二十二の使徒   作:海砂

54 / 87
第五十四話

 護衛兵二人の様子を確認しながら、寝室で待機。

 待機中に地図を確認して、団長さんにメールを送っておいた。

 

『ヒソカは第三層政治特区周辺にいます』

 

 特に返事はない。別に必要ともしていない。

 二人はまだまだ自然に纏をするのには程遠いようだ。

 ゲレゲレがちょっかいをかけるたびにオーラが噴き出している。

 

 やがて交代要員の二人がやってきた。

 

「その二人は?」

 

 明らかに敵意のある眼差しを向けられた。

 まぁ現状では仕方ないだろう。

 

「フウゲツ王子の新たな護衛だ」

 

「エイラと申します」

 

「……マチ」

 

「がぁう」

 

 私たちは特に念能力を隠しているわけではない。未だ纏の修行中である二人も同様だ。

 やってきた二人のうち、一人は念能力者。現状にも気付いているだろう。

 私たちがこの二人の精孔を開いたこと。

 

「……このお二方は?」

 

第二(ドゥアズル)王妃所属兵のカラムと第四(カットローノ)王妃所属兵のタンティーノだ」

 

「……カラムだ」

 

「タンティーノだ」

 

 おそらく第二(ドゥアズル)王妃所属兵が念能力者、紹介を受けその推察が正しかったことを知る。

 

「王子個人から眠っている間、そばに居てほしいと命令を受けています。よって、王子がご就寝中の間は私たちが警護を担当させていただきます、交代は必要ありません。私たちと、そこにいるリョウジとバチャエムがお二人の代わりをしてくれます」

 

 上位王妃所属兵は特に不平や非議を述べることもなく、警護待機室へと戻っていった。

 シンプルに考えれば自由時間が増えるわけだしな。

 二人一組だから暗殺も難しい。

 己が捕まり殺される覚悟であれば可能だろうが、そこまでの忠誠心はなさそうだ。

 よって今は、警護に時間を取られるよりも、私たちという特異な存在が現れたことによる上位王妃への現況の説明や作戦の練り直しなどに時間を使いたいだろう。

 両者の利害が一致した。

 第一(ベンジャミン)王子の私設軍隊が相手だったらこうも楽にはいかなかったかもしれないけど。

 

 バチャエムの方が、リョウジより筋が良いようだ。

 ゲレゲレのお邪魔にもずいぶん耐えられるようになってきた。

 なお、さすがのゲレゲレも凝や硬でのネコパンチはしない、そのくらいは心得ている。

 彼らの足元にちょいちょい手を出しているだけだ。

 リョウジはまだ集中力に乱れがある。疲労感は彼の方が上だろう。

 

「お二人は、まだ続けられそうですか?」

 

「続けねばならんさ、王子をお守りするためにはな」

 

「まだ問題ない……この程度であれば……」

 

 リョウジはそろそろ限界かな?

 まあ、さっきは死ぬとか言って脅したけど実際は絶状態になって回復するまで寝ちゃうだけなんで大丈夫だろう(経験者は語る)

 

「あ、あと、この手段で得られるのは念能力の基礎的な部分だけなので、そこはご承知おきください。『ネン』とは奥深く、難しい。出来得る限りのお手伝いはしますが、最終的に物を言うのはあなた方自身の資質と心構えです」

 

 資質はともかく、心構えは大丈夫そう。

 さすがに王室警護兵だけあって、心技体いずれも私なんかよりはるかに鍛えられているようだ。

 フランクリンさんが出会ったばかりの頃に「容器が頑丈でなければすぐに壊れる」みたいなことを言っていたのを思い出した。

 この二人なら、そこはきっと大丈夫だろう。多分。

 

 そしてさらに一時間後、ついにリョウジが倒れた。

 

「リョウジ!」

 

「大丈夫です。すべてのオーラを使い切って、現在『絶』と呼ばれる状態に強制的に陥っています。後でリョウジさんにもご説明しますが、これはこれで一つの技能として重要な役割を果たすため、バチャエムさんもこの状態になるまで修行を続けていただきます。この状態の間は無防備ですが、そのお二人を守ることも私たちの役目だと思っていますのでご心配なく」

 

 ……とはいえ、バチャエムはもう纏をマスターしてそうなんだよな。

 だとすると絶は別枠で教えた方がいいか。

 目の前に実例がいるわけだし、先に絶を教えよう。

 

「バチャエムさん、現在、オーラを感じますか?」

 

「あ? ああ、見えている」

 

「そうじゃなくて、自分のオーラを感じていますか?」

 

 少し考えこんで、それでもすぐに彼は答える。

 

「そうだな……ぬるい風呂の中に浸かっているといった感じか」

 

「オーケーです、バチャエムさん、纏は合格です。後は意識せずその状態を常に保てるように普段から修行してください。次は絶の修行にうつります」

 

「? リョウジのように倒れるまでこれを続けるんじゃないのか?」

 

「纏をマスターしてしまえば、オーラを不必要に使うこともありません。つまり、倒れることもなくなります。なので、倒れているリョウジさんのようにオーラを全て遮断する……体の表面に在るオーラを全て消すことをイメージしてください」

 

 精孔の存在を説明し、それを閉じるイメージを。

 私は彼の前で、実際に絶を使って見せた。

 

「なるほど……これも一つの技能とあなたが言った意味がよく分かった。これは気配を消す手段に近いな」

 

「はい、それにわずかですがオーラを回復することもできます。ただし先ほど言ったように完全に無防備。ゆえに無作為に理由なく絶を使用することはお勧めしません」

 

「完全に無防備ゆえ攻撃されたら一般人と比べてすらひとたまりもないということか。了解した。それでは修行に入らせてもらう」

 

 理解が早い。バチャエムさんも、おそらくリョウジさんも、非常に優秀な人なのだろう、一般人の世界では。

 そうじゃなきゃ王室警護兵なんて名誉で重要な任務まかされないか。

 それでも、私ごとき若輩者の言われるがままに素直に受け止める度量も持っている。

 フウゲツ王子、意外とあなたは人材に恵まれているかもしれませんよ?

 

 フウゲツ王子はお休みになられているようだが、天蓋の隙間から念獣がソワソワとこちらを時々覗いてくる。

 そしてゲレゲレの視線を浴びると慌ててサッと隠れる。

 さすがのゲレゲレも念獣は食べないと思うけどな。

 ……まてよ、グリード・アイランドの時に食べてたな、そういや。

 後であの念獣食べちゃダメだってしっかり言っておかなきゃ。お肉おいしいもんね。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。