二十二の使徒   作:海砂

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第三十四話

 十日と半日をかけて、パドキア共和国に到着した

 

 ただし、天空闘技場があるのはパドキアではなく、その南東にあるソレイル共和国だった。

 勘違いしてたんだけど、あそこパドキアじゃないのね。

 この大陸はパドキア・ミンボ・ソレイル三つの共和国から成り立っているらしい。

 そのソレイル共和国のほぼ中心部に、天空闘技場はある。

 地上二百五十一階、高さ九百九十一メートルで、世界第四位の高さを誇るらしい。

 上の方はもう雲がかかっていて見えない。

 そして私は受付に……行かない。

 まず最初に向かったのはケータイショップだ。

 そして、衛星電話対応のスマホに買い替える。

 お次は銀行。ハンター試験を通過した時に、ハンター協会が所有している銀行口座も一緒にもらったのだが、そこに五億振り込まれていることを確認した。

 飛空船に乗っている間にツェズゲラさんから連絡があり、キャンセル料から逆算交渉して五億をいただいたのだ。

 もうちょっと吹っ掛けられたかもしれないけど今はとりあえずこの辺でいいので、この金額で手を打った。

 お次は不動産屋。

 念の為だけど、やっぱり自分自身の本拠地もここらで手に入れておこうと思ったためだ。

 ちょうど天空闘技場からも空港からもそれほど離れていない中古の物件があったので一括ニコニコ現金払い(銀行振込)

 建物はめちゃくちゃ古いため実質はほとんど土地の値段だけだ。

 手続きは全部不動産屋さんにお任せした、名義変更とか。

 3LDK平屋、築45年。縁側付き。お庭も広め。

 ついでに不動産屋さんにお願いして建築系の会社を紹介してもらって、外壁と門だけは新しく厳重に、高さもそれなりにした。

 これは自分自身のためというよりも周辺住民にゲレゲレのことで怯えられたくないからだ。

 せめて庭くらい自由に走り回ってほしい。

 ゲレゲレ自身はキャリーバッグでも飛空船の個室でも満足しているようだったので、これは私のワガママに近い。

 ゲレゲレには、自然が似合う。

 庭には桜や椿やグミ、ベリーの木なんかが植えられている。

 ゲレゲレは果実には興味を示さないので勝手に食べることはないので大丈夫だと思う。

 近付くだけで毒だってことはさすがにないだろう、多分。

 芝はボサボサだけれども、逆にそれがいい。

 一目で気に入って、この物件に決めた。

 価格は諸々費用合わせて五千万ジェニーちょっと。

 都心部にほど近くはあるもののこの辺りに住む人自体は少ないらしく(ホテルはめちゃくちゃ多い)、住宅として売られていたこの家はあまり高値で売られていなかったことも幸いした。

 前の持ち主が『家を取り壊さないこと(リフォーム可)』『庭に増築しない(潰さない)こと』を条件にしていたのも一因だ。

 なんでも、大事に飼っていたペットが庭に埋められているらしい。

 お気持ち、わかります。私ならゲレゲレ埋めたらその一帯は保護区にする。

 やだ、想像したくない。ゲレゲレと死別するなんて考えたくもない。

 まだ子猫だから先は長いと信じよう。

 

「ミィ?」

 

 そして引き渡しを終えて、私は縁側にゲレゲレとともに座っている。

 ああ、いいなあ。木々が日差しを遮ってキラキラと適度な光をここまで届けてくれる。

 ……残金だけで、ここで隠遁生活を送るのもいいかもしれないなんて、ちょっと思ってしまった。

 ゲレゲレの食費的に、無理だろうなあ。私が稼がなきゃなあ。

 よし、当初の目的通り天空闘技場に行きますか。

 そこでまた少しお金を貯められる。

 

 そして受付で、やっぱりゲレゲレは選手登録できないことがわかった。残念。

 私の勘だってたまには外れる。

 牙や爪が武器扱いになってしまうらしい。そもそも魔獣を含め獣の登録は認めてないらしい。

 私だけ登録をして、最初の試合の日付だけは自由に決められるらしいので、少しあの家でゆっくりしてから戦おうと思って一週間先にした。

 

 毎日が楽しい。

 毎日袋ラーメン食べても誰にも何も言われない。

 お野菜たっぷり入れる贅沢もした。キャベツとモヤシが至高。アクセントにコーンも悪くない。

 焼豚も自分で作ってみたりした。楽しい。

 カレーも作った。

 自分で作ったカレーを食べたことはこれまでなかったけれどとても美味しかった。

 母が好きだったの、今ならちょっと理解できる。これはいいものだ。

 

 なお、感謝の正拳突きは続けている。一日百回程度だけど。

 そしてタロットを扱う時間を増やした。

 特質系ではない方の具現化タロットの名前も決めた。

 

乱れ飛ぶ二十二の使徒(シューティング メジャー アルカナ)

 

 結局特殊能力はまだ二枚しか決めてないけれど。『太陽(サン)』と『世界(ワールド)』だけ。

 他のはまだ思いつかない。

 カードの意味から連想ゲームしたりして、一生懸命考えている最中だ。

 いずれにせよ二百階に到達するまでは使うつもりもないし、おいおい考えていくとしよう。

 二百階を越えたら、念能力者とのバトル。

 もちろん経験を積むことも一つの目的ではあるんだけど、もう一つ目的がある。

 

お前の物は俺の物(ジャイアニック エゴイスト)』による念能力の奪取だ。

 

 条件の一つは敗北を認めさせること。これは天空闘技場の舞台がちょうどいい。

 他にもたくさん条件はある。

 例えば私の持っている(具現化したのじゃない、本物の)タロットカードを相手に触れさせること。

 相手を占ったことがあるということ。

 この辺りは……二百階受付カウンター周辺で占い師稼業させてもらえないかなあ。

 ライセンスちらつかせつつショバ代支払うことで何とかならないだろうか。

 私の占いに意味があるということを、天空闘技場全体に知らしめる必要がある。

 向こうから占ってほしいと言ってくるような状況を作り出す。

 試合初日から、試合の時以外は片隅で占い師稼業させてもらえるよう頼んでみよう。

 最初は無料か格安で。

 

 原作知識がなくても、私は自分の占いにそれなりの自信を持っている(ただし自分を占った時を除く)

 そして戦いに身を置く者たちは、意外とゲン担ぎを重視する人が多い。

 私の占いが、その人たちの心のスキマお埋めします。

 そうやって、占い師兼選手として、地位を確立していこう。

 

 そんな感じで、私は試合初日までの間を過ごしていた。人生で今が一番楽しい。

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