ユーフォニアム〜北宇治のスーパー自由人〜   作:キングコングマン

37 / 138
今更ですが、主人公のイメージとして、自分の描いた絵を貼っておこうと思います。あらすじ欄にも貼ってありますので、確認していただけると嬉しいです。
 色もつけてないラフ絵ですが、そこは勘弁していただけると幸いです。

 
【挿絵表示】


 こんな顔しておいて、めちゃくちゃ変人です。
 




ユーフォの子

 

 高坂麗奈は、真っ直ぐだ。

 彼女は生粋のトランペッター。自分が目指すその場所に、何がなんでも到達しようと努力する。

 周りの音はどうでも良い。自分が上手くなれれば、自分が特別になれれば、それで良い。そんな考えを持つ少女だった。

 それで良いと彼女自身思っていた。

 

 「……久美子、……アッキー先輩って、どう思う?」

 

 「アッキー先輩?」

 

 部活終わりの帰り。電車待ちの駅のホームのベンチで、高坂は茶髪気味の癖っ毛の強い女子生徒を久美子と呼び、そう聞く。

 

 「アッキー先輩って、秋川先輩の事?」

 

 高坂に呼ばれたこの久美子と言う少女は、本名を黄前久美子と言った。1年生のユーフォニアムのコンクールメンバーである。

 高坂とはひょんな事で仲良くなり、今では親友と呼べる間柄になっている。

 高坂の質問に黄前は腕を組み、頭の中で忍の事を思い浮かべる。

 

 「……あんま分かんないや。アッキー先輩、アタシ話した事ないし」

 

 「……そう」

 

 黄前がそう返すと、高坂から少し落胆した様な声が出た。

 

 「……オーディションの事?」

 

 すると、黄前からそんな言葉が出て来た。それに高坂は「……うん」と、ひとつだけ返事を返す。

 

 「うーん、何て言うんだろうな、……アッキー先輩って、単純なんだと思う」

 

 「単純?」

 

 黄前の言葉に、首を傾げる高坂。

 

 「うん、単純。良いものは良いって言うし、悪いものは悪いって言う。そこに私情は無くて、いや、私情はあるんだけど、何て言うか……」

 

 話した事は一度も無いが、忍は部内でもかなり目立つ存在だ。合奏でもあれこれ何やらおかしな事をしているのは黄前も見ていたので、忍に対するイメージと言うものは持っていた。

 

 

 「おうおうおう、随分と言ってくれるねー、一年」

 

 

 すると、二人の背後から突然、男の声がした。黄前は「うぇああ!?!?」と変な声を上げてベンチから飛び上がり、咄嗟に声の方向へと振り返る。

 そして、人生が終わった様な、真っ白な表情になった。

 

 「先輩に単純たあ、どう言う了見だいっと」

 

 そこには、絶賛部活停止中の、秋川忍の姿があった。

 

 「あ、あのあの!えっと!その!!」

 

 「まーまー、取り敢えず落ち着きんさいな」

 

 取り乱す黄前に対し、忍はカラカラと笑いながらそう言う。そして、少しして黄前が落ちつきを少々取り戻すと、今度は恐る恐ると言った感じで忍の顔を見る。

 

 「……あのー……因みに何処から聞いてましたー?」

 

 「高坂さんが俺のことを黄前さんに聞いた時から」

 

 つまり、最初からと言う事だった。再び慌てた黄前は、必死に頭を下げる。

 

 「あ、あのあの!、違うんです!これはなんて言うか、悪口じゃ無くて褒め言葉と言うか……」

 

 「……そっか、俺は単純でバカでろくでなしだったんだな……どうしてこんな事になってしまったのやら……」

 

 黄前の反応を見て、これでもかと言うぐらいわざとらしく落ち込む忍。完全に面白がっているが、付き合いの無い黄前からしたら本気で落ち込んでいる様に見えてしまい、さらにあたふたしてしまっていた。

 

 「……アッキー先輩。久美子、困ってますよ?」

 

 すると、隣に居た高坂がいつも通りにそう言う。彼女は忍と同じトランペットのパートメンバーなので、ある程度忍の性格も知っている。

 

 「もー、つれないねぇ、高坂さん。ここは一緒に黄前ちゃんを精神的に追い詰める場面でしょー?」

 

 「なるほど……」

 

 残念そうに忍がそう言うと、合点が行ったかの様に高坂はそう呟く。その光景を見てようやく揶揄われている事が分かった黄前は、肩をガックシと落とした。

 

 「……はあ、騙されてたんですね。アタシ」

 

 「あっははは!良いねー、その反応!黄前ちゃん、よく面白い子って言われない?」

 

 そして、忍は大きく笑って黄前にそんな事を言う。どうやら随分とこの少女を気に入ったらしい。

 

 「そう言うのはあすか先輩で間に合ってます。って言うか、アタシの事知ってるんですね」

 

 それに、ジト目を向けながら黄前はそう返した。まだ初めましてで3分も経っていないが、なんだか小慣れた様なやり取りをしている。

 

 「うん、なつきちからユーフォに面白い子が居るって話も聞いてたし、実際面白かったからねー」

 対して忍は、ひょうきんにそう言い放つ。

 黄前は不思議な気持ちになっていた。なんというか、距離感を縮めて来るのがメチャクチャ早いのに、それが嫌に感じない。

 黄前久美子は、知らない人とはある程度一線を画すタイプなのだが、この秋川忍は、"それでも良いや"と思える様な何かを持っている様に黄前は感じた。

 

 「オーディションねー。どうしよっか?」

 

 そして、忍が一つ、ため息をついてそう言う。やはり話はバッチリ聞かれていたらしい。

 それならばと、そんな感情になっていたからか、黄前は一歩踏み込んだ質問を、忍にした。

 

 

 「あ、アッキー先輩は、……オーディション結果に納得してるんですか?」

 

 「してるよ」

 

 

 返事は、すぐに帰って来た。あまりにもあっけらかんと言い放った為に、黄前の反応が遅れる。

 

 「……え?してるんですか?」

 

 「だからしてるって。何?もしかして黄前ちゃんも滝先生が贔屓したとか思ってる?」

 

 聞き返して来た黄前に対し、困った様に笑って今度は逆に忍が質問した。

 

 「い、いや、そんな事は無いと思うんですけどー……」

 

 そして、黄前は彼女特有のどっちとも付かない発言をする。本音は晒してくれない様だ。

 

 「まー高坂さんが居る手前、言いにくいよねー」

 

 ケラケラと笑って、忍はそう言い放つ。と言うか、高坂が居る前で言えるはずもない。そして、続けて次に忍が発した言葉に、黄前は驚く事となる。

 

 

 「俺が納得してるのは、高坂さんが俺より良い音を出していたからだよ?それだけ」

 

 

 「……そうですか」

 

 

 黄前の目を見て真っ直ぐそう言い放った忍に対し、彼女はそんな事しか返せなくなってしまう。

 

 これは、本物だ。

 

 それが、この5分足らずのやり取りで、黄前が感じた事。何処までも愚直。そしてこれほどに真っ直ぐなトランペッターを、黄前はもう一人知っている。しかし、高坂とは何か違う。それは何なのだろうか?

 

 「という事で、俺としてはもうオーディションとかどうでも良いんだけどねー」

 

 尚もケラケラと笑って、忍はそう言い放つ。

 一見、忍は高坂と同じタイプだと思った黄前だが、彼の在り方は少し違う様に思えた。だがそれが何かは、まだ彼女にも分からなかった。

 

 『まもなく、2番線に_______』

 

 すると、電車の接近を知らせるアナウンスが鳴り響く。どうやら今いるホームと、逆の方向らしい。

 

 「あ、やっべ。そろそろ来る。俺、逆の方向なんよね。じゃあ、俺もう帰るわ。じゃあにー」

 

 そして、それだけ言い残すと忍は反対側のホームに行く為に、黄前達に手を振って階段を駆け上っていった。

 それに二人も手を振り返す。

 

 

 「……ねえ、麗奈?」

 

 そして、忍の姿が見えなくなると、黄前は高坂にそう尋ねる。

 

 「……何?」

 

 

 

 「アッキー先輩って、不思議な人だね?」

 

 

 

 独り言とも取れるその黄前の発言に、「……うん、そうだね」と、高坂は一言だけ返した。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。