渦潮が海のど真ん中にいくつも発現するような異常海域に踏み込んでおよそ一か月。
纏および絶、周の状態で四時間ぶっ続けで漕ぐことには成功した。
堅だと大体三十分程度。
それでも原作ゴン達と比べたらそれなりの才能だと考えていいと思う。多分。
異世界転生にありがちなチート能力が私にも備わっているのかもしれない、それなりに。
そしてその日が訪れた。これまで何も見えなかった海の向こうに大きな島が見えてきた。
「あれがグリード・アイランドか」
私は『愚者』を発動して、地図アプリ(GPSを使用している為これだけは使うことができた)を使ってフェイタンさんとフィンクスさんの位置を確認する。
彼ら二人が居る、あの島が間違いなくグリード・アイランド!
「上陸後は手はず通りに。次に会った時にそれなりの修行の成果を見せなかったらその時は……わかっているな」
「はい」
ボコられるんですねわかります。
団長さんにボコられるならそれはそれで本望だ……などと不埒なことを考えつつ、私は島に向かって舟を漕ぎ続けた。
周をしていれば海流の有無にかかわらずそれなりのスピードで船を進ませることができる。
みるみる島は大きくなり、そして私たちはたどり着くことができた。
「やあ、ようこそ侵入者たち……というべきかな、招かれざる客は何年ぶりだろうか」
「初めまして、レイザーさん。私はエイラ、こちらはクロロさんです」
レイザーが虚をつかれたように私の方を見る。
まさか自分のことを知っているとは想定外だったのだろう。
「ふむ、何らかの能力で知ったか、あるいはこのゲームの関係者のさらに関係者かな……わざわざ船を使ってここへ来た目的は?」
「単なる修行です。グリード・アイランドに侵入する目的ではないので、早々に飛ばしてくださって構いません」
「なるほど、このカードのことまで知っているとは、それなりに優秀な能力者か、口の軽い関係者の知り合いなのかな、例えばジンとか」
「それはご想像にお任せします。さあ、どうぞ」
団長さんは一切口を挟もうとしない。レイザーの力量を見測っているようだ。
「じゃあ遠慮なく。『
私と団長さんは、それぞれにアイジエン大陸の各地に飛ばされた。
「さて、と……スマホは使えるかな?」
スマホを取り出して地図アプリを起動する。無事使用することができた。
もう国境は越えたくないなあ、などと考えつつ『愚者』を使用する。
オッケーオッケー、団長さんも私もカキン帝国内に飛ばされたようだ、ラッキー。
ただし場所は山脈を二つ越えて西の端(団長さん)と東の端(私)。
回り道するのも面倒だし山越えるしかないか。さすがにトンネルを掘るのは無理だ、距離がありすぎる。
カキン帝国の都市部は主に西海岸。まずは近くにある村か町かを探してお買い物するかなあ。
山越えは肉体的には問題ないだろう。念の修行も同時進行で行いながら、ぼちぼち向かいますか。
あっ、ラーメンと鍋を船に置いてきてしまった!
仕方ない、改めて買うとしよう。それまではナイフとライターで原始的な狩猟をするしかない。
あとは毒の見分け方を前世で読んだ漫画で知っているので、果実を採取。キノコは怖いから嫌だ。
ひとなめして、様子を見る。特にしびれたり辛かったりしなければひとかけら飲み込んでみる。
半日以上様子を見て異常がなければその果実は問題なし、以降は普通に食べる。
何の漫画で読んだんだったかな。仲間と団結、不可思議サバイバル漫画だった気がする。
好きなだけでなんの役にも立たないと思っていた時間つぶしの読書が、役に立つ日も来るもんだなあ。
私は妙に感慨深くそう思った。