二十二の使徒   作:海砂

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第三話

 アジトに残る人間、出ていく人間。

 やがて原作通り、ゴンとキルアがここに連れてこられた。

 今日は九月の三日。ゴンとノブナガさんが腕相撲をしている。

 

「何でその気持ちを……お前らが殺した人達に分けてやれなかったんだ!」

 

 ゴンくんは 正義の味方か 反吐がでる  エイラ、心の俳句。

 殺した人間が殺された人間のことを考えるはずがない。

 だったら最初から殺さない。

 いじめる人間がいじめられた人間のことを考えるはずがない。

 だったら最初からいじめない。

 あいつらは皆理解してやっている。自分が相手の立場にならないことを。

 彼らもまた知っていた。自分たちが殺される側にならないことを。

 

 ところがウボォーギンさんが殺られた。

 失われる蜘蛛の足の一本目。

 タイミング的に、私が彼を救うのは不可能だった。

 だから私は努力しよう。これ以上足を失わないように。

 できるなら頭も失わないように。

 

 勘違いされそうだが、いじめられた私はクラピカに感情移入はしない。

 自分の仇を取ろうなんて微塵も思わないからだ。

 いじめる奴らが去った後にニヤニヤしながら寄ってきて、

 何事も無かったかのように私に話しかける奴ら。

 私はむしろ、こいつらの方が嫌いだった。

 助けるでもなく、放っておくのも気まずく、

 自分が安心するために、いじめられている私と仲良くするふりをする奴ら。

 

 善人、偽善者、普通の人間に悪党。

 上に立つ者、下にかしずく者、自分が中流だと信じている者。

 全部まとめて死ねばいい。

 そうすればほら、世界はこんなにも平等。

 

 私がこの世界を訪れたタイミングから、私は蜘蛛に味方する。

 別に相手は誰でも構わなかった。

 もう少し来るのが遅ければ蟻に味方していたかもしれない。

 力を持たない私の代わりに世界を荒らしまわってくれる人たち。

 善人も悪人も平等に殺しまわる人たち。

 私の能力は、そのために使う。()()()()()この力。

 数はまだ、少ないけど。私の使()()

 

 

 

 ノブナガさんとゴンたちを除いた皆がアジトを後にして、私は一人でここに残った。

 ついてきても来なくてもいい、団長さんは私にそう言った。

 

 前の世界の頃の私は、能動的に死にたかった。

 けれど今の私は違う。別に死んでもいいけれど、決して自分から死にたいとは思わない。

 もし生きられるのなら、生きて続きを見てみたい。

 そして私の力では、これから起こるセメタリービルでの戦いにはついていけない。

 

 チョコロボ君をひとつ、開封して口に放り込む。

 お菓子なんて食べたのは何年ぶりだろう。

 この世界に来ておよそ三月、前の世界で食べたのが最後だ。

 カフェではマチさんがパフェも食べさせてくれた。

 それこそパフェなんて、食べたのは十年ぶり以上になるかもしれない。

 

 今は何もすることがない。ただ待とう。

 ウボォーギンさんを送る派手な花火を見つめながら。

 私にも手向けられた鎮魂歌だと、せめて妄想の中でそう思いながら。

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