二十二の使徒   作:海砂

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第八十二話

「こいつは『戦う占い師さん』じゃねえか。まさかこいつも旅団の一員なのか?」

 

「ああ、最近仲間になった」

 

 のこのことヒンリギのところへついていったら入口で通せんぼされました。

 デスヨネー。不審者がアジトに気軽に出入りできるのイクナイ。

 その場にいた旅団の全員が私もメンバーだということを保証して、ようやく一緒に中へと入ることができた。

 

「なるほど……うちのオファーに応えてもらえなかったのは、すでに旅団に加入していたからというわけか。確かに掛け持ちは難しいな、というか幻影旅団がありながらうちのオファーを受ける理由が見当たらねェ」

 

 ……どうやら知らない間にシュウ=ウ一家からも、私にオファーがあったらしい。

 数が多かったし名乗らないマフィアも多かったんで、全く記憶にはないんだけれど。

 

「それで、エイ=イのアジトは二層下部中央か……。三層と二層の間はそれ以下と違って警備が非常に厳しい。シュ=ウの構成員であれば行き来は可能だが、あんたたちだけだと移動するのは難しいだろう」

 

「これまでも協力してるんだから今更これでおしまいなんて言わねえよな?」

 

「さすがにそこまでは言わん。下部構成員を使って引き続きヒソカの所在は探っている。これはシャア=アとも合同でだ。五層をシャア=ア、四層と三層をウチが洗っている。もっとも五層は今は正直それどころじゃないだろうがな。ガチの抗争にならなければ以降も見つかるまで続けるつもりだし、恐らくモレナは一層にいることが確定だから抗争にはならねえ」

 

 蟻の情報はヒンリギにも伝わっている……ま、そりゃそうか。

 一般人以外には一通り伝わっているとみていいだろう。

 

 抗争の条件ってなんだったっけ。組長が一層か二層(ドンパチ殺り合った現場から隔離された場所)にいれば大丈夫なのかな?

 モレナの顔が分かれば居所もわかるんだけれど。マフィアの顔なんて知らない。

 

「オレたちは引き続きモレナの居場所を探りつつエイ=イ一家を殲滅していく。具体的にはここからシュウ=ウ一家の隠し通路を使って二層へ行き、エイ=イのアジトへ向かう。アンタたちはどうする? オレたちと一緒に行くならオレの顔でパスできるし、ここから別行動だって言うんなら止めはしねェ」

 

「ざけんな、エイ=イには相当イラついてんだ。悪いがあいつらの首を獲るまでは付き合ってもらうぜ」

 

……うーん、私がフウゲツ王子に思い入れがあるのと同じくらい、ノブナガさんもエイ=イ一家に対して(逆の意味で)思い入れがあるみたいだな。

 後の三人は若干引いた目で彼を見ている。

 

「あの……私は一層への移動手段を確保していますし、もうそろそろ戻らなくてはならないので一緒に行動することはできません。エイ=イ一家の方は皆さんにお任せしますね」

 

 ものすごい目でヒンリギに睨まれた。何でだ?

 ほかの四人もそれに気付いたようで、眉をひそめてヒンリギを見つめている。

 

「……すまん、階層を飛び越える能力者の想定をしていなかったから少し驚いた。確かに言われてみればあり得るし、だとしたらモレナが現在一層にいるからと言ってドンパチの時にこちらにいなかったと立証ができなくなる。エイ=イの構成員に似たような能力持ちがいる可能性もあるからな。これで抗争が始まる目も出てきた。始まってしまえばアンタらはエイラさん以外、抗争の間中抜けられなくなるし、下部構成員を使えない事態もあるだろう」

 

「下部構成員の件は問題ありません、ヒソカの位置は把握できる。それに関してはマフィアの力は必要ないです。けれどエイ=イ一家を殲滅するまで、四人はそちらと一緒に行動する方がよさそうですね」

 

 今度は私だけが気づく程度に、一瞬だがまたしてもヒンリギに睨まれた。

 なんだろう、私ヒンリギに嫌われるようなことでもしたっけか。

 何か変なこと言ったかな。ヒソカのこと? ヒンリギはすでにヒソカと接触できている?

 だとしたら余計なことを言ったかもしれない。

 すでに交渉を終えているとしたら、私が彼の計画を引っ掻き回す可能性が高い。

 というかシンプルに、旅団に恩を売れなくなる。

 すなわち、エイ=イ一家と旅団を衝突させられなくなる可能性が出てくる。

……まあ、そこは大丈夫だとは思うんだけれど。なんかノブナガさんキレてるし。

 後の三人も含めてエイ=イ一家を潰すこと自体には異論ないみたいだしね。

 

「シュウ=ウ一家の方はそれで構わねえか?」

 

「無論だ。ただ、できるならば奴らとやり合うのは三層か二層でにしといてくれると助かる。あまりシマを荒らしたくはないからな」

 

 四層がシュウ=ウ一家のシマ。まあ、無傷に越したことはないよね。

 

 エイ=イ一家はその特性上、相互協力型の集団行動形式はまずありえない。

 モレナが一人一人に能力を与える。

 その後、レベルが一定値に達するのを同時にできなければ相互協力型を形成するのは難しい。

 他者のオーラを使用して強大な力を使う、という程度ならあり得るかもしれないけれど。

 つまり彼らは単独の能力者。種類は豊富だろうけれどその力には限界がある。

 団長さんの指示、単独行動禁止。これはそのままエイ=イ一家への対処へと通ずるものがある。

 その旨を四人に伝えた。

 首を傾げられた後、「よくわからんが単独行動禁止は引き続き有効だろ」とか言ってた。

 そもそもノブナガさん単独行動してるじゃん。

 突っ込んだら、三人で突っ込もうとしたところ、ヒンリギが単独で行ったことも踏まえて罠の可能性が高いからあえて一人で彼のあとを追ったらしい。

 状況によっては残りの二人も罠にかかるつもり満々だったんだとか。

 なにさ、それなら私だって多少は単独行動アリなんじゃないの? ダメ? あ、そう。

 

 フランクリンさんはシャルナークさんと同様、五層で蟻にバラけさせられた。

 最初に分断された時を除いて、蟻にそれほど強力な者はいなかったというのが彼の見解。シャルナークさんと同じ。

 そもそも念能力者は蟻の中には存在しなかった、と。

 ならばなぜコルトピさんは殺されたのか。やはり数は少なくても能力を持つ蟻が存在するのだろうか。

 前世が念能力者であったならば、繭から羽化した直後に念を使える蟻がいてもおかしくはない。

 蟻はシンプルに、人類に比べて肉体が強靭。

 数の多さで押せば旅団を分散させることくらいはできるかもしれない。

……もしかして、そんな蟻の集団を操作できるほどの能力者が存在する?

 流星街で蟻の巣コロリを行った時、操作されていた蟻を退治したことがあった。

 一匹であれば、私ですら簡単に退治できた。

 けれどそれが、数十匹なら? 場合によっては数千匹なら?

 この船に積まれた繭の数は二千。

 

「……ラ」

 

 二千匹を同時に操作できる能力? あり得ない。

 けれど条件付きであれば、複数操作することは可能かもしれない。

 そもそもパリストンはなぜ大量の繭をこの船に載せたのか。

 単純に揉め事を起こしたかった、わけではないだろう。

 エイ=イ一家の……なんだっけ、三日月マークの人。

 あれくらいの脳みそと能力であればその可能性もあったかもしれない。

 けれどパリストンは違う。あの人はそこまで馬鹿じゃない。

 パリストンの能力って出てきてないよね。あの人何系?

 なんとなく変化系か操作系っぽいなとは思うけれど。

 彼が蟻を操作してこの船を牛耳る? ……ないな、そんなの楽しくない。

 

「……イラ」

 

 ちなみにこの世界においてパリストンの声は高橋広樹さんです。なんでやねん。

 高橋広樹さんの声といえば私の中では城之内 死す! デュエルスタンバイ! でおなじみの城之内克也の声。

 キャラの声、この世界だとバラバラなのよね。

 ゴンは松本梨香さんの声だったし、キルアは三橋加奈子さんの声。

 クラピカは沢城みゆきさんの声だったし、レオリオは藤原啓治さんだった。混乱。

 

「エイラ! てめー聞けやコラァ!!」

 

 フィンクスさんに思いっきりグーで殴られた。首の骨折れるかと思った。

 

「な、なんでしょう」

 

「とりあえず今からさっきの美術館まで一緒に戻って、オレらはそこからエイ=イ一家を潰しに行く。お前は一層に戻る。それでいいかって聞いてんだよコラ。文句あんのかコラ」

 

 ヤンキー怖い。無言で私は首を縦に振りまくる。

 

「おし、じゃあ行くか」

 

 ヤンキー怖い。マジ怖い。今度から逆らわないようにしておこう。




今回のBGM:Einstürzende Neubauten『Halber Mensch』
      UP-BEAT『inner ocean』
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