「オレはアンタを尊敬している! だから、最初から全力を出す!」
ギドは開始即竜巻独楽を繰り出してきた。
しかも、原作とは違って細かく移動をしている。
これはおそらく、ゴンに石板ひっくり返しで攻略されたためだろう。
一か所にとどまっていては危険と判断したギドによる回避行動。
……油断は、出来ない。
「
まず最初に
しかしやはり、ギドにこの戦い方は合わない。一つ一つの独楽の威力が段違いに弱い。
いずれも私は纏のみではじき返す。ダメージはゼロだ。
「やはり無理か、まあ予想はしてたがな……ならばこれだ!」
ギド自身の竜巻がどんどん大きくなっていって、周辺の空気を巻き込んでいく。
「アンタのアドバイスをもとに改良した新技! 『
凝で目をこらし、しっかりと確認をする。
大きな台風の中で、
遠めに距離を取っている私の周辺にまで風は届いている。
中央部分が圧縮されて周辺の空気を吸い込んでいるようだ。
これは強い。直接攻撃を仕掛けても、私の強化能力じゃ弾き飛ばされるのがオチだろう。
とはいえこのまま近付いてこられたらそれだけでもジ・エンドだ。
こちらから攻撃を仕掛けるしかない。
私は二十二枚のカードを具現化する。
その中の、普通のカード一枚にオーラを纏わせギドに向かって投げてみた。
カードは一旦台風の中に吸い込まれ、弾き飛ばされて場外へと落ちる。
『
ならば使うべきはもう一枚。
『
左手に持っていたタロットの束から右手で引いた『
消えた瞬間からおよそ一秒間、世界は動きを止める。
別の漫画から着想を得た能力だが、特質系能力にあたるため私にとっては費用対効果が非常に高い。
戦闘中の一秒は、黄金よりも
もちろんギドも止まっている。空気の流れも止まるから強い風も今の私には意味がない。
その一秒を使って、私はギド本体へ足払いをかけた。
世界が止まっている間、私は任意に動くことができる。
ギドの倒れ込むであろう位置の床に『
そして一秒が経過した。
台風は動きを止め、ひっくり返ったギドが罠の上に転がる。同時に『
炎上したギドはその場で転がって炎を消し止めようとする。
私はそんな彼に馬乗りになってマウントを取った。
ひっくり返されないように股間部から足にかけておよそ攻防力三十、右拳に攻防力七十と振り分ける。
「さあ、どうする?」
拳を大きく振り上げて、それ以外の部位はただの纏。これは彼に対する敬意。
彼自身がまだ独楽を持っているのであれば、それを使って私に隠れて狙い撃ちできなくもない。
けれど今の彼は武人。卑怯な手は使わない、拳を交えてそれを実感した。
「まいった、オレの負けだ」
最後の条件をクリアする。光がギドの体から放たれて私の中に吸い込まれた。三枚目のカード。
『
彼自身が気付いたかどうかわからないが、私は彼の能力を手に入れた。
「そこまで! 勝者、エイラ選手!」
大歓声が耳に届く。
その中でもひときわ大きな声で、常連のおっちゃんが壁から身を乗り出して落ちんばかりに興奮しながら歓声を私に向けてくれている。
うれしい。人に信じてもらえるのは、こんなにも嬉しい。
「……『
私はギドに手を伸ばして、彼を立ち上がらせる。
「それはアンタお得意の占いかい? まあ、実際に使ってみて確かに手応えはあったと思っている。アンタみたいなトンデモ闘士がいきなり現れない限りは、オレももう少しここにしがみついてみることにするさ」
そしてそのまま、固い握手を交わす。
いい試合でした、ありがとうございました、押忍。
私は再び九十日後に試合予定を組む。次は九月の十六日だ。
登録を終えると、急いで店に戻った。
いつものように、占い師稼業を再開する。
未だ興奮冷めやらぬ常連のおっちゃんも来てくれた。
招待券、想像以上に喜んでもらえたようで嬉しい。
さすがに毎試合招待するのは無理だけど、最初の試合はおっちゃんにぜひ観てほしかった。
……そういえば、まだ名前知らないな? まあ、いいか。
翌々日の閉店間際、ギドが店を訪れた。
若干興奮気味に「実戦にはまだほど遠いが、アンタとの対戦の後、独楽のようなものを発射する能力を身に着けることができた」と話してくれた。
メモリ、まだ残ってたのか?
それとももしかして……私は考察する。
私の能力は他人の念能力(発)を奪う能力。
奪われた人間はどうなる? ただ発を失うだけなのか。その場合メモリはどうなる?
私の結論は『能力を奪われた分だけメモリに空きができる』
もちろん新たに発を習得するには努力や時間や思い入れや覚悟が必要になるだろうが、空いたメモリで新たな発を習得できるのではないだろうか。
それゆえギドは私と戦った直後に新たな能力を発現することができた。
おそらくはそれ以前、私が占った直後から努力と修行に時間を費やしていたのだろう。
カストロが死んでいることが悔やまれる。
彼がもし生きていたならば、私の能力で
もちろん私も能力を手に入れてウハウハだっただろう。
……まあ、無理か。ヒソカと戦って無事に済むわけがないもんな。
週休二日。私は『運命の輪』を使ってみることにした。
ギドのどの能力を手に入れたのかわからないからだ。確認。
名前的に
私は無事に
しかも、前もって独楽を準備しておく必要はないらしい。
自分で独楽を具現化して、それを操作して、相手に放つ。
具現化系と操作系の複合技。その割には思ったよりオーラを使わなくて済んだ。
放出系にあたる『女教皇』のマグナムや、放出系や変化系に近い
そして岩程度なら明確に方向性をもって意図的に破壊できることも確認した。
今のところ、技術としても威力としても申し分ない。
あとはもっとうまく使えるよう、己のオーラに磨きをかけるだけだ。
そして休みの日は、午前中の修行を除いてゲレゲレとのイチャイチャタイム。
曇り空の多いこの季節には稀な太陽の下で、芝生に寝転んで、彼の両足を掴んで仰向けにして胸毛に顔をうずめてモフモフを堪能する。
ゲレゲレはすでに私の体と同じサイズにまで成長している。
筋肉量は私以上だろう。ネコ科の動物はしなやかな筋肉を持っている。うらやましい。
ゲレゲレの胸毛からお日様の匂いがする。草の匂いと土の匂いと太陽の匂い。
彼の全身の毛は割と短いのだが、何故か胸だけはモフッと長毛種のような長い毛をしている。
なので必然的に、私はしょっちゅう彼の胸に顔をうずめる。至福。
やりすぎると硬のネコパンチがとんでくるのはご愛嬌。
とはいえ随分と大人になったゲレゲレは、以前ほど遊びを求めなくなった。
むやみやたらとじゃれついて来ることもなくなった。ちょっと寂しい。
時々庭に来る鳥やトカゲを狩ったりもしているみたいだが、基本的には彼ものんびりとここでの生活を享受しているらしい。
桜の木に爪を立てたときには厳重に叱っておいた。絶で遠い目をしていた。
腐っちゃうからね、桜の木は傷付けちゃダメなのだよ、ゲレゲレ。
爪とぎ用には丸太を数本庭に放り投げている。以降はそれで爪を研いでいるようだ。
トイレは自分で用を足す。
穴を掘って、出して、しっかりと埋める。器用なものだ。
きちんと深く掘ってきちんと埋めているので、臭いの問題も出ない。
濡れるのは嫌いなくせに、トイレの時は雨でも気にせずに外に出て用を足す。
……あ、濡れるのが嫌いなんじゃなくて、シャンプーが嫌いなのか。
それとも、そのあとのドライヤーが嫌なのかもしれない。
「ぐるう?」
声も随分と低くなった。猛獣っぽい。そりゃそうだ、そもそも彼は猛獣だ。
でも私の中ではゲレゲレはやっぱり猫感覚。
ピィピィ言っていたころが懐かしい。
もっと写真を残しておけばよかった。カキンの秘境にそんなもの無かったけど。
もういちど胸毛をもしゃもしゃして吸い込む。極楽。
この表現でクロスオーバータグがいるのかどうか悩み中です
正確には別漫画の能力と同じではないからなあ……