二十二の使徒   作:海砂

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第四十三話

 候補者が残り四人になった時、パリストンは最初の時間稼ぎをした。

 それは、パリストン→ミザイストム→チードル→レオリオという円環を生み出したこと。

 パリストン直下ともいえる協専ハンターでさえ混乱するだろう。

 誰に入れればいいのかわからなくなる。

 パリストン派はおそらく二つに割れる。パリストンとミザイストムに。

 結果、ミザイストム派もまた二つに割れる。ミザイストムとチードルに。

 それによってチードル派も二つに割れる。チードルとレオリオに。

 その結果どうなるか。レオリオの得票率はおそらく五十パーセントを下回る。

 上位二人、すなわちレオリオとパリストンの一騎打ちとなった。

 

 まず一つ目の時間稼ぎは成功に終わった。

 次は、二つ目の時間稼ぎ。

 

「ではこれより、緊急動議を発令いたします!!」

 

 会場がざわめいた。

 場内に居る人間はみな選挙のことを考えていた。

 そこに突然全く別の提案がなされたからだ。

 

「はい? えーと、何言ってんの?」

 

「緊急動議です。これから皆さんには、ハンター十ヶ条の第八条・九条に則って信任投票をしていただきます!!」

 

 未だ会場はどよめいている。この場に居るほとんどの人が現状を把握できていないのだろう、私を含め。

 私はこの状況になることを知っていた。

 けれど彼が何故ハンター十ヶ条と試験制度に拘ったのか、そこがわからない。

 私には頭が足りないので、これ以上を理解することができなかった。

 ジンが全て説明した後でも、だ。

 せいぜい、十ヶ条の変更がなされなかった場合、繭から孵化した五千匹を次のハンター試験に全投入するつもりなのかなー? とか、その程度。

 おそらく原作ではその前にビヨンドが現れてしまったのだろう。

 そして物語の流れが変わる、暗黒大陸編に向かって。

 ん-、暗黒大陸には行きたくないなあ、生き残れる可能性を微塵も感じない。

 

 なんかパリストンがめっちゃ演説して、割り込んだチードルがレオリオへの全面的協力を約束し、そしてその時が訪れた。

 

「レオリオ!!」

 

 扉を開けて入ってきたのはモラウ。涙を流しながら親指を立てている。

 そしてその後に入ってきたのは……ゴン。

 

「うオオおをちくしょオオオオ、心配したぞ!!!」

 

「レオリオ!!!」

 

 レオリオが駆け寄ってゴンと抱き合った。

 パリストンが拍手をし、その音をマイクが拾い、それから少し遅れて会場中から拍手が沸き起こる。

 

「今から立候補しろー!!」

 

「ステージで何か話せー!!」

 

 ゴンへ向けられた温かい拍手と歓声。

 そんなゴンの目に、一人の人物が止まった。

 

「……ジン……!?」

 

 ゴンがわちゃわちゃしている。ジンがあたふたしている。ウケる。

 原作ではとてもいい話なのだが、残念ここは広いハンター協会本部の中央ホール。

 二人の会話はほとんど聞こえず周囲の「血も涙もねーのかお前には!!」だの「ジン最低!! ジン最低!! ジン最低!!」だのしか聞こえてこない。草生える。

 まわりからのブーイングにジンがキレて、直後にチードルがブチギレた。

 

「み・な・さ・ん!!!! 静粛に!!!!!」

 

 耳がキーンてする。周囲の人たちも一様に耳を押さえていた。

 

「まだ!! 選挙は終わっていません!!!」

 

 チードルの、最後のあがき。それすらもパリストンは奪い去る。

 

「ゴンくん!! 直感でいいんです!! 心に偽る事だけせず……!! どちらか選んで下さい!!」

 

 そしてゴンは、パリストンを選んだ。

 レオリオには学業があるというシンプルかつ明確な理由で。

 

「ジン!! 行ってくるね!!!」

 

「……おう!」

 

 そしてまた会場がわちゃわちゃになる。

 

「行ってらっしゃいだろーが!! 常識ねーのか!! ぐおっ」

 

「わージンが切れた!! ぶほっ」

 

「誰かこの育児放棄のクズ止めぼ!! げぼっ」

 

「ムリだって!! 十二支ん!! 笑ってねーで何とかしろ!!」

 

 私は少し離れたところからその様子を観戦してゲラゲラ笑っている。

 十二支んも同様に笑っていた、パリストン含め。

 

 そうしてしばらく時間が経って、ようやく選挙が終わった。

 

 第九回、十三代会長総選挙。

 総ハンター数六百三十六名、有効得票数六百十六名。

 投票率96.8パーセント。

 

 一位、パリストン。四百五十九票。

 二位、レオリオ。百五十七票。

 

 チードルとミザイストムの票の大半が、レオリオに流れたのだろう。

 それ以外のハンターは、ゴンとレオリオの意思を尊重してパリストンに入れた。

 十三代会長は、パリストンに決定した。

 

「皆さん、十三代会長のパリストンです!! 早速ですが重大発表です!!」

 

 新しい会長の檀上演説。ハンター皆が見守る中で。

 

「私パリストンは副会長にチードルさんを指名し!! この場で会長を辞する事といたします!!」

 

 デスヨネー、知ってた。

 

 以上、選挙編、終了!

 細かいことはシラネ、私は十二支んでも協専ハンターでもないし。

 政治的なことはさっぱりわからん。

 私はただの占い師さん。

 思わぬ副収入もあったことだし、あとは早く帰ってゲレゲレをモフりたい。

 

 

「ゲレゲレー、今帰ったよー!」

 

「ぐるぁぃあおうおうおうおうおぅおう!!!!!!」

 

 ゲレゲレの堅での突進。

 サイズもあってさすがにそろそろ受け止めきれなくなってきた重い重い強化系の愛である。

 こちとら特質系なので、もう少し手加減してほしい。

 ペットシッターさんに帰還と契約終了の連絡を入れて、数日の間私はゲレゲレをモフり倒した。

 占いもその間はお休み! 修行は……まあ、そこそこに。

 ゲレゲレも寂しかったのかひたすらに甘えてきた。ベタベタに甘やかした。

 

 今回の件を経て以降、私は闘技場での週五の占いの時間(現在一回八千ジェニー)の他に空いた時間を使って、一回一億ジェニーでのみ順番待ち無しで占いをすることを公言した。

 条件はこの街に来てもらうか、あるいはオンラインでの占い。

 対面でないと精度は少し落ちることを付け加えて。

 一億はさすがに金銭的にデカすぎるのか、あるいは並びさえすれば八千ジェニーで占ってもらえるからか、意外と依頼は少なかった。月にせいぜい一件程度。

 それでも、もうこれでゲレゲレの食費に困ることはない、多分。

 

 現在八月中旬。次の試合まで、あと一か月。

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