二十二の使徒   作:海砂

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第二十三話

「ん~~~~~~~、お前ら、殴り合うか?」

 

 二時間の間に五人ぶっ倒す。それは、余裕。

 問題は、キルア。

 

 キルアが駆け抜けて次々と倒していく様を見たゲレゲレが真似をし始めて、次々と倒してゆく。

 私、することがない。

 とりあえず待っていた。

 そして、キルアとゲレゲレと私以外のすべての人が倒れ伏した。

 

「やっぱこーなるか。つかゲレゲレすげーじゃん、あの女よりお前がハンターになった方がいいんじゃね?」

 

「ミィ!」

 

 ドヤ顔のゲレゲレはともかく、キルアだ。

 彼をどう倒す、あるいは引き分けに持ち込む?

 

「えーと、とりあえずプレートを集めない? それぞれの。決着はその後ということで」

 

「オーケー」

 

 時間稼ぎ、完了。

 試験官は制限時間は二時間だと言った。

 キルアがプレートを集め終えて彼の下に行くまでに、一時間半かかっていた。

 ゲレゲレが倒した分は私が集めるから、時間は少し短くなる。

 それでも一時間は超えるだろう。

 残り一時間……キルアと戦ってみるか。

 

「ゲレゲレ、お座り。あんたは私とキルアの戦いを見てなさい」

 

 およそ半数ずつのプレートを集め終わり、それぞれがゲレゲレの左右に置く。

 

「じゃあ、やりますか」

 

「言っとくけど手加減ナシだかんな」

 

「リョーカイ」

 

 いよいよキルアと相対する。

 

「よっしゃ、いくぜ」

 

 おそらくこの時期、キルアはすでに『アレ』を持っている。

 キルアが素早く私に駆け寄ってきた。特に何も意図は見られない、私は何もせずただかわす。

 それを何度か繰り返す。

 

「オッケー、やっぱ他のヤツらと同じようにはいかないみたいだ」

 

 おそらくそれは速度の確認。私にはキルアを視認できる。

 かわすだけの身体能力も身につけられている。

 

「じゃ、次な」

 

 今度は指をナイフのように尖らせて虎の爪のように私に切り込んでくる。容易くかわす。

 やっていることはさっきまでと何ら変わらない。

 

「恐怖とかも特にナシ、と……ねえ、さっきから何もしないのはなんでさ?」

 

「一撃食らってから反撃しようと思って。速さでは私はキルアに敵わないからね」

 

 特に嘘をつく必要もないので、思った通りに答える。

 勝ちたいわけじゃない、でも負けるわけにいかない。

 現状のキルアと比べて自分がどの程度まで達しているのか、それを見極めるいい機会。

 

「その割にはさっきから逃げてばっかじゃん」

 

 呆れ顔でそう返される。だって明らかに手加減されてるんだもん。

 次は肢曲。彼は十人弱に分裂した。でも、知っていれば見分けることはできる。

 一人だけオーラの量がわずかに多いキルアがいる、それが本体。

 本体が他に移ることはあっても、その都度見分けることができる。

 

「手加減ナシじゃなかったの?」

 

 さっきからキルアが使っているのは暗殺技術だけだ。念能力は微塵も使用していない。

 肢曲を使った十人ほどのキルアが一斉に攻撃を仕掛けてきたけれど私は本体の攻撃を防ぐだけ。

 念を使用するまでもない。

 

「キルア、そろそろ念能力を使ってみたらどう?」

 

「そだね、普通にはやれないことがよっく分かった、よっと!」

 

 キルアは自分の背後に隠した左手から電気を纏わせたヨーヨーを振りかぶって私に向けて投げつける。

 当たれば痛いし痺れもするだろう。けれど当たらなければなんてことはない。

 私はヨーヨーをかわした、背後で壁にめり込む音がする。

 私が着地した場所に彼は先回りをして、凝によるパンチ、そしてヒットアンドアウェイ。

 堅をしていなかったら即お陀仏だっただろう。

 

「げっ、意外と固いのな。強化系?」

 

「まさか、強化系は一番苦手な科目よ」

 

 私はカードを具現化する。()()()枚の大アルカナ。

 そのうちの一枚をキルアに向かって投げる。

 紙一重でかわしたキルアのすぐそばで轟音とともに灼熱が炎をあげた。

 

「『太陽(サン)』のカードはひたすらに燃える。雲のない真夏の太陽みたいにね」

 

 私の意図したタイミングで『太陽』は爆ぜる。

 彼も堅で防いだのか、それとも私の修行不足か、ダメージはさほど大きくはなかった。

 

「なにそれヒキョーじゃねえ?」

 

「お互い様でしょ。まだカードは二十一枚残ってるよ」

 

 これは私の(ブラフ)

 確かにカードは二十一枚残っているが、『太陽』のように特殊能力をつけたカードはあと一枚だけ。

 まだ全部考えてもいないし思いつかなかったものもあるし、なによりオーラが全然足りない。

 つまり二十枚はただのカードでしかない。

 念で具現化したものだから一般人相手ならそれなりの殺傷能力はあるかもしれない。

 でも、念能力者にはまず通用しないだろう。

 

「いつの間にそんなに強くなったのさ」

 

「それこっちのセリフなんだけど。随分いい師匠に出会って修業したのね」

 

「まぁな、いいかどうかは知んねーけど散々修行はしたよ」

 

 肉体的な能力は互角より暗殺技術の分だけキルアが上。

 念能力はほぼ互角か気持ちだけ私が上、すなわちトータルだと私がちょっと負けてる……かな。

 近距離の対戦に弱いのも私に不利だ。

 一応倒れている人たちにはお互いに気を使っているので本気で戦っているとはいいがたいかもしれないけれど。

 

 船の上で培った私の体内時計が鐘を鳴らす。二時間が経過した。

 

「おーいお前ら、いつまで殴り合って……ん……だ……?」

 

 扉から入ってきた試験官が絶句する。

 

「ミィ!」

 

 何かのお供え物のようにゲレゲレの横に積まれたプレートが二つ山。

 立っているのは残り二人。

 

「……終わりかな」

 

「そだね。また機会があればやろうね、キルア。今度は邪魔のないところで」

 

「次は圧倒してオレが勝つかんな!」

 

 私たちは二人して試験官に向かう。

 

「「やる? 二次試験」」

 

 試験官が誰かに電話をかける。おそらくはネテロさんだろう。一次試験で合格者が二人になってしまった、どーすんべ、みたいな。

 結果、私達二人がそのまま今期のハンター試験合格者となった。

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