占い稼業をしながら日々を過ごし、十日ほどで旅団が天空闘技場に全員集合した。
「一体何だってんだよ……こちとら仕事中だったんだぜ」
私はノブナガさんに頭を下げる。
「ごめんなさい、でもどうしても必要なことだったんです」
普段は使わない、天空闘技場の私にあてがわれた部屋。
私たちは今そこに居る。
私は知っていることを話した。
団長さんとヒソカが間もなく
そのための手札として、シャルナークさんとコルトピさんの能力を一時的に奪っていること。
その
ヒソカがその時点から時と手段を選ばない殺人鬼となって幻影旅団を襲い始めること。
それを防ぐために、団長さんに意見を具申したこと。
「そもそも、タロット占いってそこまで詳細にわかるもんなの?」
皆が皆、私を不信そうな目で見ている、当然だ。
「占い方にも、いろいろな方法がありますから。基本的に私は面倒なので皆さんもご存じのワンオラクルというカードを一枚だけ引くやり方でしか占いません。けれどその結果、シャルナークさんとコルトピさんの死が出たので、占い方を変えて詳細に占ったんです。これは、その結果です」
私に話せるのはここまで、あとは信じてもらえるかどうかは運しだいだ。
「オレは、信じるぜ。団長がエイラの占いを信じている。それだけで、信じるに値する」
「オレもそうだな。団長の命令は絶対だ」
「あたしも信じるね、蘇りってのがにわかには信じられないけど、ヒソカなら自分が負ければそのくらいはやりかねない」
フランクリンさんとノブナガさん、マチさんは信じてくれた。他のメンバーさんはどうだろうか。
「団長は、普段ならみんなを集めることはしなかったと思う。でも今はシャルナークとコルトピがノーガードだから……だから二人を守るために、蜘蛛の足を失わないためにみんなを集めた。私は、そこを信じる」
シズクさんも、信じてくれた。
「ワタシ反対ね。団長に能力を貸したこと含めてそれでヒソカに殺されたとしても自業自得よ」
「同感だな、そしてオレたち一人一人が襲われたとして、それで死んだとしてもそれも自業自得だ」
フェイタンさんとフィンクスさんは反対……なんとなく、予想はしていたけれど。
「オレはその状況を想定していなかった。ヒソカに今もし狙われたら、残念だけど勝てる気がしない。だから、オレはエイラの意見には全面的に賛成するしかない」
「同じく」
シャルナークさんとコルトピさんは賛成。そうするしかないだろう、彼らの立場なら。
「ボクはどちらでも構わない。ただ、集まるように言われたからここに来ただけ」
「オレも団長の命令だからここに来ただけだ。その内容は団長の口からじかに聞くまではどうでもいい」
カルトちゃんとボノレノフさんは中立。
多数決なら私の勝ちだけど……この場合は、どうなるんだろう。
「確かに団長に聞いてみる一番ね。団長直々の命令なら多少不服でも従うよ」
「おい、エイラ。団長今どこにいる?」
団長さんは、出来るだけ短期間にフロアマスターになることを求めていた。
「団長さんは今から試合です、フロアマスターとの。チケットは私が人数分融通しますので、皆で試合を観戦してから、その後で団長さんを訪ねればいいと思います」
この言葉には、異論は出なかった。
チケットの融通。二百階闘士にはそれぞれ数枚程度の各試合へのチケットの割り当てがある。
もちろん有料だが、並ぶことも抽選を受けることもなく定価で試合を観戦することができるのだ。
枚数は試合によって違う。フロアマスターの試合の場合は三枚。
マジリクさんとギドが自分の割り当て分三枚をそれぞれ譲ってくれた。
シャルナークさんとコルトピさんには、巻き込まれる恐れがあるため部屋で待機しておいた方がいいと告げ、了承を得た。
そして、団長さんのフロアマスター挑戦。
試合は、一秒で終わった。
対戦相手の首がねじ切られていた。まさに、瞬殺。
うわー、こんな人相手に私よく死ななくてすんだよな。
団長さん、どれだけ手加減してくれてたんだろう。
「当然ね、ささと団長の所に案内するよ」
そりゃそうですよね。
私はシャルナークさんとコルトピさんにケータイで連絡を入れ二百階ロビーで待ち合わせ、団長さんの部屋へと向かった。
団長さんにもこれから伺う旨メールを入れてある。
そして全員で団長さんの部屋を訪れた。団長さんはすでに部屋に戻ってきていた。
「何だ、ぞろぞろと」
「私の知っていることはすべて皆さんにお知らせしました。その結果、フェイタンさんとフィンクスさんが『能力の譲渡含めてヒソカにやられることは自業自得だ』と」
「……確かに、これはオレがヒソカとタイマンするにあたって能力を譲り受けた結果であって、あくまでオレのワガママだ。絶対とは言わない、命令も取り消す。だが可能であればオレが能力を二人に返すまでの間、二人を守ってほしい。そしてこれ以降は命令だ、決して単独行動はするな。この命令は今から以降、命令を取り消すまで有効だ」
この言葉により、ボノレノフさんとカルトちゃんがこちら側に付いた。八対二。
「オッケ、わかったよ。単独行動さえしなきゃいーんだな。それなら文句ねーよ」
「仕方ないね」
これで、十人全員の許可を得た。
少なくとも、旅団メンバーの単独行動は防ぐことができた、一安心だ。
「団長さんとヒソカのタイマンが終わるまでは大丈夫だと思いますが……念の為、皆さんには天空闘技場に残ってもらいますか。二人のタイマン、見たい方もいるでしょう?」
「あ、私見たい!」
シズクさんがいの一番に手を挙げる。
あの会場にいるとモロに巻き込まれそうだけど、シズクさんなら大丈夫だろう。
私は見ない。怖い。あとで録画だけ見る。
「オレはまだやり残した仕事があるからなぁ、そいつをチャッと片付けてくるからよ、誰かついてきてくんねーか?」
「じゃあ、オレが行こう」
ノブナガさんには、フランクリンさんが付いて行くことになった。
二人には、団長さんの次の試合までには戻ってくるように伝えておく。
団長さんもその点を踏まえ、試合の日程を予定より少し遅らせることで合意した。
ヒソカもタイマンできるなら文句は言わないだろう。
天空闘技場に残る皆さんには私の部屋を提供した。どうせ使ってない部屋だ。
「エイラ、お前はちょっと残れ」
解散が告げられた後、店に戻ろうとした私を団長さんが引き止める。なんだろう?
「……エイラ、お前に命令だ。パクの抜け番に入れ」
それは、旅団員になるということ? 私が?
「私には、まだ力が足りないと感じます」
「旅団はいくつかの部隊に分けられる。お前は情報班に所属することになるだろう。戦闘は、それが得意なものに任せればいい。……まだお前は旅団員ではないから、命令の拒否権はある」
だとしても、最低限の力すら、私は身につけられていない。
「それは謙遜か? ……あるいはエイラ、お前は幻影旅団を神格化しすぎている。オレたちはただの盗賊集団だ。隠したいことがあるなら隠したままでいい。ただしオレが頭、オレの命令は絶対だ。意味はお前ならわかるな?」
「……わかりました、今からタトゥーを入れてきます。ナンバーは……」
「9だ。今後とも、よろしく頼む」
「はい」
念願の旅団員。けれど私の心は微塵も踊らない。
私には、圧倒的に力が足りない、たとえ情報班であったとしてもだ。
団長さんは、いったい何を考えて私を団員に選んだのだろう。
どんなに考えても、答えは出なかった。
タロットカードのナンバーナインは『隠者』、テーマは「真理の究明と孤独」
私は自分の心に深く潜る。望むものは何か、必要なものは何か、逆に不要なものは何か。
私は何を求めているのか。
店に戻る気がしなかった。
私は家に戻り、瞑想した。
ゲレゲレもそれに付き合ってくれた。