二十二の使徒   作:海砂

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第六十二話

 昼食を終えて、それぞれの仕事に戻る。

 従事者の皆さんはゆったりと掃除や後片付け。

 ロデノイルとアカシ、ハンゾーとゲレゲレは引き続き王子の警護。

 マチさんは控室で王子オススメの漫画を読んでいる。

 後の三人の各王妃警護兵も控室に居るようだ。

 リョウジとバチャエム、それに私は応接室で修業の続き。

 最近タロットを触ってなかったので、意識的にタロットをシャッフルすることにした。

 これ、本当に具現化系の修行になってるのかなあ?

 

「エイラ殿、それは?」

 

「占い師である私の商売道具です。私の能力でもあります」

 

 具現化系であるリョウジの参考になるかと思ったので、私は乱れ飛ぶ22の使徒(シューティング メジャー アルカナ)を具現化して見せた。

 

「具現化系の修行には、具現化したいものを扱うことも含まれます。なので、私はこうやってタロットカードを扱うことを修行の一環として行っています」

 

 出したカードを消して、本物のカードの方に向き直る。

 

「ということは、エイラ殿は具現化系なのか?」

 

「いえ、私は水見式の通り特質系です。ただ、隣り合って相性の良い具現化系の能力をひとつ、己の念能力としました」

 

 ちょうどいい機会なので二人に六性図の説明もしておく。

 

「ふむ、自分が強化系であっても絶対に強化系の能力にしなければならないわけではないということか」

 

「はい、ですがもっとも能力を引き出せるのは強化系であることに変わりはないので、よほどの場合を除き他の能力をメインにしようとは思わない方がいいと思います」

 

 私がタロットを具現化したのはあくまで特質系である舞い踊る22の使徒(ダンシング メジャー アルカナ)の補助としての能力だもんな。

 最近は色々能力付与出来たおかげで乱れ飛ぶ22の使徒(シューティング メジャー アルカナ)の方が使い勝手がいいけど。

 特質系ってすごいと思われがちだけど、相当内容を考えて絞らないと他の系統に比べて強力な能力を作ることが難しい系統だと思う。

 ま、私の場合は最初から持ってたからどうしようもないんだけどさ。

 メモリは多分いっぱいいっぱい。後はどれだけ能力を奪取あるいは付与できるかが勝負だ。

 修行もだけど、現状で出来るのは乱れ飛ぶ22の使徒(シューティング メジャー アルカナ)の能力付与、これを考えていった方がいいかもしれない。

 全部終わったらバチャエムの能力も欲しいな。でも強化系だから私が奪ったらヘタレ能力になっちゃいそうだな。

 それにリョウジとバチャエムは私の弟子みたいなもんだ。

 弟子の能力奪うのイクナイ。団長さんですら、そんなことしなかった。

 

 ふと思い立って、私はヒソカを占ってみることにした。

 当人がカードを引かなければ的中率は落ちる。けれども占えないことはない。

 そういやオンラインで受けている依頼ものぞいてみなきゃなあ、見たくないなあ、溜まってそう。

 ヒソカを占った結果は『魔術師』の逆位置。魔術師ではなく奇術師だという解釈もある。

 ヒソカにピッタリのカードだね。

 私がもしヒソカの念能力を奪うことができたなら、きっとこのカードになるだろう。

 不適当、不安定。ヒソカは何か悩んでいるのかもしれない。

 狙うタイミングを逃すという意味もある。まさにその通りの現状だろう。

 準戒厳令によって位置的な拘束もされている。抜けると無駄に敵が増える。

 カルトちゃんはイルミがヒソカだと知ってるのかなあ? 知ってるよねえ?

 だとしたら蜘蛛は一枚岩ではない。今度は蜘蛛を占ってみよう。

『悪魔』の正位置。意味するところは邪な欲望。

 暴力、破壊、堕落、逆境。あまり良いカードではない。

 とはいえ多分、これは旅団同士の衝突を意味していると思われる。

 カルトちゃんの裏切り。というかそもそも彼は蜘蛛に思い入れがない。

 裏切りというほどのことでもないだろう。

 欲望を意味するこのカードが示すのはお宝の奪取。それに伴う暴力と破壊。

 私のカードが示すのは一か月以内の運命。

 一か月以内に旅団同士が衝突し、旅団はお宝を奪うだろう。

 つまりそれは、二か月以内と予測される新大陸(仮)への到着よりも手前。

 お宝って何だろね? 国王以外のお宝は正直蜘蛛が狙うほどの物とも思えない。

 国王が持ち込んだお宝とは何なのだろうか。

 

 個人的には、思い当たる節が一つある。大外ししてる可能性も高いけど。

 国王は死んだ王子の棺を用意していた。

 カキンの礎となり今も生きている。

 すべて繋がれた棺。全部を埋める必要はない。

 繋がった棺は中央へ集められる。

 命と快楽の等価交換。

 厄災と呼ばれるが決して災厄だけではない。

 快楽とは、ただの意識の中だけの快楽だけではない。

 死んだ王子を貢ぐことによって等価交換の利を得ることができる。

 それこそが、カキンの根本であり王位継承戦の本当の意味!

 ……全部私の妄想だからね?

 ただ、それなりの何かがあそこにはあると思う、勘だけど。

 

 タロットカードをワシャワシャとシャッフルしながら色々と考える。

 まだ知っていることが少ない。

 晩餐会に参加できればもう少し情報も集められるんだろうけれど、さすがにそれは無理。

 有名占い師さんとして参加できないかしら。出来たとしても国王には近づけないな。

 誰か王子が死なないかな。そうすれば国王の位置からあの棺の空間の位置が割り出せる。

 国王の顔は前夜祭の時に確認したから『愚者』で位置を把握できる。

 国王と王子全員(第十四(ワブル)王子を除く)、顔は認識している。今のところ何の役にも立ってないけれど。

 モモゼ王子とカミーラ王子以外それぞれ各部屋から出ていないから、特に確認するまでもない。

 上層の部屋割りは警備上の理由か地図には記載されていなかったから、各王子の位置とともに後から記入した。

 1001号室から1015号室まで。1015号室は予備の空室。

 国王の部屋は1000号室、というかワンフロア。多分このフロアのどこかにあの部屋がある。

 第一層の一番上が国王の部屋。その下に各王子の部屋が二フロアに分けて配置されている。

 その下に晩餐会の会場を含む様々な設備。その下にV5要人たちの部屋が三フロア分(たぶん)

 これがおおよその第一層の構成。デッキとか展望塔とか他にもいろいろあるけど。

 晩餐会には第二層からも出席が可能、ただし前もって国王が許可を出したリストに載っている者のみ。

 故に第一層と第二層の間の警備は割と緩め。

 残った金積めば準戒厳令下でも第二層に行き来することはできるだろう、意味はないからやらないけど。

 

 考えても仕方ないな。

 私はカードを順番に並べて箱に仕舞った。

 スマホを開いて依頼を確認する。

 一億の案件が一件と二十万の案件が四百件ほど。うんざりする。

 とりあえず一億の方だけでも片付けておくか。

 詳細を開く。依頼人はパリストン=ヒル。テメーかよ。

 あの人もこの船に乗ってるだろうから、直接占えないかな。多分第一層だろうし。

 記載されている連絡先に電話をかける。

 わざわざ非通知にはしない。どうせ私の番号知ってるだろうし、教えてないけど。

 

「お待ちしていましたよ、戦う占い師さん!」

 

 ホラネ。

 

「依頼拝見しました。こちらは現在B・W(ブラックホエール)一号の第一層に居るんですが、直接とオンライン、どちらの占いをご所望ですか?」

 

「ええ! 第一層だなんて、占い師さんは超VIPなんですね! ボクは第二層なので直接は占えませんね、オンラインでお願いします」

 

 おや意外。第一層じゃなかったのか。地図を開いて『愚者』を発動する。確かに第二層に居る。

 

「今すぐでも大丈夫ですか? それとも改めて日付を決め直した方が?」

 

「今はちょっと取り込んでまして、あさってなら一日中あけられます、それでいかがでしょう?」

 

「わかりました、あさってまた電話しますので、よろしくお願いします」

 

 電話を切る。地図を開いたついでにジンとビヨンドの位置も確認する。

 ジンは第二層、ビヨンドは第三層政治特区に居る。ん-、ビヨンドはまだ繋がれてるのかな。

 王子付きでない準協会員の数は想像以上に多い。それが今のところ第一層と第二層にほとんど配置されている。

 ミザイストム、はやいとこ下に送り付けてくれないかなー。

 人が多いとなんか予想外の事態が起こりそうで嫌よね。敵か味方かわからない。多分敵と認識して動いた方がいいんだろう。

 

 交代。第二(ドゥアズル)王妃所属兵カラムと第三(トウチョウレイ)王妃所属兵ミレンクが居間に入っていき、ロデノイルとアカシが入れ替わりに出てくる。

 

「お疲れ様です、何か飲まれますか?」

 

「いや……そうだな、水をもらえるか」

 

「自分も水をいただけますでしょうか」

 

 水差しに水を汲んで二つのグラスとともに二人の元へ持っていく。本来なら従事者の仕事だけどこのくらいはいいだろう。

 

「あの虎は何者なのか聞いてもいいか? ただの虎じゃないだろう」

 

「いえいえ、ただの虎ですよ。私がカキンで修業している時に出会った、ただの虎」

 

 角は一度も出していない。キャンプタイガーだとばれているかどうかはわからない。

 念能力者だということはロデノイルにはばれている。

 それ以外はばれていようがいまいがどうでもいい。

 ゲレゲレはゲレゲレ。それ以上でも以下でもない。

 ……最近甘やかしてないな。次に一緒になった時は甘やかしてあげよう。

 

「アカシさんは第五(スィンコスィンコ)王妃所属兵でしたよね。サレサレ王子ってどんな方なんですか?」

 

 警戒は……されてるな、若干。

 ロデノイルの方は警戒をしたうえで何事もないかのように雑談をするだけの余裕がある。

 

「まあ……女好きですね。王子とはいえノリのいい普通の若者ですよ」

 

 おべんちゃらは下手くそ。馬鹿正直に真面目なタイプなのかな、アカシは。

 

「あらやだ、じゃあ私なんかもしかしたら王子のお手付きになれるかも?」

 

「あっそれは無理ですね。巨乳好きなので」

 

 おっぱいか。全てはおっぱいが物を言うのんか。チクショー!

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