二十二の使徒   作:海砂

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第五十八話

 インターホンが鳴った。

 現在応接室に居るのは私だけで一番近くに居たので、そのまま出る。

 

『クラピカからの紹介で来た、ハンター協会員ハンゾーだ』

 

 ハンゾーキター!

 喜んで迎え入れる。理想的な展開だ。

 

「初めまして、と言っても選挙の時にお見かけしたことはありますが。私は」

 

「『戦う占い師さん』だろ! あとでサインくれよな?」

 

 ……神様、私はいつまでその二つ名にまとわり続けられなければいけないのでしょうか……。

 

「状況はおおまかにクラピカから聞いている。オレは何をすればいい?」

 

「まずは王子の警護。これは現在警備兵二名と私たち能力者が一名、計三名で行っています。この後者のシフトに入っていただきます」

 

「警護兵の数は?」

 

第一(ベンジャミン)王子の私設兵一名、第一以外の上級王妃それぞれの所属兵四名プラス第十一(フウゲツ)王子直属の兵が二名。その二名は現在念能力の修行中で私が面倒を見ているため、私たちのシフトは同時刻に合わせていただきます。なので、ハンゾーさんにはそれ以外の兵士とともに警護にあたっていただくことになります」

 

「了解した。他に何か情報交換しておいた方がいいことはあるか?」

 

「……忍術を、見てみたいでござる」

 

 半分本気である。興味があることは否めない。それは認める。異論はない。

 

「何だアンタ、忍術に興味があるのか、そいつは有難いな。オレは忍術を世界に広めることも活動の一環としているからな。よし、喜んで開示するぜ」

 

 彼は壁に向かって立つ。

 

手裏剣の術(ハンゾースキル2)!」

 

 彼の両手から手裏剣が具現化し、壁に向かって飛んで行って突き刺さる。お見事。

 

「手裏剣ですか、じっくり見せていただいても?」

 

「ああ、構わない。手裏剣を知られてるってだけでもうれしいもんがあるな。あ、毒が塗ってあるから触るときは注意しろよ」

 

 忍術って本来秘するものじゃなかったっけ……ハンゾーがそれでいいのならいいんだけど。

 四方を向いた四つの刃が中央で繋がっており、真ん中に穴が開いている。

 私たち日本人が想像する典型的な平型手裏剣。素材は鉄かな。

 まきびしとか苦無とかも具現化できるんだろうか。

 尋ねたら嬉々として教えてくれそうだから聞かないでおこう。

 

 バチャエムとリョウジは控室で寝ている。

 オーラを使い果たしたわけではなく、純粋な睡眠時間だ。

 王子の警護をしながらまた修行になるだろうから、私も寝ておこうかな。

 

「ハンゾーさん、私は少し寝ますので、ご自由になさっててください。何かわからないことがあったら従事者か警護中の者に聞いてください。最悪叩き起こしてください」

 

「了解した、アンタとはうまくやれそうな気がするぜ」

 

 私は別にそんな気はしないけどな? 変だな? まあいいや。

 うまくやれるに越したことはない。

 ニンゲンは嫌いだけどニンゲンが好き。寂しがりやの人嫌い、それが私。

 嫌いキライだけじゃ人生やってけないからね、いろいろやるけどさ。

 

 

 数時間後、交代の時間に目覚める。

 私もマチさんと交代した。

 

「ゲレゲレも向こうで休んでていいよ?」

 

「あ、そいつさっきまで爆睡してたから今元気いっぱいだと思うよ」

 

 何……だと……。仕事しなさいよゲレゲレ。

 あっ色々察したのか絶しやがったコイツ。

 

「……すごいな、纏からの絶への移行が見事だ」

 

「ああ、今ならその虎の凄さがよくわかる……」

 

 ほら、二人も呆れてるじゃないの! ちゃんとしなさい!

 

「がうん……」

 

 王子は夕食のお時間なので、居間にいる。

 私とゲレゲレのやり取りを見てケラケラと笑っていた。

 そうそう。本来は箸が転げてもおかしいお年頃。笑顔の方が良く似合う。

 守りたい、この笑顔。

 

 その結果、三人並んで水見式することになった。

 ものすごい絵面である。

 ゲレゲレもやりたがったが、部屋がビショビショになるのでやめさせた。

 非常にしょんぼりしていた。すねて部屋の隅でまるまってしまった。

 

「やはりエイラ殿の練は美しい……格が違うとはまさにこのこと」

 

「そんなに違うの? 私もネンノーリョク、覚えてみようかなあ……」

 

 まさかの王子覚醒ルートがクルー!?

 命の危険などもってのほかなので、王子にはシンプルに瞑想から始めていただくことにした。

 何かが自分を包み込んでいるような、そんな想像をしながら、目を閉じて静かに座り続ける。

 出来るだけ考え事をせずに、温度や風、音、空気の変化、自分の鼓動、呼吸、そういったものだけを感じるように。

 現状の王子には少し難しい課題かもしれないけど……これができるようになれば、少しは王子の心の安寧にもつながるだろう。念はともかく。

 ステッキを持ったフウゲツ王子の念獣がふよふよと浮いて、持ってない方の手でぽふぽふと王子の頭をなでている。

 あのモフモフ……欲しい……! せめて触りたい……!

 不穏な気配を感じ取った念獣はさっと王子の背中の向こう側に隠れてしまった。ちっ。

 

 今日は金曜日。日曜には晩餐会。

 そろそろカチョウ王子からグラスハープのお誘いがきてもおかしくないのだが、まだ来ない。

 できればそのタイミングで第三・第五・第九・第十四王子との休戦協定の話をしておきたい。

 第一層全体に音楽を流す予定なのは、きっとセンリツの念能力。

 聞いた者を眠らせる能力でもあるんだろう、多分。おそらく操作系。

 その間にルートを確保し逃げ出す。

 ただ、その作戦だとすると第一(ベンジャミン)王子の私設軍隊には効果がない可能性がある。無論王子自身にも。

 ということは逆にカチョウ・フウゲツ両王子が危険になる。

 私たち警護兵は王の許可が無ければ晩餐会の会場への入場は認められない。

 それは第一王子警護兵であっても同じ。

 とはいえ、センリツとカチョウ・フウゲツ両王子対ベンジャミン王子になれば、圧倒的に後者が有利。

 他者が眠っているのであれば殺害も容易。センリツに両王子殺害の罪を擦り付けて屠る事すら可能。

 ついでに言うなら第九(ハルケンブルグ)王子御一行にも効かない可能性あり。

 あの羽のマークの刻印は、念獣に操作されている印のような気がする。早い者勝ち。

 

 ……なので、そこまでセンリツたちもアホじゃないと思うんだけどねえ。

 私の想像だとこれが限界。センリツにもっと強い能力でもあるんかな。

 それとも他に手段があるのかしら。トガ神どうするおつもりだったのかしら。

 

 とはいえ着実にフウゲツ王子の能力の詳細が明らかになってきつつあるし、カチョウ王子とのコミュニケーションは不可欠。

 カードにも出てたしね。

 なのでお早めに向こうからの連絡をお願いしたい。

 双子であっても下位王子側から連絡は出来ないのだ。階級制メンドクセ。

 カチョウ王子と接触ができ次第、1014号室(クラピカ)に休戦協定の準備完了のお知らせもしなきゃならない。

 こっちはこっちで、こちらから連絡を取らなければ向こうから連絡することはできないので先に進めようがない。

 クラピカとは一応の信頼関係は得られたと思うんだけど。

 うまくすればマラヤーム王子も含めて下位王子全員脱出なんて離れ業もやってのけられる、フウゲツ王子の能力があれば。

 それをするためには、各王子の連携が必要。

 下位王子の母親に上位王妃がいないことも好材料。

 王妃ごとまるめこんでみんなで仲良く脱出……したところで追っかけられそうな気もするけど。船の中だけだと。

 フウゲツ王子の能力、船の外につなげられないかなあ。

 王子自身が念能力を覚えてオーラ増やせば可能になったりしないかな。

 真剣に考えてみるか、王子の念能力獲得。命の危機にならない程度にね。

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