二十二の使徒   作:海砂

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第十四話

 パクノダさんの能力を試すため、また、船を手に入れるために。

 私は再び民宿に戻ることになった。

 私が彼氏を連れてきたと、民宿は上を下への大騒ぎとなったけど、それはまた別の話。

 いくら否定しても「大丈夫! 全部わかってるから!」みたいな顔された。何故。

 

 一泊して、私は昼前まで修行を続ける。団長さんは船を見繕いに行った。

 そして昨日『愚者』のカードを使った時刻を過ぎて、私はカードを具現化する。

 

 

『女教皇』

 

 

 パクノダさんのカードを引いた。

 そういえばこの女教皇の絵は雰囲気が少しパクノダさんに似ている。

 鼻が高くて、センター分けのボブヘアーで。

 だからこのカードになったのかな?

 

 まずは拳銃を具現化……可能。私の手の中にはずっしりとしたリボルバーが在る。

 一旦それを消して、民宿のおばちゃんのもとへと向かう。

 

「ねえねえおばちゃん、おばちゃんは旦那さんのこと、好き?」

 

 肩に手を置いてそれ越しにおばちゃんが作っている最中の鍋の中を覗き込みながら、そんなことを尋ねる。

 旦那さんが漁師だということはすでに知っていた。

 

「あらやだよこの子ったら、……まあ、嫌いだったらこんなに長く連れ添っちゃいないんだけどね」

 

 私の脳裏には同時に、色黒でガタイのいい若かりし頃の旦那さんが、不似合いなバラの花束を差し出して若い頃のおばちゃんにプロポーズしている場面が映し出されていた。

 

 ……記憶を読み取る能力、可能。

 

 あとは、団長さんが帰ってきたらこのプロポーズシーンの記憶を打ち込んでやろう。

 それができれば、記憶弾(メモリーボム)も可能。

 

 外に出て、人のいない方へと進む。

 拳銃を具現化して、その辺の木へと向かって撃つ。

 OK、武器としてのリボルバーの使用は可能。

 そして私は、その場に倒れ込んだ。

 

 

 目が覚めたのは、夕方、日の暮れる直前。

 数時間眠っていたようだった。リボルバーは消えていた。

 オーラを使い果たしたのか、はたまた『死者の念に食らい尽くされた』のか。

 パクノダさんは私に対して悪意を持っていなかったと思いたい。死ぬこともなかったし。

 故にこれは純粋に、私のオーラ不足が原因だと言えるだろう。

 

 ずっしりとした疲労感を抱えて民宿へ戻ると、すでに団長さんは戻ってきていた。

 

 

「なるほど、使用自体は可能、ただしそれなりのオーラが必要だというわけか。やはり念能力の修行も同時に行うべきだな。せめてオレがオーラを見ることだけでも出来れば少しはそっちの役にも立てたんだが、まあ仕方ないだろう」

 

 団長さんはすでに船を買い付けてきていた。小型のエンジンが載ったボートのようなもの。

 それに、鋼鉄製の頑丈そうなオールを数本。

 

「この町の沖合に出ると海流が複雑に渦巻いている一帯がある。お前の基礎体力はそこで磨こう。まずはお前だけが、オールのみでその一帯まで舟を漕ぐ。そこからは、半日はオールで出来得る限り東へ向かい、残りの半日は念の修行だ。お前が念の修行をしている間に、オレがずれたルートを戻しておく。念の為にエンジン付きの船を購入したが基本的には使わないと思っていてくれ」

 

 そして団長さんが追加で購入したのが、寝袋と、キャンプ用の小型ガスバーナー、それに大量のドライベジタブルとレモン汁。

 

「野菜は大事だからな」

 

 団長さんが私の持っていた大量の袋ラーメンを見てうんざりしたような表情をしていたのはそれでだったのか。意外。

 タンパク質はその場で釣ればいいと、釣り竿も数本買ってきていた。

 

「出発は明朝だ。今夜はぐっすり休んでおくといい」

 

 もしかしたらベッドで眠るのはこれが最後になるかもしれない。

 布団の重みをかみしめながら、私は眠りについた。




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