「ヤラッ! ネッ……、ダッ……!」
ヤラネーダが広大な砂浜をぶっ飛んでいった。
どーん……!
ヤラネーダは、砂煙を立てて静止していった。
サマーはローラたちの前に降り立った。
まるで当たり前のように。さっきまで行方がわからなくなっていたことなど、嘘だったかのように……。
彼女たちは呆然と見つめていた。
ローラも、さんごも、みのりも、あすかも、それはきっと共通の想いのはずだった。
「ローラ……!」
「え……」
「やる気パワーを! お願いっ!」
ローラは表情を引き結んでいった。
「オーライ!」
カバンからアクアポットを取りだしていく。
「マーメイドアクアポット……!」
倒れているヤラネーダに、ボタンをひと押し。
「サーチ!」
画面の中で、ヤラネーダの体内に水色の〈やる気パワー〉が煌めいた。
「水色!」
ポットを勢いよくかざしていく。
「やる気パワー! カムバック!」
ぽわん、ぽわん……。
柔らかな音とともに、やる気パワーが画面へと吸いこまれていった。
ローラは、神妙な面持ちでグーサインをした。
「……よっしゃーーっっ!!」
嬉しそうな雄叫びが上がっていった。
「ハートルージュロッド……!」
くるくるくる、と、ロッドを取りだしていく。
ちゅぱっ……。
ルージュへと口づけすると、そこからはハートのエネルギーが、さらに風船のように膨らまされていく。
ばーん……!
小さな太陽の完成だ。
『プリキュア……!』
サマーがロッドの先端を、太陽のエネルギーへと繋げていった。
『おてんとサマー……!』
ぐぐぐ、と、思いきり、振りかぶって……、
『ストライクッ!!!』
太陽のエネルギーが、勢いよく飲みこんでいった。
そして……!
「ビクトリーッ!!」
どーん……!!!
ヤラネーダは、カラフルな光とともに四散した。
ヤラネーダに取りこまれていたヤシの木が、泡の中でふわふわと宙を舞い、元の姿へと戻っていった。
ぱぁんっ!
アクアポットから、やる気パワーが開放された。
極彩色の雨が、煌めきながら、辺りの闇を切り裂いていく。
サマーは立っていた。
にこやかに振り返っていく、その表情……。
「ローラ……」
見ていることしかできなかった。
「ありがとっ!」
白い歯が、無邪気な笑顔とともにのぞいていった。
「くるる〜ん……!」
くるるんが砂浜の上を飛び跳ねていった。
「……まなつ」
さんごの口がやがて開いていった。
「まなつ――!!」
さんご、みのり、あすかが、堰を切ったようにサマーへと駆けだしていった。
「どこ行ってたんだよ、お前ぇ……!!」
「わあ、あすか先輩、顔怖いぃ!」
「あぁ……!?」
「ケガはない? 平気……?」
「うん、平気! ありがと、みのりん先輩!」
「心配したよ、もお……!」
「ああ、ごめん! わ、泣かないでよ、さんごぉ……!」
悲喜こもごも、がやがやと弾んでいく。
ローラはその会話に混ざることができずに、立ちつくしていた。
実感が湧いてこなかった。
ずっと求めていた瞬間のはずなのに、何故だかどうしていいのかわからない。そんな自分がいた。
「全く、どれだけ心配したと思って……!」
あすかがわしゃわしゃと頭を掻いていった。
「ああ、ごめんごめん。私も、すっごく心細くて……。でも、こうして会えたんだし! 私、すっっごく嬉しいよ!」
あすかの頬が緩んでいった。
脳天気なやつ……。
でもまあ、相変わらずで、よかった。
「ローラもっ!」
サマーがにこやかに振り返った。
「ごめんね……?」
例えようもない感覚だった。
何だろう? この感じ。
思わず顔が地面を向いてしまう。
「……ローラ?」
抑えていた感情が、ふつふつと湧き上がってくるのを感じた。
「何よ、それ……」
もう、止まらない。
止まらないや――。
「馬鹿ぁっ!!!!!!!」
沈黙が舞いこんでいった。
やる気パワーの雨が降り止むと、辺りには静寂が落ちていった。
見たこともない表情だった。
いつものような温かさを、その時だけは感じなかった。
光が弾けるように、サマーの変身が解けていった。
まなつは、真っ白なワンピースに、簡素な刺繍が施された、まるで民族衣装のような格好をしていた。
「……」
全員が言葉を失っていた。
いろいろなことが起きすぎて、どうすればいいのかわからなかったのだ。
ウオオォォーーーーーッ!!!
大勢の雄叫びが聞こえてきた。
遠くから、言葉にならない声。
自由を取り戻した、そんな喜びに満ちたような……。
「何だ……!?」
あすかが身構えていった。
「みんなのやる気が、戻ったんだ……」
まなつの口が開いていった。
「……どういうこと」
みのりが尋ねていった。
「ついてきて! 案内するよ……!」
まなつは、心配しないでいいよ、と言う風に笑っていった。
「おともだちのしま!!」
※
暗闇に、ざくざくと足音が響いていった。
波音が打ち付けるように、彼女たちの音を包みこんでいく。
「おい、そろそろ街道の明かりが見えてくるはずじゃ……?」
あすかが砂に足を取られながら尋ねていった。
「ちょっと、人里には思えない……」
みのりが暗闇の中を見回していった。
「ここって、本当にあおぞら市……?」
さんごは不安を隠せないようだった。
「もうすぐだよ……! 私もさぁ、いきなり来たときは怖かったんだけどねぇ!」
まなつは意気揚々と笑っていった。まるで会話が噛み合っていかない。
ローラは後ろからそんな四人を見つめていた。
その明るい表情と、けして交わることはなかった。
「……あっ」
まなつが声を上げた。
浜辺の奥に、たいまつの炎が揺れていた。ひとつ、ふたつ、みっつ。どうやら、わらわらと沢山近づいてくる。
「マナァっ!!」
一人の少年が、やがてまなつへと抱きついていった。
「マナァ! あはは……!!」
少年は、まなつと同じような服装をしていた。
「よかった……! やる気が戻ったんだね! よかったぁ……!」
二人は、くるくると回ったり、じゃれ合ったり……。
あすかたちは呆然とその様子を眺めていた。
「……なぁ」
あすかがやっとの思いで口を開いた。
「なにいー?」
「その子は……?」
十歳くらいに見える少年は、警戒したのか、まなつの背後へと身を隠してしまった。
「ああ、アニだよ?」
いや、誰なの??
言葉がまるで出てこない。
アニはじっとまなつの背中をよりどころにしていた。
「……マナ」
アニが不安そうに見上げていった。
「大丈夫だよ、オトモダチっ!」
まなつは安心させるように笑っていった。
「オトモ、ダチ?」
アニは視線を戻していった。
状況が飲みこめないのは、この場合は、あすかたちも全く同じだったのだが。
「マナァーーっ!!」
たいまつの灯りが、ひとつ、またひとつとやって来た。今度は、十、二十を超える子どもたちが、ざわざわとまなつたちを取り囲んでいく。その親と思われる大人たちも、やがて慌てたように駆けつけてきた。
「ええ……!?」
さんごとみのりが、あわあわと周りを見回していった。
大小入り混じった人影が、ざわざわと、たいまつの灯りに揺れながら、取り囲んでいった。
マナ!
マナァ!
マナぁー!!
全員が、まなつと同じような服装をしていた。
まなつは笑いながら、彼らと話し合っていた。何故だか、聞きなれない言葉と通じ合っているようだ。
あすかたちは、彼らの好奇の視線にさらされていた。
じろじろ、きょろきょろ……。
「おいっ!!」
あすかがたまらず声を上げた。
「大丈夫だよっ!」
まなつが振り返る。
「おともだちっ!!」
心から彼らを信じている、そんな笑みだった。
※
明るい夜空へと、足音が響いていった。
浜辺の集落を、村人たちに囲まれて、まなつたちが歩いていく。
砂浜の上に建っている、簡素な木造の家々。油を満たしたランプが、その軒下で、頼りなげな灯りを浮かべていた。
ローラたちの視線は、留まるところを知らなかった。村人たちとともに、やがて大きな家の中へと入っていく。そこには、大勢の子どもたちが、まるでヒーローの帰りを待っていたかのように集まっていた。
「マナァー!」
「あはは! みんな、ただいまぁ……!」
あすかたちは目を疑った。
優に千人を超すであろう村人たちが、歓迎の眼差しで、こちらを見つめていたのだ。
まなつは、彼らと屈託なく語り合い、笑い合っていた。
聞きなれない言葉と、自分たちが普段使う言葉が違和感なく絡み合っている光景は、何だか不思議な感じがした。
白い顎ひげをたくわえた初老の男が進みでていった。
「あ! カブロスさん! ただいまぁ!」
カブロスと呼ばれた男は、まなつの後ろのあすかたちを見ると、やや戸惑いの表情を浮かべていった。そのしわがれた表情は、普段、どこか近寄りがたそうな威厳を備えている。
「カブロスさん! この村の村長さんだよ!」
まなつが紹介していった。
カブロスは、やがて聞きなれない言葉で話しかけていった。
「大丈夫! おともだちっ!」
まなつが笑うと、カブロスは、かかか、と愉快そうに笑いだしていった。
あすかたちを、招待席のような、織物が敷かれたテーブルへと案内してくれる。
そうこうしているうちにも、続々と村人たちは集まってきていた。
聞きなれない言葉が、あちらこちらと、縦横無尽に駆け巡っていく。
「本当にどこなんだ、ここは……」
あすかが呆然と呟いた。
「聞いたこともない言葉」
みのりが面食らったように見回していく。
「絶対、あおぞら市ではないね……」
さんごが当たり前のことにツッコんだ。
あすかたちは観念したように、テーブルへと座りこんでいった。
子どもたちのテーブルで、まなつが腕相撲の試合をしていた。
激しい音を立てて、アニに勝利を収めていく。
優しい笑顔が浮かんでいった。
二人の屈託のない笑い声が上がっていく。
「……」
ローラは、テーブルの隅で、どこか寂しそうにそっぽを向いた。
「わっ」
一人の少女が座りこんでいた。
少女は、ローラの膝上のくるるんを見つめていた。
両者のにらみ合いが続いていた。
くるるんが緊張したように固まっている。
「……あの」
ローラはしびれを切らした。
少女は、さっとくるるんを持ち去っていった。
「え、ちょっと……!?」
くるるんが、腕の中で表情をゆがめていく。
少女は、新しい玩具を手に入れたかのように、まなつのもとへと駆け抜けていった。
「……あれ?」
まなつが振り返った。
「そっかぁ! サラは、くるるんのことが気に入ったんだね!」
サラがくるるんを手渡していく。
まなつは、腹話術のようにその背後へと回りこんでいった。
「こんばんは、サラちゃん! 私、くるるん!」
「くるる~ん!!」
本当に喋った……??
子どもたちは、笑顔を浮かべて、わいわいとくるるんの周りへ押し寄せてきた。
「くるる~ん……!」
くるるん、大人気である。
「えへへ! みんな、くるるんと仲良くしてあげてね!」
まなつはそう言うと、あすかたちのもとへとやって来た。
「どしたのー? みんな、なんか元気なくなーい?」
「いや、元気、っていうか……」
あすかが応えていった。
「ここは、本当に、どこ?」
さんごが呆然と尋ねた。
「……うーんとねぇ」
まなつは腕を組んでいった。
「ごめん。わかんない!」
たはは、と笑っていく。
「でも、みんな悪い人たちじゃないよっ!」
「いや! それはそうなんだが……!」
あすかが、そうじゃない、という風にツッコんだ。
「いつまでも、ここにいる訳にはいかないよ」
さんごが言った。
「あおぞら市のみんなが心配してる……」
みのりが正論を述べる。
「そっかぁ……! どうしよう……!?」
まなつの表情がゆがんでいった。
「え、どうやって来たのかわからないのか……!?」
あすかが驚愕した。
「うぅ、わかんない……。何か良い匂いがしたと思ったら、突然、あの浜辺に……」
身体が縮こまっていく。
「……マナ?」
アニと子どもたちがやって来た。
まなつたちの、その不安げな表情を見上げながら。
「わかんないんだったら、しょうがないでしょ」
ローラの言葉が響いていった。
「ぐずぐず考えたって仕方ないわ……。わかんないんだったら、ここにいればいい。わかるまで、ずっとね」
まるで、まなつ一人に言い放つように、その淀んだ目を見つめている。
「そっかぁ……、ローラ……! ありがとう……っ!」
まなつの表情が、だんだんと明るくなった。
ローラは、今度こそ、一切の口をつぐんでいった。
「……?」
まなつは、ローラの顔を不思議そうに見つめていた。
ぐい、ぐい。
アニが、まなつの袖を引っ張った。隣で、元気を取り戻したことを、しっかりと感じ取っていたらしい。
「ん! よーし! やるかぁー!?」
まなつたちは、もといたテーブルへと走って戻っていった。
「あいつ、本当にわかってるのか……?」
あすかが呆れたように呟いた。
さんごとみのりも、ため息をつくか、苦笑しか浮かべられない。
ローラは、たいまつの灯りを、どこか曇った表情で眺めていた。
広間がしんとなると、村人たちを代表するように、カブロスが進みでていった。
演説を始めるかのように、何やら聞きなれない言葉を話しだしていく。
あすかたちは聞き入っていた。だが何を言っているのか、さっぱりわからない。
「マナ」や「オトモダチ」といった言葉が、ただただ断片的に聞こえてくる。
演説を締めくくるかのように、カブロスが杯を掲げていった。それに応えるように、広間中の村人たちが、持っていた杯を掲げていく。
カブロスは、何かを唱えだしていった。
村人たちが、一斉に歌い始めていく。
あすかたちは、もう戸惑うことしかできなかった。
まなつは、何故か、子どもたちとともに、その歌を楽しそうに歌い上げることができていた。
初めて聞くはずなのに、どこか懐かしさを感じさせるようなその歌は、昔から、この場所で歌い継がれてきた、民謡のようなものなのかもしれなかった。
その歌声が、明るい夜空にまで響き渡っていくと、この特別な夜を、どこまでも温かな祝福で満たしていった。
※
簡素な小屋に、穏やかな風が吹き抜けていった。
「この小屋は、勝手に使っていいの……?」
敷物だけが広がっている部屋で、ジャージ姿のみのりがまなつに尋ねていった。
「うん。空き家だから、自由に使っていいんだって……!」
まなつは、純白の服をひらひらと舞わせて、まだ祭りの余韻が抜けないようにはしゃぎ回っている。
「ふふっ! みんなでお泊りなんて、夏合宿の時以来じゃなーい?」
あすかが、まるでツッコむ気が失せたかのように息を吐いた。
「まあ、そうなんだが……」
「まなつは、あの人たちの言葉がわかるの?」
さんごが不思議そうに尋ねていった。
「ん? わかるよー?」
まなつが不思議そうに答えていった。
「いや、どうして……?」
みのりが速攻で追求した。
とても英語で赤点を取っていた人間とは思えない。
「えー?」
まなつは腕を組んでいった。
「……何となく?」
あすかがとたんに唸り声を上げていった。
「はああ……??」
「……それよりさあ! みんなはカブロスさんからもらった服、着ないのー?」
さんごが手に抱えている服を、まじまじと見つめていった。
「……これ?」
「いや、私たちはジャージでいいよ……」
あすかが苦笑を浮かべていった。
「民族衣装、形状・模様が実に興味深い」
みのりは眼鏡を光らせ、とっくに服の観察に入っていた。
「よく見たら、ちょっと可愛いかも……?」
さんごが顔を近づけていった。
「でしょでしょー?」
まなつがファッションショーのように、ポーズをキメ始める。
「あ、この部分の模様、もっと前面に出した方が……!」
「あっ、かわいい! さっすがさんごぉ……!」
気になり始めたのか、あすかがやがて服へと視線を移していった。
相変わらず、みのりは服の観察に夢中だった。上半身をすっぽりと服の内部に収めている。
いつの間にか、いつもの部活の時間のような、柔らかな時間が流れていた。
ローラはちっとも面白くないように、その様子を見つめていた。
「ローラも着なよぉ! 私とお揃い……っ!」
天真爛漫な笑顔が迫っていった。
「……いい」
ローラはそっぽを向くと、歩き始めた。
「ローラ? どこ行くの……?」
ローラは振り向かなかった。
「風にあたってくる」
外の闇へと、音もなく消えていく。
「……ローラ」
まなつは闇の先を見つめていた。
さんごたちも、やがて押し黙っていった。
「……あいつ」
あすかが揺れるランプの灯を見ながら、そっとこぼした。
まなつは、その先を探るように、あすかのことを見つめていた。
※
瞬いている星空に、波の音が響いていった。
ジャージ姿のローラが、とぼとぼと波打ち際を歩いていく。
「……何よ」
呟くと、その歩みが止まっていった。
「……どうしちゃったのよ。……私……」
自分にもわからないその灰色の感情に、暗い波の行き来が揺れた。
誰かの脚が見えた。
青白い身体が、ぼんやりと浮かび上がっている。
あどけない少女が、あえかな微笑みを浮かべて……。
ローラは振り返った。
そこには誰もいなかった。
「……」
繰り返す波音に、誰かの声が入り混じって聞こえてきた。
「……ローラぁー……!!」
それは紛れもなく、まなつの声だった。
「……ローラ……!!」
まなつは、砂利の音を立てながら、立ち止まった。
ぜえ、ぜえ……。その身体をゆっくりと上下させている。
ローラは背を向けたまま、黙っていた。
振り返ったら、永遠に自分がわからなくなりそうだった。
「……ごめんね」
まなつは呟いた。
「……私、ローラの気持ち、全然わかってなかった」
大切な想いがあふれだしていく。
「心配させて、本当に、ごめんね……!!」
波音が響いていった。
「……」
ローラは口を開いていった。
「……違う」
振り返らずに、まだ海を見つめている。
「私、今まで、あんなにも、海が恐ろしく見えたことなかった」
海の一点が、月明かりを受けてうっすらと輝いていた。
「……でもね」
その表情には、哀しげな笑みが浮かんでいた。
「もう、今は……」
まなつは、何も言えずに、立ちつくしていた。
まなつは、背後からローラを抱きしめていった。
優しい沈黙が、ゆるやかに落ちていった。
「……どうしたの」
ローラが、戸惑いを押し殺すかのように言った。
「……わかんない。……でも、……こうしていたいの」
まなつは、言葉を押しだすように伝えていく。
「……」
沈黙が解かれていった。
波の音が、暗闇を包んでいった。
「……心配、したんだから」
ローラの言葉が漏れた。
「……」
まなつは黙っていた。
「……何で、置いていったの」
「……ごめん」
ローラの手が、ゆっくりと重なっていった。
「……もう、一人にしないでよ」
「……うん」
二人は、月明かりに照らされていた。
「……もう、いなくなったりしないで……」
「……ごめんね……」
離れたところから、さんご、みのり、あすかが、優しい笑顔を浮かべて見守っていた。
浜辺の奥。月光を受けて、青白く浮かんでいる少女が、満面の笑みを浮かべて、闇の中へと軽い足取りで消えていった。