響け!ユーフォニアム〜北宇治のスーパー自由人〜   作:キングコングマン

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 ここから第二章、アニメ2期に入って行きます。


真夏の自由人
記念撮影


 

 忍は、思い出していた。

 

 「なー、母ちゃんって何でそんな上手いの?」

 

 「当たり前じゃない。忍よりもずーっと長い間吹いてるんだから、まだまだ負けないわよ?」

 

 遥か昔の記憶。まだ自分が幼かった頃の記憶。河川敷でトランペットのお手本を見せられ、母親に羨望の眼差しを向けている自分を。

 

 「じゃあ、もっと練習して上手くなれば、母ちゃんみたいに上手くなれる?」

 

 「さあ、どうかねー?母さんより練習すれば上手くなるかもしれないけど」

 

 「えー?じゃあ、もっと練習しなきゃじゃん」

 

 嫌そうに忍がそう言うと、忍の母は困った様に笑う。

 

 「それじゃあ、ずっとお母さんが忍より上手いままかなー?もしかしたら凛花にも追い越されちゃうかもねー?」

 

 そして揶揄う様にそう言うと、忍は膨れっ面になる。

 

 「それは嫌。なら、もっと練習する」

 

 幼心から、拗ねる様に忍はそう言い放つ。どうやら負けず嫌いは、この時からの様だ。

 

 「うん、よろしい。でも、1番は音楽を好きになる事。上手くいかないからって、トランペットを嫌いになっちゃったりしたら、お母さん悲しんじゃうから」

 

 「そんなん、嫌いになる訳ないじゃん!!」

 

 満面の笑みを浮かべて、すぐさまそう答える忍。

 

 記憶の断片にある、微かな記憶。

 

 その時、母親がどんな表情をしていたのか、忍にはイマイチ思い出せない。

 

 全てが懐かしい。忍が感じているのは、ただそれだけだった。

 

 

 

 ______________

 

 

 

 「秋川ー!!写真ー!!」

 

 青空。茹だる様な暑さの元、忍の耳にそんな言葉が入って来る。声の方向へと顔を向けると、吉川が手を振って忍の事を呼んでいた。それを見て我に返った忍は、皆が集まっている方向へ足を進める。

 

 「はい!ポーズ取ってー!」

 

 コンサートホール前。記念写真にと、北宇治の面々がカメラマンに写真を撮られている。

 そこでカメラマンが何度か写真を撮影して、具合を確かめる。

 

 「はいー!では北宇治高校の皆さーん!集合写真を撮りまーす!!」

 

 そして、カメラマンの掛け声と共に北宇治の吹部メンバーがゾロゾロと集まり始めた。

 

 「賞状は、誰か持ってー!」

 

 「わ、私は良いよ……」

 

 何だか慌ただしい様子だ。金賞を取ったことによる記念写真。嬉しいと言う気持ちよりも、本当に関西大会に行けるのかと言う、まだ何処か実感の湧いてない部員の方が多かった。

 

 「吉川、なんかポーズ取れば?」

 

 「はぁ?、ポーズって……」

 

 隣に並んだ吉川に忍が揶揄う様にそう言うと、吉川は少し考える仕草をする。

 

 「両手を広げて、喜びを表すとか……?」

 

 「弱い。弱いよ吉川……!!」

 

 吉川がありきたりな回答をすると、神妙な顔で忍はそう返した。それに吉川は不服そうな顔になる。

 

 「……じゃあ、アンタはどんなポーズ取るのよ?」

 

 「もちろん、1番目立つポーズ。……吉川、写真で1番目立つのって、1番高い場所に居る奴なんよ」

 

 何か企む様な笑みを浮かべ、忍は吉川にそう言い放つ。

 

 「それで吉川、良い案があるんだけど……」

 

 そして、続けて忍は吉川に対し耳打ちをし始めた。

 

 

 

 「こっち見てー!何か、ポーズ取ってー!」

 

 

 カメラマンがそう声をかけると、忍と吉川はアイコンタクトをして、突然忍がしゃがみ込む。そしてすぐさま吉川が忍の肩に吉川が足をかけると、タイミング良く忍は立ち上がる。

 

 「はーい!」

 

 そして、カメラマンのその掛け声と共に、写真が撮られる。

 皆、一様に喜びを表すポーズを取っている。

 

 しかし、その中で一つ。異様に存在感を放っている二人組が存在した。

 

 撮られた写真には、忍が吉川の事を肩車し、その吉川が両手を広げてポーズを取っている、明らかにふざけているとしか言いようが無い写真が撮られていたのだ。

 確かに目立っては居るが、何というか、ベクトルが振り切っている。

 

 

 もちろん、この後松本先生に叱られたのは言うまでもない。

 

 

 ___________

 

 

 「次この様な事をしたら、承知しないからな!!」

 

 「す、すみません……」

 

 「すんませんっす」

 

 長々と松本先生の説教を受け、ようやく解放される忍と吉川。

 吉川は反省していると言った感じだが、忍はあまりその色を見せてない様だ。

 

 「……アンタのせいよ」

 

 「吉川だって、ノリノリだったじゃん」

 

 松本先生が去ると、吉川は反省してる様子を崩して、ジトッとした目線を忍に向けて恨み節を言う。

 それに対し、忍はいつも通り軽くそう返した。

 

 

 「兄ちゃーん!!」

 

 

 すると、遠くの方から聞き慣れた声が聞こえて来る。忍と吉川もその方向に顔を向けると、手を振ってこっちに向かって来ている凛花とさやかの姿が確認出来た。

 

 「凄かったねー!!北宇治の演奏!!」

 凛花が近寄ると、興奮を隠し切れない様子で、そんな感想をくれた。

 

 「ったりめーだろ。この勢いで関西大会も一撃撃破よ」

 

 「大会を撃破してどーすんのよ」

 

 適当な事を抜かす忍に対し、すぐさま吉川がツッコミを入れる。

 

 「あ、優子さん!こんにちはー!」

 

 そして、凛花は続けて吉川に対し、元気に挨拶をする。

 

 「こんにちは、凛花ちゃん。今日来てたんだねー」

 

 それに吉川も、笑顔でそう返した。

 

 「し、忍先輩!!格好良かったです!」

 

 すると、今度はさやかが熱い視線を向けて忍にそう言う。

 

 「おー、さやかちゃんも来てたんだねー。そりゃ光栄な事ですなー」

 

 それに対し、忍も満更でも無さそうな表情でそう返す。

 その光景を見て、吉川は一瞬ムスッとした様な顔になった。

 

 「何?アンタの知り合い?」

 

 しかし、すぐさまいつも通りの表情に戻り、吉川は忍に対しそう聞く。

 

 「タッキーの妹さん。あがた祭りで知り合ったんだよ」

 

 それに対し、忍もそう返すと、「……ふぅん」と、吉川はそれだけ言った。どうやら"そう言う関係"では無さそうだと、吉川はホッとした様な表情になる。

 

 「それより、タッキーの方行ってあげた方がいいんじゃない?」

 

 すると、忍が滝野が居る方を指差しながらさやかに対しそう言う。それにさやかはブンブンと勢い良く首を横に振った。

 

 「兄の事はどうでも良いんです!!私、本っ当に感動しました!!忍先輩の吹く姿、写真に収められなかったのがすっごい残念です!!」

 

 目をこれでもかと言うくらい輝かせて、さやかは忍の手を取って無茶苦茶距離を詰めてそう言う。対して忍は満更でも無さそうに。凛花は少し困った様に笑い、そして吉川は、思い切り顔を引き攣らせていた。

 

 「もう、凄いです!!この世にこんなカッコいい人が居ていいのかってくらい素敵で……あ、もちろん普段の先輩も凄くカッコいいですよ!?でも、今日の先輩は特別って言うか……」

 

 そして、次々に発射されるマシンガンの様に、さやかは忍の魅力について本人の前で嬉々として語る。なんともメンタルの強い事だ。

 何だか既視感があるなと、忍は隣にいるデカいリボンを付けた少女をチラリと見て、さやかに対しそんな感想を抱いた。

 

 「こらこら、さやかちゃん。あんまり興奮しちゃダメだよー?」

 

 「あぁん!忍せんぱーい!」

 

 すると、そんな光景を見かねて、遂に凛花はさやかの首根っこを掴み、無理矢理忍から引っ剥がす。

 そして、吉川にだけわかる様に凛花はウィンクをした。どうやら2歳も年下の後輩に気を使わせてしまった様だ。それに吉川は少し申し訳なさそうな顔になる。

 

 「もー、ほっとくとすぐ暴走するんだから……とにかく兄ちゃん、優子さん、関西大会進出、おめでとうございます」

 

 凛花は一歩引くと、改めて2人に対し祝福の言葉を述べ、一礼する。

 

 「おう、サンキュー」

 

 「ふふっ、ありがと」

 

 それに対し、吉川と忍も一言、感謝の言葉を述べる。

 

 「ほら、さやかちゃんも」

 

 「うぅ……おめでとうございますぅ……」

 

 そして、忍から引っ剥がされて拗ね気味ではあるが、さやかも渋々と言った感じでそう言った。

 

 

 「はーい!みんな集まってー!!」

 

 

 すると、小笠原から集合するよう号令が掛かる。

 

 

 「あ、じゃあ、私たちもう行きますね。兄ちゃん、ちゃんとしなきゃダメだよ!」

 

 「?、何を?」

 

 「なんでも!じゃあ、失礼します!!」

 

 最後になんだか含みのある言葉を残すと、凛花は再びさやかの首根っこを掴んでその場から離れて行った。

 

 「………ホントに、出来た妹さんね」

 

 「だろ?、俺もそう思う」

 

 2人が人混みの影に消えると、吉川はしみじみとそう言う。それに忍も自慢げにそう返した。

 

 

 「……はぁ、なんか、意外なところにライバルが現れたって感じ」

 

 「?、何が?」

 

 すると、唐突にそんな事を言い出した吉川に対し、忍は首を傾げてそう聞く。

 

 「何でも。それより、また遅れて松本先生に怒られる前に行くわよ」

 

 しかし、それを教えてもらえるはずもなく、吉川は忍の手を取って引っ張るように集合場所へと向かって行った。

 

 

 

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