二十二の使徒   作:海砂

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第五十五話

 やがてフウゲツ王子の目が覚める。

 ゲレゲレには念獣を食べないように言っておいた。

 ちょっと残念そうな顔をしていた。

 

 バチャエムは絶をほぼマスターしつつある。

 リョウジも途中で気が付き、引き続き纏にいそしんでいる。

 

 ノックとともに寝室の扉が開かれ、ベッドで食事をとりたいという王子の要望に応えて従事者の方々が王子の食事を運んできた。

 バチャエムとリョウジ、それになんと我々の分まで一緒にだ(ゲレゲレ含む)

 ちょっとゲレゲレのモツ煮込みっぽいのすっごく美味しそうなんですけど!

 でも味がついてないから人間には美味しくないのかな。

 ゲレゲレは大喜び。

 私たちのことは、従事者たちもすでに知っていた。

 ……カラムとタンティーノ(あるいはそのいずれか)が周知してくれたのだろう。

 ということはすべての王妃警護兵が私たちの存在を知っている。

 さて、どう出てくるかな。第二(ドゥアズル)王妃は控えめな方だったと思うんだけど、他の王妃はよく知らない。

 問題は第一(ベンジャミン)王子の私設兵だ。

 この時期にはすでに、王妃警護兵に変わって私設兵が各王子についているはずだ。

 私たちの情報はすでにベンジャミン王子に渡っていると言っていいだろう。

 向こうがどう動くか、あるいは動かないか……考えていると、ちょうど向こうからやってきた。

 

「お食事中失礼いたします。第一(ベンジャミン)王子私設兵、ロデノイルと申します」

 

 戦闘体勢は見られない。直立不動でこちらに向かって敬礼をしている。

 

「本当は昨晩伺いたかったのですがフウゲツ王子のお休みの時間を邪魔してはいけないと思い、この時間に参りました」

 

「初めまして、昨晩から警護に加わったエイラです」

 

 彼は敬礼を解き、私、マチさん、ゲレゲレと順番に見る。そして、リョウジとバチャエムも。

 

「状況は、おそらく把握できたと思います。お二方はこの二人(リョウジとバチャエム)と今後も行動を共にしたいと思われているでしょう。今後シフトをこの二人と一緒に組ませていただこうかと思いますがいかがでしょうか」

 

「お気遣い感謝します、ですがフウゲツ王子をフリーにすることに一抹の不安があるため、私かこちらのマチ、いずれか一名を常に王子のおそばにつけておきたいと考えています。故にそちらのシフトには私たちを組み込まないでいただきたいです」

 

「我々もフウゲツ王子をお守りする兵士でありますが?」

 

「あなたがそうであっても全員がそうであるとは限りません。来たばかりの私たちには、未だ判断する術を持たない。少なくとも一週間は、別でお願いします」

 

「……委細承知しました。それでは、これから私と第三(トウチョウレイ)王妃警護兵のミレンクが交代で警護にあたります」

 

 合図とともに、ミレンクと思われる人物が部屋に入ってきた。事前に打ち合わせでもしていたのだろう。

 

「わかりました……マチさん」

 

 私は振り返ってマチさんを見る。

 

「オーケー、あたしが王子を見張る。あんたはあの二人に付いててやんな」

 

「ゲレゲレも、ここをお願いしていい?」

 

「がうあ!」

 

 まだモツ煮込みを頬張りながらだが、ゲレゲレもちゃんと返事をする、賢い子だよしよし。

 おなかが満たされたら念獣食べたいなんて言い出さないだろう。

 

「ではリョウジさん、バチャエムさん、行きましょう。案内をしていただけると助かります」

 

「承知した」

 

 二人に連れられて、私は部屋を出る。

 王子の縋るような視線が見えた。

 大丈夫、そこに居るマチさんは私の万倍強い。

 無言で頷いて、そう伝える。王子も無言で頷いた。

 

 二つほど部屋を出て、わきの部屋へと入る。ここが警護控室らしい。

 二段ベッドが三台。自由に使って構わないそうだ。シャワールームやトイレも併設している。

 ひとつ前の部屋の、正面の扉、あそこがこの部屋(1011号室)の入り口。

 私たちのいる部屋の反対側のわきの部屋が、従事者たちの控室と台所に繋がっているらしい。

 寝室から一つ出た部屋がリビング兼ダイニングルーム。

 大きなテーブルやソファが数台、テレビなども据え付けられていた。

 その部屋から風呂・洗面台のあるバスルーム・トイレへとつながる扉がある。

 入り口から入ってすぐの部屋が応接室だろうか、テーブルとソファが準備されていた。

 それぞれが豪華絢爛ではあるが、思ったよりもシンプルな間取りだな。

 王子それぞれの部屋ごとに、間取りが違うのかもしれない。

 ジムを併設したり、警護控室が広かったり、寝室が広かったり。

 

 王子が在室中以外は各部屋を自由に移動して構わないそうだ。

 食べ物も、自由に台所に取りに行って構わないらしい。

 ただし、王子専用の冷蔵庫と食品庫がありそれには手を触れないことが条件。

 そらそうだわな、毒が入れ放題なのは駄目だ。

 

 少し台所を覗きに行って、すぐに控室に戻る。

 リョウジは纏を、バチャエムは絶をそれぞれマスターした模様。

 早いな。二人とも才能があるのかもしれない。

 次は二人に練を教える。ただしリョウジは絶をマスターしてからだ。

 説明だけ、二人まとめての方が効率がいいから。

 控室には他の王妃警護兵もいるので、説明は応接室で小声で行った。

 リョウジはぶっ倒れた経験からか、すぐに絶をマスターして練の修行へと入る。

 バチャエムはなかなか練に苦戦しているようだ。

 けれど二人とも伸びが早い。これなら基礎修行は一週間かからずに終えられるかもしれない。

 今日は……木曜日。来週の頭ごろまでには、発を除いてマスターしてもらえるとずいぶん助かる。

 とりあえずこの二人に教えることは今のところ何もない……私は入り口に向かう。

 入り口横の電話機。交換台へ接続をお願いする。

 接続先は「1014号室」

 

『こちら1014号室、協会員クラピカだ』

 

 ビンゴ、一撃でクラピカを引き当てられた。

 とはいえあそこはそもそも人数が少ないからな。当然と言えば当然か。

 

「こちら1011号室、協会員としてではないですが第十一(フウゲツ)王子の警護をしているエイラと申します。第288期のプロハンターでもあります」

 

『何の用だ』

 

「情報交換と協定……あまりお役に立てる情報は持っていないかもしれませんが、こちらには協定を結ぶ準備があります」

 

 第十一王子は下位、協定を結ぶ必要性は薄い。とはいえ下位同士での協定により上位王子たちへの牽制となることもまた事実。

 おそらく、クラピカは釣れる!

 

『……こちらは『ネン』の伝授と警護の兼ね合いもあり部屋を離れることができない』

 

「もちろん、こちらから伺わせていただきます、私一人で。今からでも大丈夫ですか?」

 

『ああ、一人だけなら構わない。それではお待ちしている』

 

 私は懐から地図を取り出して広げる。

 第一層にはヒソカもマチさん以外の旅団メンバーもいない。

 単独行動禁止、破ってごめんなさい。

 私は部屋を出た。

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