二十二の使徒   作:海砂

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第四十八話

 二週間ほどで、ノブナガさんとフランクリンさんが戻ってきた。

 そして店の最終日、いつにもまして行列が長い。

 すでに現在並んでいる人の大半が占ってもらえそうもないのに。

 それでも並んでいる。

 

「エイラ、ここではホントに大人気だよね」

 

 傍らに立っているシャルナークさんが呟く。

 私が実際の占いと『女教皇』を併用して占っているのを見て、とても感心していた。

 

「なるほどな、そういう使い方もあるのか……そりゃ当たるって評判にもなるよ、ただでさえエイラの占いは当たるのに。無敵だよ、これは」

 

 そして午後五時。私は店を閉じた。

 結局占えなかった人たちからも、拍手が送られた。

 有り難し。最初の頃からは想像もできなかった光景だ。

 

「今まで、ありがとうございました」

 

 以降は電脳ページを作成し、オンラインでのみ、一回二十万ジェニーで受け付ける。

 これまでに引き続き、一億ジェニーなら順番飛ばしで受け付ける。

 対面でも占うことができるのは一億ジェニーの方だけだ。

 より当たるという付加価値。

 それによって一億の方に客を誘導する。

 

 一方で例の常連のおっちゃんやマジリクさん、ギドなど私が心を許している人間には直接の連絡先を教えてある。

 彼らには、今後も一万ジェニー程度で占うつもりだ。

 そういった人間は、今後も増えるかもしれない。

 もちろん蜘蛛なら無料で占う。

 自分がやりたいように出来るだけの名声と権利を得た。そう思おう。

 

 十一月二日、運命の日が訪れる。

 団長さんとヒソカのタイマンの日だ。

 私に割り当てられたチケットはシズクさん、フェイタンさん、フィンクスさんに譲る。

 私? 怖いですって見たくないですって。

 私は録画で充分だよ、展開知ってるし。

 

 と思っていたけれど、やっぱり観に行っておけばよかったとちょっぴり後悔した。

 録画(正確にはライブ視聴だが)はいくつかのカメラが固定で、ほとんど闘技場のステージだけしか映していない。

 つまり、客席での場外乱闘部分はほとんど映っていなかった。

 

『ヒソカを壊せ』

 

 実況のマイクの声により、客席の人形たちが一斉にステージ上のヒソカに向かって駆け出す。

 ヒソカが場外に跳べば、もう映像では観られない。

 実況の言葉に耳を傾けるにも限度がある。

 あー、怖がってないで観に行けばよかった!

 

 やがて、上層階で大爆発が起きる。

 ヒソカの、死。

 コルトピさんとシャルナークさんは止めて、マチさんと私で彼の遺体を確認しに行く。

 私の占いが軽視されているわけではない。

 軽視されていればコルトピさんとシャルナークさんもともに確認しに行っただろう。

 未来は、私の知っている展開とはズレてきている。

 

「思ったより損傷してないんだね」

 

「爆破役の人形が近づく前に、壊す命令を受けてた人形が群がって緩衝材の役目を果たしたみたいです。死因はおそらく窒息死」

 

 マチさんがヒソカの遺体に近付いた。

 

「……確かに死んでるね。本当に、蘇るの?」

 

「見ていればわかると思います……ほら」

 

 ヒソカの遺体がオーラを纏う。死後の念。

 両腕がそれぞれ心臓と肺をマッサージし、やがてヒソカが飛び起きた。

 

「……やあ、マチ……❤ ボク……今、ちゃんと死んでた?」

 

「ああ……完全に死んでたね」

 

「そう……❤」

 

 奇術師は狂ったようにくくくと笑う。

 

「やっぱりクロロ(クラス)と闘ると、相手十分の条件で勝つのは難しいな……♣ 現実は厳しいね☠」

 

「座りなよ、縫ったげるから」

 

「いや、大丈夫……♦」

 

 ヒソカはガムを傷口に当てて血を止め、薄っぺらな嘘(ドッキリテクスチャー)で破壊された部分を再現する。

 鼻も、顎も、左手も、右足も。

 見惚れるほどの速度で、見た目を再現。

 

「あたしは用なしだね。じゃ、帰るよ」

 

「マチ、逆だから……♪」

 

 ヒソカが、マチさんを呼び止める。

 私はヒソカがマッサージをしている時点で逃げていた。

 原作通りにしようと思ったわけじゃない。

 あの不吉で凶悪なオーラに晒されることに耐えられなかった。

 

「闘う時、相手と場所を選ばないことにした♣ 旅団(クモ)は……ね♪」

 

 ヒソカがガムを使ってマチさんをその場に固定する。

 

旅団(クモ)全員に伝えてくれる……? 今からどこで誰と遭ってもその場で殺すまで闘るとね❤」

 

「ざっ……けんじゃねェ!!! 今あたしが殺してやる!!」

 

「イエスってことね♪」

 

 ヒソカはゴムで再生した足や指の調子を確認しているようだった。

 見た目からは全くわからない。本人も違和感はないようだ。

 

「待て!! 戻れテメェ!!! これ解け殺すぞゴラァア!!」

 

「甘えてんの? 自分で解いて止めてみなよ❤」

 

「…………!!」

 

()()()()もね、関わりたくないなら旅団には近づかない方がいいよ♦ 今だけは見逃してアゲル❤」

 

 私の隠れている方を一瞥すらせず、彼はそう言って去っていった。

 

 ヒソカが去って少し経ってから、私はマチさんのところへ行った。

 

「ごめんなさい……」

 

「いいよ、あたしも少し頭が冷えた。これ解くの手伝って」

 

 私はカードを具現化して、オーラで纏いガムを少しずつ削り取る。

 こんなことをしている間にもヒソカがみんなを襲っているんじゃないかと気が気じゃなかった。

 上半身が解けた。下半身を解きにかかる。

 

「あんたが隠れたのは仕方ないよ。アレはあたしの手にも負えない」

 

 下半身も外れた。あとは地面とマチさんを引きはがすだけ。

 

「団長が単独行動を禁止したのは正しかった」

 

 マチさんの体に絡んでいたガムを全てはがし終えた。オーラの残り香に吐き気がする。

 

「みんなのところに戻ろう。伝言を伝えなきゃ」

 

「はい……」

 

「あんたはあたしたちと別行動した方がいいかもね。まだアイツに蜘蛛と認識されてないみたいだった」

 

「それは嫌だ!」

 

 自分でもびっくりするほどの大声が出た。

 マチさんも驚いている。

 

「へぇ、あんた、そんな大声も出せるんだね。……嫌いじゃないよ、そういうの」

 

 私たちは多少小走りに、皆が待つ団長さんの部屋へと戻った。

 

 

 

「カキンのお宝?」

 

「ああ、カキンの王族の物だ。王と王子が新大陸を目指すんだが、相当大事なお宝みたいで船内に持ってくらしい。それをいただく」

 

 団長さんの部屋では、次のターゲットに関する会話がなされていた。

 原作通り。ただし電話ではなく対面で。原作とは違う。

 

「旅行も出来て一石二鳥だね」

 

「そうだな」

 

「……ちょっと、あたしたちにもそろそろ気付いてほしいんだけど」

 

 マチさんが焦れたように話を遮り、それをフィンクスさんがからかう。

 なんて、平和。

 そしてマチさんから、ヒソカの伝言が皆に伝えられる。

 

「ヒソカが動いているからといって、オレたちがそれほど行動を変えることはあり得ない。ターゲットはカキンの船と、そこに載っているお宝だ」

 

「そこですが、団長さん。私の占いに、ヒソカもその船に乗るとの暗示が出ています。警戒は、しておいた方がいいんじゃないかと」

 

 団長さんはフム、と頷き、少し言葉を変えた。

 

「単独行動禁止、この命令は引き続き有効だ。それ以上の警戒は特には不要だろう。興味があるものがいれば、積極的にヒソカを狩りに行っても構わない」

 

「じゃあ、まずは船のチケットだね。正規ルートでは全員分揃えるのはまず不可能だ」

 

「カキンはあらゆる面において杜撰です。恐らく電脳ページに潜り込んで改ざんしてもアシはつかないかと」

 

 チケットの確保はシャルナークさんが担当することになった。

 これで恐らく最下層には潜り込めるだろう。

 

 ……やだなぁ、暗黒大陸行きたくないなぁ。

 とはいえ私はもう旅団の一員、抜けることは許されない。

 願わくば、あくまで(仮)新大陸までですみますように……!

(あと王位継承戦にもカキン系マフィアの揉め事にも関わりたくない)

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