二十二の使徒   作:海砂

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第二話

 カフェでの食事と占いを終えた後、マチさんは私について来いと言った。

 何も言わずについていく。お土産にサンドイッチまで買ってもらった、もう悔いはない。

 ……冗談だ。

 餓死するのは嫌だった。苦しいのは辛かった。

 けれど死ぬのは怖くない。

 ついていった先が天国か地獄かはわからない。

 けれど彼らは気軽に私を殺すだろう。道端の草を踏む程度の気楽さで、意識もせず。

 

 それでいい。

 私は死ぬことは怖くない。

 この世界に来る前、何度も死に損ねた。

 人間の体はなんてしぶとくも生き汚いんだろう、そう思った。

 蜘蛛なら私を瞬殺できる。それもいい、それでいい、それがいい。

 

 だんだんと人気のない場所へと向かっていく。

 街はずれからさらに岩場を越えて廃墟。

 

「ウボォーは帰った?」

 

「まだだ」

 

 私は知っている、この廃墟は蜘蛛のアジト。

 私は知っている、ウボォーギンさんはクラピカと闘っている。

 私は知っている、マチさんに返事をした男が旅団の団長さん。

 

「その餓鬼みたいなガキは何だ?」

 

 私を見て呆れたような声を出しているのが、ノブナガさん。

 

「拾った。パク、この子に聞いてみてくれる?『能力を持っているか』『蜘蛛に害意を持っているか』」

 

 占いのこと、蜘蛛のことを知っていたという説明だけを添えて、マチさんはそう告げた。

 金髪のスタイルのいいお姉さんが私に近寄ってくる……パクノダさん。

 能力とは恐らく念能力のこと、そして害意は、少なくとも私にはない。

 念能力の方も、聞かれてもきっと問題ない。

 

「お嬢ちゃんは、念能力を持っている?」

 

 さりげなく私に触れながら、パクノダさんが尋ねる。

 

「持っています、ただし驚くほど弱い能力ですが」

 

 特に修行していたわけでもない。発は最初から持っていた。

 ごくごく微量のオーラ。私の役に立つことはあるかもしれない。

 けれど、蜘蛛には特に()()()()()

 

「……じゃあ『蜘蛛に害意』は?」

 

「ありません、微塵も。むしろ私は皆さんに協力したいとすら思っています」

 

 平和なんてくそくらえ、善人なんて唾棄して捨てろ。

 それは私が前の世界で培った価値観。

 レタスと卵をこれでもかと挟み込んだフランスパンをかじりながら、私はパクノダさんの質問に嘘偽りなく答えた。

 

「嘘は言ってないわ。念能力は持っているけど見たとおり弱い。発もわかったけど……あなたたちも自分の切り札は知られたくないでしょう? お嬢ちゃんのオーラを見る限り少なくとも私達に害をなすようなレベルの能力でないことだけは確かね。お嬢ちゃんのためにも私達のためにも、知らない方がいいと思う」

 

「そうか」

 

 黙って聞いていた団長さんが顔を上げた。

 優し気な笑顔。私は騙されない。彼は騙そうとも思っていない。

 

「能力は、占いか?」

 

「半分正解、半分不正解。占いに関係はあるけど占うこと自体が能力じゃないです」

 

 この時点で団長さんは知っている、蜘蛛の中にユダはいないこと(いるけど)

 予知能力者がマフィアンコミュニティーの中にいるとまで予想はすんでいるだろう。

 私の占いは、ただの占い。ただし()()()()()()()()

 あくまで念能力についての質問だったので、私の原作知識についてはパクノダさんに見えなかったようだ。

 

「私の能力はタロットカードに模したものです。それ以上は出来れば勘弁してください」

 

「うん、それはいいよ。それよりマチの占いが気になる。もしよければ、オレのことも占ってもらえるかな?」

 

「喜んで」

 

 マチさんの時と同じ、ワンオラクル。

 団長さんの引いたカードは、逆位置の月だった。

 

「とてもいいカードですね。現と幻の狭間で苦しんでいる人が、そこから抜け出す意味を持っています。何が本当で何が嘘か、もうすぐわかるでしょう。あるいは生まれ変わりも示唆しています。団長さんの生まれ変わりなのか、それとも蜘蛛の生まれ変わりなのか……」

 

「オレは団長だとは名乗っていないけど?」

 

「マチさんとパク? さん? の様子を見ていればわかります、あなたがこのグループの頭、蜘蛛の頭。名前は知りませんが」

 

「クロロだよ。クロロ=ルシルフル」

 

 私がカードを回収している間に団長さんは立ち上がって皆に告げる。

 

「夜明けまで待つ。夜明けまでにウボォーが戻らなければ予定変更だ」

 

 

 団長さんはご丁寧に、団員を全員紹介してくれた。私も自己紹介をした。

 小学生にしか見えないだのもっと肉をつけろだの散々な言われようで、何故かチョコロボ君を三個もらった。後で食べよう。

 東洋人が飢えてガリガリになったから幼く見えるだけで、私はれっきとした高校生だった。

 今はもう、遠い昔の話。

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