二十二の使徒   作:海砂

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第七十六話

 朝、警備を終える。

 朝ごはんは従事者の人たちがサンドイッチを作ってくれてたのでそれを食べた。

 バチャエムとリョウジは控室に追い立てる。はよ寝れ。休め。

 シャルナークさんを他の警護や従事者の人たちに紹介する。

 カラムがアワアワしていた。また報告しなきゃね、頑張ってね。

 1010号室からの朝の定時連絡を受ける。特に変わったことは無し。

 

 そして私はがんばって起きていて、お昼前ごろ。

舞い踊る二十二の使徒(ダンシング メジャー アルカナ)』の日付変更線。

 カードを具現化する。

『愚者』『女教皇』『運命の輪』そして昨日手に入れた『隠者』

『隠者』のカードを引く。

 初めてカードを引いたときにそのカードの念能力の内容が私の脳裏に閃く。

神の左手悪魔の右手(ギャラリーフェイク)』を手に入れたことが、これで判明した。

 私の『お前の物は俺の物(ジャイアニック エゴイスト)』の条件の一つに「能力をじかに(映像などでも構わない)目撃している」というものがある。

 もしコルトピさんが他に能力を持っていたとしても、私が見たことがあるのは神の左手悪魔の右手(ギャラリーフェイク)だけ。

 故に、必然的に私が手に入れる能力は神の左手悪魔の右手(ギャラリーフェイク)に限定される。

 

 試しに部屋に飾ってある花瓶に手を触れ、神の左手悪魔の右手(ギャラリーフェイク)を発動する。

 花瓶はそっくりそのままもう一つ増えた。

 花瓶の場所を移動させる。

 コピーの位置を具体的に見ずとも把握することができた。

 円に関しては……まあ、これ以上調べるのは今度でいいか。そこまで大きなものを複製する機会が近々訪れるとも思えない。

 

「やっぱり、コルトピの能力みたいだね」

 

 シャルナークさんが一部始終を見て、そう呟く。私は頷いた。

 

「コルトピさんが今際の際に、私に能力を遺してくれたんだと思います……」

 

 悲しい。泣かない。悲しい。泣かない。歯を食いしばる。

 

「エイラ、僕を占ってもらえる?」

 

 唐突に、シャルナークさんがそんなことを言い出した。

 占うこと自体は、それは構わない。でも、このタイミングで。

 

「……シャルナークさん、まさか」

 

「念のためだよ。それに実際問題、未来の話も気になるしね」

 

 念のため。万が一シャルナークさんが命を落とすような場面に遭遇した時に、私に能力を遺すため。

 

「占いを、それだけを求めているのであれば私は喜んで占います。でも、もしご自分の命が危うい時に私に能力を遺すためだと僅かでも考えているのなら、私は、占いたくない、です」

 

 これ以上、蜘蛛の足は(もちろん頭も)失いたくはない。そのためなら私は何でもする。

 パクノダさんのことを思い出した。

 自分の能力を遺せるなら死んでも構わないと思われるのは困る。それは、嫌だ。

 

「そんなに深く考えなくていいって、念のためなんだから。僕は僕自身がこれからどうなるのかを知りたい。できれば、蜘蛛の行方も。そもそも、僕自身の能力は遺したところでそれほど役に立つ能力とも思えないしね。だから、シンプルに、僕はエイラに占ってほしい」

 

 シャルナークさんと目が合う。彼は逸らすことなく見返してきた。

 ……私には、断る理由は、ない。

 

 応接室のテーブルを挟んで向かい合って座り、カードをテーブルの上に広げる。

 カードをシャッフルする。その間、シャルナークさんは黙ってその動作を見ていた。

 

「どうぞ、一枚引いてください」

 

 そして彼が引いたカードを開いてもらう。

 

『塔』の、正位置。

 

「……このカードは、破滅を意味します。予期しない事件によって、滅亡が訪れる。二十二枚あるカードのなかでも、最悪と言っていいカードです」

 

「なるほど。じゃあやっぱりエイラに能力を遺す方向でも、ちゃんと考えておいた方がいいかもね」

 

 シャルナークさんは懐から、ケータイを取り出した。

 

「これが僕の能力。これを使って……」

 

「やめて!」

 

 失うのは嫌。もうこれ以上失うのはいや。

 コルトピさんのことを思って耐えていた涙があふれ出す。

 

「いやだ、もう聞きたくない。もうこれ以上団員がいなくなるのはいやだ。私は一人になりたくない。一人はいやだ。いやだ。いやだ!」

 

「エイラ」

 

 冷たいシャルナークさんの声がした。きっと私に呆れたんだろう。

 呆れられたっていい。たったそんなことで、失わなくて済むのなら。

 

「エイラ、僕の能力を君が知った所で、僕が死ぬわけじゃない。そして、何よりも君自身が一番わかっているはずだ。能力を遺すことによって、蜘蛛が生き延びる確率が上がる。足の一本を失ったとしても、蜘蛛が生き延びることが最優先。そしてその蜘蛛の中にはエイラ、君も含まれる。僕はね、エイラ、最悪でも団長と君が生き延びられれば蜘蛛は復活できると思っている。そのためにも、君が僕の能力を知っていることは必須」

 

 そしてシャルナークさんは、手に持ったケータイを私に示した。

 

「……これが、僕の能力。アンテナを刺したターゲットをこのケータイで操作することができるようになる。アンテナを具現化できるのは三本が限度」

 

 反対の手で具現化したアンテナを私に見せる。二本。

 

「このアンテナを自身に刺すことによって、自動操作モード(オートメーションモード)で敵を倒すことができる。ただし自覚することは出来ないから、具体的に敵を倒せるかどうかは終わってみないとわからないし、手加減なんかも出来ない」

 

「シャルナークさん、能力の説明は私には不要です。私は『お前の物は俺の物(ジャイアニック エゴイスト)』で手に入れた能力を『舞い踊る二十二の使徒(ダンシング メジャー アルカナ)』で使用した時点で、その能力の詳細を知ることができます」

 

「知ってるよ。それでも、ちゃんと説明しておきたかった。これは僕のワガママだけどね」

 

 そして彼は、アンテナとケータイを消した。

 いずれも具現化したものだったのだろう。つまり彼は、具現化系と操作系のハイブリッド。

 

「シャルナークさん、あなたは」

 

「これ以上の言葉は必要ない。僕はエイラの占いの結果を覆すために尽力するし、エイラは自分の思うがままに行動すればいい。で、僕はどうすればいいのかな? マチや他の念能力者と交代で警護に付けばいいのかな?」

 

 会話の終わり。これ以上のやり取りを、シャルナークさんは望んでいない。

 

「……はい。私と、マチさんと、今警護についているハンゾーさんを合わせた、念能力者としての警護。そこに加わってもらいます……シフトは私が組みますので、それに従ってください」

 

「了解。団長やフランクリンたちとの連絡は任せていい?」

 

「はい。きっともうすぐ……団長さんたちとヒソカが接触します。警戒だけ、しておいてください」

 

『愚者』は使えないので推測にはなるが、それでも団長さんとヒソカの接触はもう目前。

 大きな衝撃に備えよう。私には、そのくらいしかできることはないから。

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