二十二の使徒   作:海砂

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第十話

 一度目のパクノダさんの帰還。

 私は一言も言葉を発しなかった。

 これは蜘蛛の問題。私には関われない。

 関わったとしても、何の意味も持たない。

 関わるべきは、二度目。団長さんが無事解放されたその後。

 

 そして随分と時間が経って、二度目のパクノダさんの帰還。

 

「団長は?」

 

 フィンクスさんが口火を切る。

 

「ここには来れない」 

 

 パクノダさんはそう答える。それしかできない。

 私が介入すべきはこの時。

 

「あ? ふざけろよ。きっちり説明しろ!」

 

「パクノダさん、伝える必要はありません、あなたは何も話さないでください」

 

 鎖野郎のこと、団長さんのこと、起きた出来事、ゴンとキルア。

 パクノダさんが伝える必要はない、私が全て知っている。

 

 フィンクスさんが私をにらみつけた。

 

「テメーには関係ないだろが、すっこんでろ」

 

「関係はまだ無いですが、私は蜘蛛を救いたいと考えています。これ以上、足は一本も失いたくない」

 

 このままだと、パクノダさんは初期メンバーに記憶を伝えて死ぬ。

 それは私の望むところじゃない。

 

 パクノダさんが私の方を見る。目が合った。

 

「お嬢ちゃん、ありがとう。でもあなたには()()関係のないことよ」

 

 そして、パクノダさんは旅団メンバーを見つめる。

 

「フェイタン、フィンクス、マチ、ノブナガ、シャルナーク、フランクリン……信じて、受け止めてくれる?」

 

「パクノダさん、駄目!」

 

 私の静止は届かなかった。

 

「信じろ、あれはパクだ」

 

 漫画で知っていた通りの流れ。

 一つだけ違っていたのは、彼女が銃を撃つその刹那、まさに同時。

 

「エイラちゃん、私はあなたに()()()()()

 

 六人に銃弾が撃ち込まれる。記憶が伝わる。

 パクノダさんの心臓に絡まっていた鎖がそれを貫く。

 

「パク!!」

 

 私はパクノダさんを救えなかった。

 光がパクノダさんから放たれて私の中に吸い込まれる。

 

 

女教皇(ハイプリエステス)

 

 

 こんなこと、私は望まなかった。

 パクノダさんに、死んでほしくなかった。

 

「死んでる……」

 

 シズクさんが、パクノダさんの遺体をあらためる。

 

「どういうこと?」

 

「オレが説明する」

 

 すべてを知ったフィンクスさんが、パクノダさんの遺体を見下ろしている。

 涙はないけれど、パクノダさんの遺志は確かに彼らに伝わった。

 

「すべてわかった。パクノダは……」

 

 団長への敬愛の念、仲間への想い、交換の条件、覚悟のあかし。

 一つずつ、丁寧に、フィンクスさんは残りの仲間にそれを伝えていった。

 

「最後に……エイラ、だったな。あの言葉……()()()()()()()()、パクは己が死ぬことすら享受したんだな」

 

「……多分。私はそれでもパクノダさんに生きていて欲しかった」

 

 この世界に来て初めて、私は涙を流した。

 この世界に来る前から、もう随分と涙なんて流していなかった。

 とっくに枯れたと思っていたけれど、私は今、こんなにも悲しい。

 

 私の発の記憶は六人には伝わったのだろう。そして残りのメンバーにも説明する必要がある。

 それは私からパクノダさんにできるたった唯一のこと。

 

 役に立たなくてごめんなさい、パクノダさん。

 私はこんな形で蜘蛛の仲間になんかなりたくなかった。

 あなたに生きていて欲しかった。

 

 生きることはこんなにも難しい。

 変えることはこんなにも難しい。

 

 パクノダさんを止めるだけの速さ、力、それがあれば間に合ったかもしれなかった。

 力が欲しい。そう、思わずにはいられなかった。

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