二十二の使徒   作:海砂

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第六十一話

 フウゲツ王子はカチョウ王子としっかり話せたせいか、心なし嬉しそうだ。

 グラスハープの演奏会、私も聴いてみたいな。

 でも第一層全体に流すのは中止になったので聴くことはできない。しゃーない。

 私たちは1011号室へ戻り、王子は居間へと移動した。

 居間ではハンゾーとゲレゲレ、それにロデノイルと第五(スィンコスィンコ)王妃所属兵アカシが警護している。

 あからさまに軍人っぽくいかつい外見のロデノイルに比べアカシは線が細い。

 念能力者でもないようだ。

 警護兵だからそれなりの実力はあるはずだけどね、一般人の世界においては。

 

 応接室ではバチャエムとリョウジが水見式をしていた。

 よしよし、私の指示がなくても自発的に修行している、素晴らしい。

 

 私は電話をかけた。相手は1014号室。

 

「こちら1014号室、協会員クラピカだ」

 

「1011号室、エイラです。本日カチョウ王子警護と話し合い、ともにそちらの協定に加えていただけないかという方向でまとまりました。そちらはいかがでしょうか?」

 

「我々はもちろん、他の王子も歓迎するとのことだ。ただし明日の晩餐会で、第三(チョウライ)第五(ツベッパ)第九(ハルケンブルグ)第十四(ワブル)各王子が休戦協定を結んだことを他の王子たちに公示する。それにお二人を加えても構わないということでよろしいか」

 

「はい、構いません。ご尽力に感謝します」

 

「いや、それはいい。……それよりも、()()()に尋ねたいことがあるのだが、構わないだろうか」

 

 ? なんだろう。

 

「君はクロロ=ルシルフルを知っているな」

 

 いきなりそう来たかー!!

 うすうすバレてるだろうなと思ってはいたけれど、やっぱりうまくはいかないか。

 ここは正直に全部話すしかない。

 

「はい、知っています。天空闘技場で対戦しました」

 

「それ以前から知り合いであったようだが。先に言っておくが私に嘘は通用しない」

 

 知ってます。変な疑いをもたれないためにも全力で正直に答えますよ。

 

「クロロ=ルシルフルは私の師匠です。ですが現在は別行動中。彼は第四層……下層にいるはずです」

 

 まだ今日は位置確認してないからね、これは嘘じゃない。

 すでに移動はしているかもしれないけど。

 

「旅団がこの船に乗っているということか」

 

「はい。全員集合しています。ただし目的はあなたではなくカキンのお宝のようですが」

 

 クラピカ、多分今興奮状態。何だったら緋の目にまでなってるかもしれない。

 あくまで私は冷静に。

 

「旅団はヒソカとも敵対しています。狩りたいなら今が好機といえば好機。ただしその場合は王子の警護を放り出すことになってしまいます。それは望まないでしょう……あなたも、私も」

 

「ああ、そうだな」

 

「もし目の前で師匠とあなたが戦っていたならば、私は師匠側につきます。そうでなければ、王子の件については私たちが手を組むことは別枠で可能かと思います。私もあなたも、互いに直接思う所があるわけではない。私は旅団についてあなた方にこれ以上の情報を漏らすことはしません。代わりに私の眼前でなければあなたの邪魔もしない。そういう形での休戦協定は、いかがでしょうか? それぞれの王子を守りたいという点において、私たちの利害は一致しているはずです」

 

「……その通りだ。君がこれまで嘘をついていないことも承知している。そこからも、君が本気でその提案をしているということがうかがえる。いいだろう。蜘蛛が眼前に現れない限り、我々の休戦協定は有効だ。王子の休戦協定とはまた別の話になるが」

 

「はい、承知しました。今後は蜘蛛についての内容は黙秘させていただきます」

 

 会話を終えて電話を切る。だーっ、あせった!

 バレてる目算は大きかったけど向こうから切り出してくるとは思わなかったな。

 クラピカのことだから黙ったままこっちを監視してくるかと思ってた。

 ……黙秘したところで、シロかクロかあっさりばれそうな気がするけどな、まあいいや。

 団長さんたちもこの程度の情報が漏れた程度でどうこう言う人たちじゃない。

 そういうちまちましたもんを全部力でねじ伏せるのが蜘蛛だ。良くも悪くも。

 ……クラピカの能力、欲しいなあ。あの薬指の鎖だけでも。

 敗北を認めさせるとか絶対無理だけど。

 乱れ飛ぶ二十二の使徒(シューティング メジャー アルカナ)のどれかに似たような能力を付与できないかな、考えてみよう。

 あれが出来たら占い師としてもまた一歩階段を登れるよねー。

 

 振り返ってリョウジとバチャエムを見る。

 二人の練はいい感じに練れてきている。オーラが飛び散ることもなくなっていた。

 まだ戦力に数えるのは無理だけど、ものすごいスピードで伸びている。

 

「エイラ殿! お願いがあるのですが!」

 

 バチャエムが立ち上がって私の前にやってくる。

 

「ちょっと、私のパンチを受けてはもらえないでしょうか」

 

 なんだなんだ? とりあえずオーケーを出す。

 手を開いて前に出す。バチャエムがそれに軽いパンチを放つ。

 私の手のひらの表面を覆っていたオーラが全て絶へと変わり、バチャエムのこぶしのオーラ量が増している。

 

「おお。すごい」

 

「もう一度お願いします!」

 

 手のひらを前に出す。パンチを受ける。

 取られたオーラが私の手のひらに戻り、再び手を包む。

 

「どうでしょうか!」

 

「いや、びっくりした……素直に、めちゃくちゃすごいです。ここまでとは。私の想像よりはるかに速く、念能力を習得できたようですね。あとは修行で、やり取りできるオーラの量を増やすこと……練の修行が最も適しているかと思います。それと、この能力に名前を付けてあげてください。名前を付けることによって己の中で技を認識し、発動が容易くなったり能力を底上げする効果が期待できます」

 

 知らんけど。でもみんな名前つけてるよね。

 みんなやってるということは、なにかしらの理由があるということ、だと思う。

 

念力強盗(オーラロベリー)……いや、貸借念力(レンタルオーラ)……」

 

 ブツブツいいながらバチャエムはテーブルに戻っていった。

 何だこの才能。ハンター世界ってのはこんな才能がその辺にゴロゴロしてるのか?

 リョウジはちょっと悔しそうに横目でバチャエムを見ている。

 焦らない焦らない。それが普通です。

 でもリョウジは具現化系だから、そろそろ具現化したいものの候補を考えさせておこうかな。

 それを伝えると、リョウジも水見式とともに考えることに集中し始めたようだった。

 

 居間をのぞいて見る。王子が滞在しているので、もちろんノックをして頭を下げながら、だ。

 

「がぁう!」

 

 何だこれ。ゲレゲレとウサギ念獣がイチャイチャしていた。

 あおむけになったゲレゲレの胸のモフモフを堪能しきった念獣がうっとりとモフモフに背を預けともに空を仰いでいる。

 知らん間に仲良くなったのか。

 これをずっと延々見てたのかハンゾーとロデノイル。ウケる。

 王子は瞑想中だ。お邪魔をしないように引っ込んだ。

 

 特にすることもないので従事者の方々のお手伝いをする。

 特に料理をメインにお手伝いしながら色々と教えてもらう。楽しい。

 今のところ従事者に念能力者はいない。

 1014号室に行っている従事者もまだ目覚めていないようだ。

 皆バタバタと王子たちのお昼ご飯の準備をしている。

 私は自分とマチさんとゲレゲレの分を請け負った。

 鶏をオーブンで丸焼きにしながら、横目で従事者さんたちの様子を確認する。

 王子専用の冷蔵庫と食品庫は、開けるために従事者二名以上のカギが必要なようだ、なるほど。

 王子一名分の食事を作るのに最低二名がつきっきりになり、残りの者で警護や従事者たちの食事を作る。

 食事の用意の際は今日が休みの人間を除いて従事者全員が厨房に集まっているようだ。

 それだけの広さがあるので特に問題はない。

 複数人が集うのは監視の意味も込めてだろう。毒を盛られないように、不審に思われないように。

 基本的に常時、身内だけでない複数人で行動する。

 ゲレゲレはともかく私やマチさんも今後気を付けるべきだろうな。

 

 オーブンで焼いている間に、私は鍋で冷凍のゴハン(炊いたもの)をぐつぐつ煮込む。

 ルームサービスで食べた中華粥が美味しかったので再現を試みるのだ。

 鶏骨の出汁も冷凍されていたので、鍋にそれも放り込む。

 キャベツにニンジン、タマネギにワカメ、あと何が入ってたかな……。

 あっ、確かキノコ入ってた! シイタケみたいなのがあるからこれ刻んで入れよう!

 全部細かく刻んでまとめて軽くゴマ油で炒めて、それからおかゆに放り込む。

 食べたときにしょうがの風味がしたので、仕上げにおろししょうがと塩をちょっぴり加えて、完成!

 我ながらうまくできたし、マチさんにも好評だったのでまた作ろう。

 鶏の丸焼きもゲレゲレは喜んで食べてくれた、嬉しい。

 お料理、楽しい。

 美味しいものを食べて自己肯定感アップしつつ、現実逃避にもぴったり。

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