二十二の使徒   作:海砂

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第七十五話

 自分自身も修行をする。主に練。

 出来得る限り多くの潜在オーラを身に着けたい。

 どこまで伸びるのかはわからないけれど、まだ成長ストップはしていない、と思う。

 潜在オーラ量は自分じゃよくわからない。

 ポットクリンがいたらわかるのかな? 強制絶なんて絶対ヤだけど。

 

 

 修行をしていると突然、どこからともなく光が飛んできた。

 

 

隠者(ハーミット)

 

 

 唐突に『お前の物は俺の物(ジャイアニック エゴイスト)』によって手に入った新たな能力。

 使ってみないとまだ内容はわからない。

 でも多分、私の能力を知っている誰かが条件を満たした。

 過去に占ったことのある念能力を持った誰かが偶然今条件を満たしたとは考えにくい。

 おそらくは団長さん、フィンクスさん、フェイタンさん、コルトピさん、マチさんのいずれか。

 それ以外に心当たりがない。

 私の能力を知っていて条件を満たせるのはこの五人だけ。しかしなぜ今なのか。

 揺れはまだ続いている。

 地図を取り出してこの五人を調べてみた。

 ……コルトピさんが、いない。

 どこにもいない。

 つまり、そういうことなのだろう。

 一緒にいたはずのフランクリンさんとシャルナークさんを調べてみる。

 二人は離れ離れになってそれぞれ第五層に居る。

 単独行動禁止。それすら守れないほどの何らかの出来事。

 第五層で何かが起きている、それはもう間違いない。

 

 マチさんに相談しよう。そして場合によっては第五層へ行こう。

 できれば実行部隊(トッコー)と団長さんたちも一緒に。

 私の最優先は蜘蛛をその足ですらも失わないこと。

 この二組にメールを送る。

 具体的にはわからないが第五層で何かが起きていること。

 コルトピさんが死んだであろうことと、もしかしたらその能力を受け継いだであろうこと。

 シャルナークさんとフランクリンさんが離れ離れになっていること。

 それがヒソカとは関連していないこと。

 そして、二千体のキメラアントの存在。

 

 すぐに団長さんから返事が届いた。

 自分たちはヒソカへ向かうこと。実行部隊(トッコー)を第五層へ向かわせること。

 そして私たちは今しばらく第一層から動くなという指令。

 戦力を分散していて大丈夫だろうか。一抹の不安がよぎる。

 とはいえマチさんはともかく私が行ってもお役に立てる場面は少ないだろう、むしろ足を引っ張る可能性すらある。

 ここは頭の指示に従おう。

 全滅を避ける意図があるのかもしれない。

 

 マチさんを居間に呼んで情報共有をする。

 王子が聞き耳を立てているのがわかる。けれど聞こえたとしても意味はきっと分からない。

 リョウジとバチャエムもチラチラとこちらを気にしている。

 小声で話しているのであの二人に声は届かないだろう。

 

「団長の指示っていうのは本当なんだろうね」

 

 マチさん最近疑り深い。こんなことで嘘つきませんよ……。

 スマホのメールを見せる。ようやく信じてくれた。

 

「じゃああたしらはすることがないってね。向こうに戻らせてもらうよ。何か変化があったらまた教えて」

 

 そう言ってマチさんは部屋から出て行ってしまった。

 

 念のために十二支んも調べておこう。

 調べてみるとやはり、ビヨンド拘束室のサッチョウと医科学特区のチードルとレオリオ、それにクラピカを除いた全員が第五層に向かっている。

 ミザイストムとカンザイはすでに第五層に居る。

 十二支んが第五層に気を取られている今が、第三層に居るヒソカを狩る好機といえば好機。

 団長さんが別行動を指示した意味もようやく理解した。

 問題はただ一つ。実行部隊(トッコー)とフランクリンさんたちだけで第五層での危機に対処できるのか。

 ひとまず私にできることは、それぞれの位置を把握して合流を促す。

 フランクリンさんとシャルナークさんは携帯なんて見る余裕ないかもだから、フィンクスさんにメールするか。

 第四層と第五層を繋ぐ階段に近いのはフランクリンさんの方だな、まずそっちに誘導しよう。それから、シャルナークさん。

 

 ……そうだ、もうすぐ日付が変わる。

 王子にお願いして、今夜の魔法の抜け道(マジックワーム)を使わせてもらおう。

 シャルナークさんは第五層の中でも中央より下のフロア、しかも端の方にいる。

 実行部隊(トッコー)と合流してもらうより、私が迎えに行った方が早い。

 もちろん魔法の抜け道(マジックワーム)が第五層まで繋げられればの話だけれど。

 

 今夜の魔法の抜け道(マジックワーム)で私以上の実力者を一人連れてきたい旨を王子に話して許可を得る。

 フェイタンさんやフィンクスさんに比べたら、魔法の抜け道(マジックワーム)という明確な理がある分シャルナークさんの説得はしやすいだろう。

 あとは、マチさん。

 

「マチさん」

 

 彼女を再び呼んで、その旨説明する。

 

「マチさんにはトンネルのこちら側に居ていただいて、私やシャルナークさん以外の()()が出てきたら処分して入り口を閉めてほしいんです」

 

 トンネルの中での待機係はゲレゲレ。

 『愚者』があればシャルナークさんの居場所は具体的にわかるし、すぐに合流できるだろう。

 そうしてトンネルに戻るまでの間。あるいは私たちが何者かにやられてしまった場合。

 第一層にそのナニカを来させるわけにはいかない。

 マチさんにはキメラアントのことも説明している。渋々ながら納得してもらった。

 

「ゲレゲレもね、トンネルに何者かが侵入してきたら全力でぶっ倒していいからね」

 

「がう!」

 

 狭いところだと戦いにくいだろうけれど、信じるよ、ゲレゲレの実力も。

 

 

 日付変更の寸前ギリギリまで地図でフィンクスさんたちを誘導する。

 フランクリンさんはあちこち移動しているようだが、シャルナークさんは途中からほとんど移動していない。

 もしかしたら大怪我しているのかもしれない。

 

 そして日付が変わる。私はゲレゲレと共にトンネルへ入った。

 第五層であってもトンネルは繋げられた。

 おそらく船の中であればどこでも繋げることは可能なのだろう。

 しばらく進んだところで、ゲレゲレを待機させる。

 そして私だけさらに進み、出口から出る。

 そこは、地獄絵図だった。

 床一面の流血、元ヒトだったものの残骸。

 部屋には扉が三つ。恐らく入り口であろう扉と、奥に左右一つずつ。

 入り口の扉と左の扉は開いている。その奥にもヒトの慣れの果てが見える。

 そして右の扉。ひしゃげて元の形を成していない。

 その奥から何度も何かがぶつかるような激しい音が聞こえてきた。

 愚者を発動する。シャルナークさんはこの中に居る。

 

 扉に近付く。中を覗いた。闘っている。

 一人はシャルナークさん。あとの数人は……キメラアント!

 

 私は乱れ飛ぶ二十二の使徒(シューティング メジャー アルカナ)を具現化して何も付与していないカードを数枚キメラアントに投げつける。

 ここのキメラアントは弱いのだろう、カードは彼らを裂いて壁に突き刺さる。

 

「エイラ!」

 

 私は『世界』を引く。

 部屋はそれほど広くない、全てが『世界』の範囲内に収まる。

 続けて『死神』を引いた。一秒間、私は部屋中のキメラアントを切り裂く。

 一秒後、キメラアントは全て床に崩れ落ちた。

 

「助かったよ、思ったより数が多くて」

 

「シャルナークさん、一体何があったんですか?」

 

 聞きながら部屋を見渡す。部屋の中には無数にも思えるほどの数の、繭、繭、繭。

 

「見ての通り、キメラアントの集団に襲われた。僕は死体のあとを辿ってこの部屋にたどり着いたんだけど……」

 

 ここはおそらくシャ=ア一家のアジト。

 さっきの部屋に家紋を掲げた額が飾ってあった。

 そしてこの部屋は、原作では厳重に封鎖されていた部屋。

 おそらくはここに、キメラアントの繭の一部が保管されていたのだろう。

 

 改めて周囲を見渡す。

 孵化した繭は半分ほどだろうか。まだ中身の入った繭の方が多い。

 

「シャルナークさん、ひとまず逃げましょう。安全な第一層まで案内します。このままここに居たら確実に十二支んがやってくる。面倒なことになる前に」

 

「了解。でもコルトピとフランクリンは?」

 

「フィンクスさんたちと合流するように連絡を取り合っているので大丈夫だと思います」

 

 詳しい説明は後で。ひとまず急いでトンネルに戻り、くぐる。

 ゲレゲレ、お疲れさん。戻って戻って。

 

 そして私たちは1011号室にたどり着いた。

 まずはシャルナークさんへの事情説明だな。

 壺中卵の儀について、念獣の存在、第一層の状況、ヒソカの動向、他の団員の動向。

 コルトピさんのことも説明した。

 そして逆に第五層についての情報を得る。

 第五層ではしばらく何も起こらなかったが、現在はキメラアントが荒らしまわっている。

 一匹一匹の実力は流星街に現れたキメラアントよりも弱い個体が多いこと。

 ただし大量であったことと不意をつかれたことによって、三人がバラバラに分断されたこと。

 

 話しながら地図を取り出してフランクリンさんの居場所を確認する。

 無事にフィンクスさんたちと合流できたようだ。第五層の上の方にいる。

 団長さんたちは……もうすぐにでもヒソカと接触するだろう。

 改めて団長さんにヒソカの位置をメールした、ついでにシャルナークさんを第一層に連れてきたことも。

 

「コルトピがやられたとなると、僕が出会ったような弱い個体だけじゃないかもね。さすがに四人もいて警戒していればやられるようなことはないと思うけど」

 

「キメラアントの他には異常はなかったんですか?」

 

「うん、警備が厳しくなったくらいで、他には何も。エイラはどうしてキメラアントのことを知ってたの?」

 

 黙っている理由は……特にないか。

 私はパリストンのこととその情報源をシャルナークさんに語る。

 

「パリストン=ヒルか……僕もそんなに詳しいわけじゃないけど、元十二支んってだけでもその実力は把握できるうえに、聞いた限りだとなかなかの根性悪っぽいね」

 

 旅団が言えた義理じゃないと思うけどな……。ここは黙っとこう。

 

「シャルナークさんにも、しばらくはここで第十一王子の警護を担当してもらおうかと思います」

 

 その言葉でシャルナークさんは、離れたところからこちらの様子をうかがいながらも黙っている王子の方を見た。

 王子とロップが同時にぴゃっと反応する。かわいい。

 

「初めまして、僕はシャルナーク。エイラやマチの仲間です。これからよろしくお願いします」

 

「こ、こちらこそ!」

 

 綺麗なお辞儀をするシャルナークさんに、慌てて王子が頭を下げる。

 これで、1011号室の念能力者が四人(と一匹)

 ひとまず最低限の守備体制は築けたかな。私設軍隊ほどとまではいかないけど。

 ……コルトピさんを失ったことが、とても悲しい。

 でも泣いている場合じゃない。

 下層の方は、それぞれに任せよう。私の任務は王子とその能力を守ること。

 明日の時間変更線を越えたら『隠者』を使ってみよう。

 今は『愚者』の能力よりそれを知ることの方が大事。

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