天翔ける喰種   作:RUru:狩人

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テスト忙しい中でしたがなんとか
今回は店長とエトとの和解回です!!


和解

-「私が”喰種”だなんて!!!」-

 

-彼女の臓器を彼に!!-

 

 

「20区で鉄骨落下事故が発生し、死傷者が発生しました。その場に居合わせた女性1名は即死、男性1名が意識不明の重症を負い、死亡した女性の臓器の移植手術を…」

 

朝からそのような物騒なニュースが世間をざわつかせる。

のんきに考えながら葎は今日もあんていくに向かう準備をする。

 

いつもなら準備なんてしないが、今日は店長が”用事”でお休みらしい。董香から聞いたから間違いない。

 

(まぁ、知ってたんだけど)

 

そう、”用事”というのはほかでもなく、芳村さんとエトがお話をする日だ。

双方にも了承を得ている。(なお、芳村さんにはその日のシフトを変わること、エトには今度お出かけをすることを条件とされた。)

シフトに関しては芳村さんが董香に根回しをしており、エトに至っては「もし約束破るなら公の場でギャン泣きするぞ?最近話題の高槻泉を泣かせたって君の悪名を世間に知らしめるぞ?」と食い気味に脅された。

 

…とまぁこんな感じで従うしかなかったのだ。

 

「いらっしゃいませ…って葎じゃん」

「よ、董香」

あんていくに入るなりすでに開店の準備を進めていた董香がいた。

「じゃ、今日は頼むよ」

「はいはい、っはぁ~、今日はほんとなら漫画の新刊買いに行く予定だったんだがなぁ~」

「うっさい」

 

店長不在でも今日もあんていくは通常運転だった。

 

 

芳村は約束の場所となっている街はずれの廃墟にいた。

彼の心境はどうしてもざわついてしまっていた。

 

(年甲斐もなく悩んだのはいつぶりだろうか…)

 

自身が彼女に行ってきたこと。その結果。

それらすべてが、彼を悩ませていた。

 

(憂那…私は愛支とまた、親子になれるのか?)

 

決して帰ってこない質問を頭の中で投げかける。もちろん答えはでない。

そうして思考の海に浸かろうとしていると、待っていた人物の足音が聞こえた。

 

「…待っていたよ、愛支」

「…お父さん」

 

 

 

互いに何から話せばいいかわからずに時間が過ぎる。

そんな中、先に口を開いたのは

 

「お父さんはさ、お母さんのことをどれくらい知ってるの?」

「…憂那は、」

 

そこまで話して、芳村は押し黙った。

このことを愛支に話すべきかわからなかったからだ。

 

「憂那は、いつも笑っていたんだ。」

 

「私が喰種と知った時でも、」

 

「私たちの間に子供ができた時も」

 

「Vに見つかって死を悟った時も」

 

「いつも、笑っていたんだ」

 

「っ…!」

 

愛支は湧き上がる激情を抑え込んでいた。

 

「私たちは、愛支、お前が生まれてきてくれたことで、少しの間だったが幸せだったんだ」

 

「なら!!!」

 

我慢できなかったのか、エトは芳村に赫子で攻撃をしかける。

 

とっさの出来事だったが、芳村は応戦する。

 

「ならなんで!!!お母さんは殺されなきゃいけなかったの!!!」

 

「Vなんかにお父さんがいたの!!!」

 

「私は捨てられなきゃいけなかったの!!!」

 

それはエトの。「愛支」の。心からの叫びだった。

 

「私はVの存在を知ってから、この世のすべてを憎んでた!!」

 

「こんな腐った世界、ぶっ壊してやろうと思ってた!!」

 

「そのうち、お父さんも殺すつもりだった!!!」

 

「でも!!!」

 

「…葎君と出会ったんだね」

 

「っ!!」

 

「彼は気分屋だが、なにより」

 

 

「優しすぎるんだ」

 

 

芳村はつい昨日の事を思い返す。

 

『店長』

『なんだい?葎君』

『…何をそんなに生き急いでいるんですか?』

『…何のことだい?』

『とぼけないでください』

彼はその特徴的な赫子を私に突き出した。

幸いここは二階、などと考えていると葎君は凄まじい殺気を放つ。

『教えろよ。芳村。』

いつもとはかけ離れた葎君に狼狽えた私は、観念して全て話した。

『…なるほど』

そういうや否や、彼は私を蹴り飛ばした。

 

「っ!!」

 

エトは驚きを隠せないでいる。当然だ。

葎がそんなことをするとは思えないからだ。

 

『っ…葎君?『くだらねぇ!!!』』

彼は滅多に出さない怒声を上げた。

『何”その程度”のことでうじうじしてんだ!!!』

『✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕んだろ!?』

『何も行動を起こさずにそんな事が伝わると思うなよ!!』

『本当にそう思っているなら本人にそう言え!!!』

『っ!!』

 

 

「そう、彼は私に言ったんだ」

「…」

 

一通り話し終えた芳村はどこか晴れ晴れとした顔をしている。

 

「…私は、過去の過ちを否定するつもりはない」

 

彼は、妻を自らの手で殺めた。

 

「私とて一人の親だ」

 

実子すらも自分から遠ざけた。

 

「だが、今更親の顔をするのも愚かだ」

 

それでも、彼は想い続けた。

 

「私の事を恨み続けてもいい」

 

これは彼の、”芳村功善”のささやかで大きな願い

 

「だから」

 

 

 

「『愛支の幸せを見守りたい』んだ」

 

 

 

これが、彼が伝えたかった本当の願い。

 

エトは…

 

その場に泣き崩れた。

 

「わた…し…ずっと…お…と、さんを…」

 

「もういいんだ、愛支」

 

しばらく”親子”二人は、抱き合っていた。

 




亀更新ですが何卒...()

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