二十二の使徒   作:海砂

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第五十二話

 フウゲツ王子が目覚めるまで私たちは起きて過ごし、特に何も問題は起きなかった。

 目覚めた後は、改めて魔法の抜け道(マジックワーム)について色々と尋ねた。

 

「最初に出した時はカーちんの所に繋がって……その時は、頭しか出さなくて完全に出なかったからか、出口が消えることはなかったです。二回目が昨日で、今度は身体が全部出た時点で出口は消えました」

 

 やはりこれは移動式の念能力である可能性が高い。

 マジックワーム……ワーム……そのトンネル自体が念獣?

 じゃないな。だって王子にも見えている。

 

「最初の時と二回目の時、トンネルが出たときに何を考えていましたか?」

 

「一回目の時はただカーちんに会いたいって……二回目の時は、ここじゃないどこかに行きたいって念じました」

 

 念じた場所に行ける可能性は高い。

 ただし範囲はおそらくそれほど広くない。

 ここじゃないどこかが、あくまで船内だったから。

 

「……わかりました。じゃあ王子、トンネルの検証をする前に占いをしましょうか」

 

 私はタロットカードを取り出してデスクの上でシャッフルする。

 王子はこの時、初めて笑顔を見せた。

 

「わあ……なんだかドキドキします。私もカーちんも占いが大好きで……戦う占い師さんのことを最初に教えてくれたのもカーちんだったんです」

 

「では王子だけではなく、カチョウ王子とお二人の運命を占いましょうか」

 

「はい、ぜひ!」

 

 シャッフルしたカードの中から一枚を引いてもらう。

『恋人達』の正位置。

 

「お二人の選択が正しいことを意味します。『恋人達』はその名の通り恋人同士を意味しますが、同時に友情など他の様々な愛情も意味します。カチョウ王子とフウゲツ王子の想いはおそらく同じ……ただ、その表現方法が違うだけ。お二人のコミュニケーションを密に取ることができれば、おそらくはその選択を成功に導くことができます」

 

「コミュニケーション……」

 

 フウゲツ王子が顔を曇らせる。

 カチョウ王子の突然の態度の変化。恐らくはそれを思っているのだろう。

 

「……先ほども言いましたが、カチョウ王子とフウゲツ王子の想いは、きっと同じ。どうかそれを信じてください。カチョウ王子の態度には理由があるはずです」

 

「占い師さんは、カーちんのこともわかるんですか?」

 

 しまった、知らないはずのことも話してしまった。占いに混ぜ込めばいいか。

 

「直接占ったわけではないのでフウゲツ王子を通して見た限りですが、悪い感じはしません。きっと今も、カチョウ王子はフウゲツ王子のことを大切に思っています。それは、フウゲツ王子も同じ、そうでしょう?」

 

「はい。私はカーちんが大事。殺し合いなんか絶対にしたくない。かといって、自分も死にたくない。私は、カーちんと私、両方生き残りたい」

 

 そこが、カチョウ王子とフウゲツ王子の少し違うところ。

 カチョウ王子は万が一自分が死んでもフウゲツ王子を守りたいと考えている。

 それは、どちらが優れているとか素晴らしいとか、そういったことではない。

 それぞれに、お互いを、違う方法で、同じくらい想い合っている。

 ……ちょっと、うらやましいな。私にはそういう存在がいなかったから。

 

「それでは王子、『魔法の抜け道(マジックワーム)』について調べていきましょうか。きっと今頃、王子の部屋は大騒ぎになっていると思います、王子がいなくなったから。なので、一旦お部屋に戻りましょう。そう念じて、魔法の抜け道(マジックワーム)が出てくるように祈ってください」

 

 フウゲツ王子はベッドの上に正座をして、指を組んで祈り始める。

 やがて祈りは形になり、王子の目の前に扉が現れた。

 

「まずは王子おひとりで行っていただきます。このワームの先がどこへ繋がっているのか。ご自身のお部屋でしたら、そのままワームから出て、信頼できる護衛たちに私たちのことを話してください。恐らくその場合は、距離に制限はあるかもしれませんが念じた場所に自由に行けるんだと思います。そして明日、改めてこの部屋にワームを繋いでください。もしお部屋でない場所に繋がった場合は、ワームから出ることなくここに戻ってきてください」

 

「わかりました。それで、まずは願った場所に行けるかどうかを調べるんですね」

 

「はい。それができるならば次は、私たちもそのワームを通れるかどうかを試してみましょう。時間はかかりますが、一つずつ確実に可能性を模索していきましょう」

 

 王子は正座したまま、深々と私に頭を下げた。

 

「ありがとうございます……可能性があることが見えた、それだけでも、私にとって大きな希望になります」

 

「まだ早いですよ、王子。王子とカチョウ王子が無事であること、全てが終わったら、お礼はその時に言っていただきます」

 

 私たちは笑顔でお互い頷き合って、そして彼女は魔法の抜け道(マジックワーム)の扉をくぐっていった。

 ……数分ほど時間が経って、扉自体が消える。

 おそらくは、自分の部屋にたどり着くことができたのだろう。

 

「これでいい。次はあたしたちがあれを通り抜けられるかどうかだね。一人だけという制約がついてたらお手上げだ」

 

「それでも、上層部の情報を仕入れることができるだけでも、私たちにとっては大きなアドバンテージになります。上で何か異変が起これば、それに紛れて潜り込める」

 

「それまでは待ちってことだね。仕方ない、あたしはヒソカを探しに行きたいけど、あんたはどうする?」

 

「私はここに残ります。万が一、一日経たずに王子が戻ってくる可能性もありますから」

 

「……ま、仕方ないね。単独行動禁止。あたしもここに残るよ。あんた、先に寝る? それともあたしが先に寝てもいい?」

 

「お先にどうぞ」

 

 マチさんはベッドに入って数秒で寝息を立て始めた。早い。

 

 この部屋には(おそらく各部屋全てに)第三層の見取り図がある。

 避難経路などを掲示したものだろう。

 その地図を見ながら、私は『愚者』を発動する。

 昨日は、十二支んと旅団しか調べなかった。

 私は今、ヒソカの位置を確認する。

 ……ヒソカは、第三層に居た。

 マチさんが探しに出なくてよかった、昨日鉢合わせなかったことも幸いだった。

 マチさんには申し訳ないが、おそらく彼女ではヒソカに勝てない。

 私とゲレゲレを足しても無理だろう。

 ヒソカは団長さんたちか実行部隊(トッコー)に任せて、私たちはお宝を先に探っておきたい。

 部屋に引きこもっていれば、問題は起こらないだろう。

 他の旅団員の位置も確認した。それぞれ昨日とほぼ変わらない場所にいるのだろう、イルミとカルトちゃんを除いて第三層にはいない。

 

 違和を感じた。

 もう一度ヒソカを調べる。第三層展望エリアにいる。

 そしてもう一度、今度はイルミを調べる。……第三層、展望エリア!

 二人とカルトちゃん(イルミとカルトちゃんが一緒にいるのはさっき確認した)が同じ場所にいる?

 これだけそばに居て気付かないわけがない。

 衝突が起こっている気配もない。

 もしかして二人とヒソカは組んでいる?

 マチさんの違和感の正体はこれかもしれない。

 私はイルミとカルトちゃんとマチさんを除く全員にメールをした。

 

『イルミ・カルトとヒソカは組んでいる可能性有り、注意せよ』

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