二十二の使徒   作:海砂

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第四十五話

「エイラ……お前、いったいどこにいた?」

 

 再会第一声が、それだった。

 

「選挙です、ハンターの」

 

「何度も店を訪れたがいつ行っても留守だったんでな」

 

「それは申し訳ないことをしました」

 

 私たちは、現在天空闘技場の二百二階バトルステージ上にいる。

 

「試合が終わったら、どうしてもお伝えしたいことがあります。できれば、二人きりになれる場所で」

 

「わかった、オレの部屋で問題ないだろう、では、始めるぞ」

 

 団長さんが構える。私も構えを取った。

 

「ポイントアンドKO制!! 時間無制限一本勝負!! 始め!!」

 

 私たちは互いに纏状態で相手の動きを見る。

 

「エイラ、まずは体術だ。能力は纏のみ許可する」

 

「イエス、サー」

 

 敵うはずもない。相手は幻影旅団の団長。

 とはいえ何もせずに負けるわけにもいかない。そんなことしたら呆れた団長さんが私を屠る。

 十メートルほど離れた距離から私は一足飛びに団長さんの懐へと飛び込み、テンプルを目がけて裏拳を叩き込む。

 わずかな残像を残して団長さんは消えた。違う、移動した、私の背後!

 団長さんのかかと落としを私はかろうじて回避する。

 

「スピードは、悪くない。ただ狙う箇所が間違っているな。あの場合はこめかみではなく顎あるいは喉を狙うべきだった。あるいは内臓破壊を狙っても構わない」

 

 今度は団長さんが飛び込んできた。目では追えている。

 左右にステップを踏んで最後に私に到達した時、私から見て右側!

 私はガードを下ろしてあばらを守る。

 寸前で団長さんはターゲットを変えた。

 右足による私の後方からの足払い。

 ジャンプして避ける。結果、私は無防備になる。

 団長さんはそのまま右足で私を蹴り上げた。

 股間に激突し上空に吹き飛ばされる。男性ならその場で悶絶死。女だって痛いものは痛い。

 骨盤にひびが入らなかっただけでももうけものだ。

 

「クリーンヒット! クロロ!」

 

 若干内股気味になりながら、私は着地する。団長さんはそれ以上攻撃しては来なかった。

 

「まあまあだ。修行はさぼっていないようだな。ではこれからが本番だ、念能力の使用を許可しよう。無論、オレも使う」

 

 互いの纏が練となる。膨大なオーラの差がそこにはあった。

 あーもーやだよー今すぐ降参して逃げたいよー。

 

 私は二十二枚のカードを具現化する。

 

「……能力を揃えたのか?」

 

「さあ? どうでしょうね!」

 

 私の能力を推察される前に決着を! ……つくわけないってこんなん無理ゲーだべ。

 私の右手は『世界』を取り出す。唯一可能性のあるカード。

 使用した時、世界は動きを止める。

 ただし範囲は半径五十メートル以内に限られる。

 能力としてはディオの世界(ザ・ワールド)よりもミザイストムの密室裁判(クロスゲーム)の警告カードに近い。

 団長さんは正確にその範囲を見切り、場外である範囲外に逃れていた。

 カードを発動している時間に範囲内に居なければ効果はない、アウェイアンドヒット。

 一秒経過後に団長さんが迫ってくる。

 団長さんがアンテナを持っているのが見えた。

 シャルナークさんの能力だろう。すでにこの時受け渡しは終わっていたのか。

 ならば決して、私はここで死ぬわけにはいかない。

 全力でそのアンテナをかわし、次いで私は『死神』を引く。大鎌の具現化。

 距離を取って団長さんと対峙する。

 鎌の最も刃から離れた位置を持って、最大のリーチをとった。

 

「なるほど、カードの具現化自体は傍目から見れば舞い踊る二十二の使徒(ダンシング メジャー アルカナ)と変わらないが、これは全く別の能力だな。今までの期間でこれほどまでに能力を集めることは不可能だろう。それに、すでにいくつもの能力を使っている。制約では舞い踊る二十二の使徒(ダンシング メジャー アルカナ)は二十四時間につき一つだったはずだ」

 

 大鎌を持っている間、私は乱れ飛ぶ二十二の使徒(シューティング メジャー アルカナ)を使えない。

 何故なら両手がふさがっているからだ。

 団長さんの栞のテーマ(ダブルフェイス)と違い、私は左手にカードを全て具現化し右手で引くことをしないといけないので、完全に同時に能力を使うことはできない。

 ただしそれは、乱れ飛ぶ二十二の使徒(シューティング メジャー アルカナ)に限った話!

 私の前方一メートルの位置に独楽を具現化し、一斉に団長さんに向けて飛ばす。

 

「『運命の輪(ホイール オブ フォーチュン)』! かーらーの、全力大鎌どーん!」

 

 具現化した二十枚のタロットを消し、両腕を使って遠心力をつけて独楽ごと団長さんを薙ぎ払う。

 上空に逃れた団長さんを追って、私は手首を返した。刃が空へと向かう。

 団長さんの体を鎌の刃先がとらえたと思った刹那、逆に大鎌の刃が真っ二つに折れていた。

 はっきりとは見えなかった。だがおそらく、団長さんは鎌を足で蹴り割った。

 具現化系の破壊。それは心の破壊そのものを意味する。やはり私では団長さんに敵わない。

 おそらくだが、団長さんは能力を除き両手を使わないという縛りプレイで私と対戦してくれていた。

 圧倒的な差。

 

「まいりました。私の負けです」

 

 少し早いかもしれないが、私の手札は出し切った。

 これ以上戦うのは無意味だろう。

 

「新たな能力の開発、修行の成果。見せてもらったよ、エイラ」

 

「ありがとうございました」

 

 私はペコリと頭を下げた。

 内心号泣だ。殺されなくてよかったぁああああ!

 新たなフロアマスター挑戦権を獲得した闘士の誕生に、会場は大いに沸いていた。

 

 

 そして試合場から離れ、団長さんに与えられた一室。

 私は団長さんと二人でここに居た。

 互いに円でフロア周辺を警戒しながら、私たちは話をすることにした。

 

「それで、お前が伝えたいことというのは何だ?」

 

「……占いの、結果です。今すぐシャルナークさんとコルトピさんに能力を返し、旅団を全員集合させてください。場所はここでなくとも構いません」

 

 団長さんは、眉を顰める。

 

「何故お前がそれを知っている。それも占いに出たとでもいうのか?」

 

「はい。……このままだとシャルナークさんとコルトピさん、二人が死にます。手を下すのは、これから団長さんと戦って死ぬはずの奇術師の黄泉返り」

 

 顰めた眉間の皴がさらに深くなった。

 

「まず今すぐ能力を返す、それは出来ない。オレはヤツに勝つために必要な手札を揃えた。旅団を集結させることは可能だろう、今すぐシャルに連絡を取る」

 

「それだけでも、生き残る可能性は格段に上がると思います。ヒソカは基本的にソロプレイヤー。集団で固まっている旅団にはうかつに手を出すとも思えませんから、お二人に能力を返すまではそのまま一緒にいて守ってもらえばいいかと」

 

「お前の占いは大したものだな、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 それは、誉め言葉ではない。彼は私を責めている。隠し事があるのだろうと。

 けれど私も話すわけにはいかない。

 彼らが創作物の登場人物だなどと、誰が言えるだろうか。

 何より私自身が、そう思いたくない。

 これまでに目の当たりにしてきたたくさんの人たち。

 彼らが架空の人物だなんて、絶対に思いたくない。

 

「……これ以上は、私からは言えません。けれど私は知っています。このままだと、二人が死んでしまう。私はそれを避けたい。旅団員が死ぬのは、もう嫌だ」

 

 私の本心。それは団長さんにも伝わったようだ。

 

「オレとヒソカのタイマンがメンバーを巻き込むこと自体は避けたいからな。了解した」

 

 団長さんはケータイを取り出す。シャルナークさんたちに連絡を取るのだろう。

 

「オレだ。旅団員全員をただちに天空闘技場に集結させろ。これは命令だ。理由? エイラの占い、それが根拠だ。今すぐ全員に伝えろ」

 

 電話を切ると、団長さんは私に向き直った。

 

「お前はメンバーと合流しろ。そしてその口から、ヤツらにその理由を説明するんだ」

 

「わかりました。ヒソカと団長さんが戦うまでの間は、おそらく彼らに危険は及びません。その間に私は全旅団員に情報を共有します」

 

「それでいい……お前の、その予知能力。念能力であれば欲しいところだが、違うんだろうな」

 

「はい。あくまでもただの占いですから」

 

 団長さんのノートはデスノート。できるならば載りたくない。

 そして原作知識、これは念能力ではない。

 

 私たちはそれで会話を終了し、別れた。

 彼はそのまま自室に残り、私は自分の店へと向かう。

 

 まだ時間は残されている。パクノダさんの時とは違う。

 少しは私も力を手に入れた、誤差の範囲かもしれないけれど。

 それでも私は旅団を守りたい。それだけは、嘘偽りのない私の本音。




能力名をちょっと変えました。
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