二十二の使徒   作:海砂

80 / 87
第八十話

 非常に残念なお知らせです。

 ワタクシ、強化系が一番苦手でした。

 それにプラスして体質的なものもあるんだろうけども。

 頑張っても頑張っても筋肉がなかなかつかない! 畜生!

 この世界に来た時から知ってたけどさ!

 それでも心の師匠に近付くべく頑張ってるの!

 

 悔しいのでつま先立ちしながら気配もオーラも断ってバチャエムの背後にそっと立ち

「うふふ私メリーさん、今あなたの後ろにいるの」と囁いたら冷や汗流してた。ざまぁ!

 この世界にもメリーさんの怪談あるのね。

 想像以上にうまく驚かすことができたのでちょっとだけすっきりした。

 本当は透明になれたらもっとよかったんだけどね。

 振り向いても誰もいないとかきっと最恐だよ。

……透明人間とタロット、何とかこじつけられないものか。

 

 

 

 そして夕方。

 結局私は一睡もせずに筋トレに励み、リョウジとバチャエムも修行に明け暮れていた。

 少しくらい仮眠をとった方がよかったかな……まあ、いいか。

 一晩くらい寝なくても何とかなるだろう(晩じゃないけど)。

 日付が変わるまでにはあと少しある。

 その間に王子も含めて相談して、トンネルの行き先を決めておこう。

 王子と、マチさんと、私と、ゲレゲレと。

 警護兵二人は王子の部屋で引き続き念能力の修行に専念してもらう。

 シャルナークさんは居間に居座ったまま動こうとしなかった。パソコンオタク。

 

「私は特に行きたいところも思い当たる場所もないので、エイラさんたちで自由に決めてもらって構いません」

 

 今必要な行き先、あるいはこの能力のを知るための手段を考える必要がある。

 

「ロップ、実はほかに私たちの知らないナイショの能力を持ってたりする?」

 

 ロップは首をふるふると横に振る。

 これは、無いということではなくわからないという意味なんだろうと思う。

 長い耳がふよふよと上下左右に動いて可愛らしい。その耳の後ろの後頭部を思い切り吸いたい。

 

 ロップは王子の背後に逃げてしまった。何でよ。そろそろ懐いてくれてもいいじゃないの。

 

 

「第一層は王族、第二層は貴族や金持ち、三層以下が一般市民で五層で蟻が蠢いているようだが、他に情報はあるのか?」

 

「第三層から五層にかけて、三組のマフィアが暗躍しています。それぞれチョウライ王子、ツェリードニヒ王子、ルズールス王子がケツモチをしています。もしかしたら組長クラスは二層より上にいるかもしれませんが確証はありません」

 

 組長たちの顔は見たことがないので愚者で探索はできない。

 

「ケツモチがいなくなったらマフィアはどうなるんだろうね?」

 

「野良になるか新たなボディガードを探すか、どちらかはわかりませんが、その二択でしょう。組長以下組織としてはまとまっていますので崩壊することはないと思います。するとすれば組長・若頭・ケツモチを全て失った時ですかね。ちなみにエイ=イ一家とツェリードニヒ王子はすでに決裂しているので、エイ=イ一家は野良状態です」

 

 組一つをそっくりそのまま奪うという手もないことはない、できる可能性は限りなく低い。

 特にエイ=イ一家は手に入れたところで身の内に核爆弾を抱え込むことになりかねない。

 他の二つの組だって明らかな利を提示しないことには忠誠心など期待できないだろう。

 義理人情を重んじる任侠映画の主役級ヤクザなんてフィクションの世界にしかいないのだ。

 

……ん、ここも一応フィクションの世界になるんだろうか?

 とはいえハンター世界で義理人情を求める方が間違ってるよね。

 主役格であろうとネームドであろうと気軽に人は死ぬ時ゃ死ぬ。

 良くも悪くも、それがこの世界。

 

 

「王子たちの関係性は?」

 

「第一から第五までの上位王子たちが組むことはないでしょう。特にカミーラ王子はツベッパ王子に対して憎しみに近い感情を抱いていました」

 

 占いの時の様子を思い出したのかマチさんがなるほどといったような表情を見せる。

 このことについても私がカミーラ王子の記憶を読んだことに気づいたのだろう。

 

「現状チョウライ王子、ツベッパ王子、タイソン王子、ハルケンブルグ王子、カチョウ王子、フウゲツ王子、ワブル王子は休戦協定を結んでいます。とはいえ他を敵に回す覚悟さえあればすぐにでも一方的に破棄することが可能でしょう。フウゲツ王子が真の意味で信頼できるのはカチョウ王子だけだと考えます」

 

「ほかに、繋がる可能性のある王子はいるのか」

 

「ハルケンブルグ王子がツェリードニヒ王子を尊敬しているとか何とか……今話した休戦協定以外で私が知っていることはその程度です」

 

「名前があまり出てない王子……ベンジャミン王子、ルズールス王子、マラヤーム王子については?」

 

「ベンジャミン王子は立場上、軍をその指揮下に置いていますので、誰ともつるむことはないでしょう。あとの二人は……正直、マラヤーム王子の念獣くらいしかわかることはないです」

 

「ああ、あの太ったドラゴンみたいなのか」

 

 ルズールス王子は原作で見る限り何か微妙にいい人っぽい感じだったんだよな……ワンチャン仲間に引き入れられないだろうか。

 ハンゾーかクラピカを通じてバショウと連絡とってみるか。

 でもそれは明日以降の話。今は今夜トンネルを繋ぐ先。

 

 

 私たちのターゲットはヒソカあるいはカキンのお宝。

 直でヒソカのいる場所には行けるけど、間違いなくただの無駄死にだよね……。

 ワタシ蜘蛛ジャナイデスヨー、はさすがにそろそろ無理がある。 

 お宝の方は正直なんもわかってないに等しい。

 国王のいる場所にトンネル繋げたら……まあ蜂の巣よな。

 一人でいる所を狙えれば対話できる可能性はあるかもしれないけど、残念ながら私の『愚者』では顔を見たことのない人間の位置を知ることはできない。

 せめて誰かいるかどうかだけでもわかればいいのに、無理か。

 そもそも国王が一人になることなんてないか。トイレくらい?

 

 

 あるいは時期的にはすでにノブナガさんたちとマフィアはそれなりの関係を築いている。

 紹介という形で私が、組長はともかく若頭のオウあるいはヒンリギを目視しておくのは悪くない選択肢かもしれない。

 目視云々は置いといて、ひとまずノブナガさんたちと連絡を取ってみるか。

 フランクリンさんも一緒にいるはず。

 

 私はスマホを取り出してぺぺぺとメールを打った。

 相手はノブナガさん。

 あのメンツの中で話がある程度まともに通じるのはノブナガさんかフランクリンさんだ。

 そしてフランクリンさんは蟻との戦闘で消耗している可能性がある。

 ので、ノブナガさんに送ってみた。

 

『今どんな感じですか?』

 

 

 既読がついてからの返事が遅い。あの人、文字打つのメチャクチャ遅いんだ。忘れてた。

 画面を見ながら待っているとスマホから音楽が鳴った。ラ・カンパネラ。

 

『おう、オレだ』

 

……文字を打つのが面倒になったんだな、ノブナガさん。直接電話をかけてきた。

 

「通話はできる状態ということですね。こちらの状況はフランクリンさんを通じてある程度はご存じかと思いますが、そちらの状況はいかがですか」

 

『第11王子の警護だっけか? そのくらいしか知らねーけどな。こっちはマフィアと組んでエイ=イ一家を殲滅中だ。ヒソカを見つけるまでの手遊びみてーなもんだが』

 

「ヒンリギさん、あるいはオウさんは今ノブナガさんの近くにいますか?」

 

『あん? なんでその二人のこと知ってんだ? ……まあいい、ヒンリギは自分らのアジトに戻って情報収集中、オウは知らんが、多分事務所に戻ってるだろう』

 

「シャア=ア一家の事務所には昨日私も行きました。"右の扉の中身"の始末とシャルナークさんを迎えに」

 

『ああ、あの虫どもはあそこに入ってたのか。ということはシャア=ア一家とハンター協会にはつながりがあるな、正確に言えばパリストンか』

 

「あれ、パリストンのこと、ノブナガさんに話してましたっけ」

 

『お前オレのことバカにしてんだろ。協専とパリストンと蟻の関係は周知の事実だろうがよ』

 

 そうなのか……。ハンター協会、色々と情報がだだ漏れてるな。

 トップが死んだせいか、それとも副会長の故意なのか。

 ノブナガさんが自分からそんな情報取りに行くとは思えないから団長さんあたりから聞いたのかな?

 

『とりあえずオレらはエイ=イ一家のアジトの情報をもってヒンリギのところに向かってる最中だ。具体的には4層。』

 

「わかりました。今晩0時にそちらへ向かいます。移動手段の詳細はあとでお伝えします。今現在、旅団の4名以外に同行者はいますか? あと、フランクリンさんは無事でしょうか」

 

『いや、いねえな。フランクリンも無傷だ。詳しいことはまた後で、てか。じゃあな』

 

 返事をする前に電話を切られた。別に問題はない。

 これで今夜の行き先は決まった。

 

「今夜行くのはノブナガんとこ?」

 

「はい、それと……おそらくですが、シュウ=ウ一家のアジト」

 

「それなら単独行動には抵触しないな、あたしは王子の護衛をしながらこの部屋で待っていることにするよ、こいつらの面倒を見ながらね」

 

 彼女が親指で示した先には、小さな鉢植えに向かって必死にオーラをやり取りしているバチャエムと、バラの花びらを一枚一枚念入りに観察しているリョウジがいた。頑張れ。

 

「私も留守番ということなんですね」

 

 王子とロップが同時に頷く。

 

「ゲレゲレは私のボディガードでついてきてね」

 

「がぁうあ!」

 

 今夜の方針が決定した。日付が変わるまで、あと一時間弱。




上を目指すなんて大それたことは今は言わない。
降格だけはしないでくれ……!

というわけで明日はサッカー観に行ってきます。勝て勝て勝て勝てホームやぞ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。