大広間の食堂では、朝食を終えたあすかたちがゆったりと食休みを取っていた。
辺りはもう人気もまばらになっていて、村人たちが、何やら高揚したように会話を交えながら、次々と広間を後にしていった。
「……何か、あるのかな」
そうあすかが呟いた頃、村人の女性が、あすかたちがきれいに平らげた朝食の器を、優しい笑みを浮かべながら次々に回収していった。
「あ……、ありがとうございます」
あすかは、とっさに言葉を続けた。
「あの……、ほんとうに美味しかったです! ごちそうさまでした……!」
女性は、それに応えるように可愛げに頷くと、同じようにさんごたちの器を回収していった。
「ごちそうさまでした……!」
さんごたちが、口々にお礼を言った。
女性は、再び柔らかな笑顔を浮かべると、ゆっくりとその唇を動かしていった。
彼女が紡ぎだした言葉は、あすかたちの意識を、予想もつかなかったところへと、一瞬で誘っていった。
「アリガトウ」
あすかたちは、呆然となっていた。
さっき、ローラの口から漏れた「おいしい」という言葉のように、一同は最初、その言葉が何なのかをまったく理解できなかった。
女性は、ゆっくりとあすかたちを見やると、まるで何事もなかったかのように、別のテーブルへとぽつぽつと歩いていった。
「……」
みのりは、その後ろ姿を、まるでどこかで見たことがあるかのような目つきで、じっと見つめていた。
広大な海原を背景に、自分から遠ざかっていく、あのシュレオと呼ばれた少年の後ろ姿が、どこか重なる気がしていた。
とんとん……。
「ひゃあ!?」
突然、背中をつつかれたさんごが振り向いた。
そこには、昨夜まなつからサラと呼ばれていた七歳くらいの女の子が、じっと立ちつくしながらこちらを見つめていた。
くるるんを大事そうにその腕に抱えて、その目をつぶさに輝かせながら。
「……あなた」
ローラが呟いた。
サラは、じっとさんごの顔を見ながら、黙っていた。その後ろには、サラの友だちと思しき二人の少女が、同じように、その表情をわくわくと変化させながら、さんごのことを少し恥ずかしそうにちらちらと見やっていた。
「私……?」そう呟くように、さんごが自分を指さした。
サラたちは、抑えきれない好奇心をその表情いっぱいにたたえて、さんごの髪留めのリボンを一様に見つめていた。
「くるる~ん!」
サラの腕の中から、くるるんが勢いよく飛びだしてきた。
「わっ……」さんごが、くるるんをとっさにつかまえた。その左右のリボンから垂れたおさげ髪が、まるで小動物のしっぽのように、可愛らしくふわふわと宙に舞った。
サラは、それを見るなり、口元をぎゅっと結んで、ゆっくりとその一歩を踏み出した。
その視線は、きらきらと、さんごの瞳をまっすぐに捉えている。
「……なあに?」
さんごは、やがてサラたちに優しく微笑んだ。
サラは、ひとさし指を静かに持ち上げると、唇を動かして、その言葉を紡いでいった。
「カ、ワ」
その指先は、さんごのリボンを、その髪に触れるくらいまで近くで示していた。
「カワイイ」
一同は、言葉を失っていた。
さんごは、もはや驚きを通り越して、感激の域にまでその感情を震わせていた。
「そう……、『かわいい』! すごぉーいっ……!」
興奮したように、小刻みな拍手が、さんごの両手から繰り出されていく。
あすかたちは、みんな一様に驚いていたが、みのりは、また一同とは異なる衝撃を覚えていた。
「……言葉が」
自分でそう呟いたことに、みのりは少し遅れてから気がついた。
みんながどう感じているのかは、わからない。
でも、私には……、何となくわかる。
全く異なる文化の中で、言葉が、意味が、どうしてだか、いま通じてしまっている。
それは、どう考えたって不可解なことで、到底理不尽なことのはずである。
彼らにとっても、……私たちにとっても。
でも……。
まるで、どこか当然でいて、どこか、そうなることが自然とでも言うかのように……、嬉しさや、反面、安心を覚えてしまっている自分がいる。
何だろう。これ。
私たち……、これから、いったいどうなってしまうのだろう……?
「……少しずつ、覚えていってるのかもな」
あすかが、優しい表情で呟いた。
「でも、……こんな急に……?」
みのりが、抑揚のない声で食い下がる。
ローラだけは、冷静にサラたちを見つめていた。
「こんなの……、まなつのしわざに決まってるじゃないっ」
すねるように、ローラの言葉が、辺りのテーブルへと響いた。
「ただいまあーっ!」
噂をすれば……。一同が振り向くと、広間の入口で、まなつが元気よく手を振っていた。
「まなつ!」一同が口々に叫んだ。
「あれ……? みんな、どおー? おいしかったでしょー!」
まなつが、あすかたちの空になっているテーブルを見ながら笑みを浮かべた。
「なかなか、美味だった……」
みのりが、意味もわからないままに感想を漏らした。
「えへへ、やっぱりいー?」
さんごが、苦い表情を浮かべながら言った。
「どこ行ってたの……?」
まなつは、元気を爆発させるように、手を振りながらやってきた。
「え? お水汲みいー!」
その表情からは、悪気のわの字も感じられない。
「お前は……、どこにでもばかすかと行くんじゃないっ!」
あすかの眉間に深いしわが刻まれていった。
「ええ~……? どうしてぇ~……?」
まなつは、まるで助けを求めるかのように、さんごたちの方へと振り向いた。
さんごは、苦笑いをべったりとその表情に貼り付けていた。
みのりは、ただそのめがねをぎらぎらと光らせているだけだ。
そして、ローラは、まなつを、ただ澄ました表情でじいっと見つめていた。
「え~ん、ローラぁ。あすか先輩がいじめてくるぅ~」
「くるるん」
「ぁんだってぇ!?」
ローラは、抱きついてきたまなつに、ただただ冷ややかな視線を送っていた。
その視線は、時が経つにつれて、だんだんとその鋭さを増していく。
「……ローラ?」
まなつが顔を上げると、ローラがじいっと目を細めて、冷たい表情で呟いた。
「……いなくなったりしないで、って」
まなつの表情が、とたんに変わっていった。
「もう、置いていったりしないで……、って」
ぶつぶつと、まるで呪文のように、ローラの言葉が溢れだしていく。
「もう、一人にしないで、って――」
「わっ! ごっ、ごめん! は、反省してる……! 反省してるからあ……!」
まなつは、わたわたとその身をよじり、ローラの前で必死の弁解を披露していった。
あすかのお説教よりも、何よりも、こちちの方がよほど効果的だった。
あすかたちは、ローラの前でたじたじになるまなつに、次第に苦笑を浮かべていった。
サラたちは、そんなまなつたちの姿を見て、ただただ楽しそうに、無邪気に笑い声を上げていた。
「――!」
建物の外から、男の声が大きく響いてきた。
まるで呼びかけるようなその掛け声が、一度、二度と続くと、広間中の村人たちが、次々に大きな広間を後にしていった。
「今度は、何だ……?」
あすかが、辺りを見ながら、まるでうんざりしているかのように呟いた。
サラたちも、まるでお祭りに行くかのように、互いに顔を見合わせて、はしゃぎながら、その場を後にしていった。
一同は、がらんとなった広間に、いつの間にか取り残されていた。
「……」
まなつが、ぷるぷると身体を震わせて、その場に立ちすくんでいた。
「……まなつ?」
嫌な予感を察したように、ローラが呟いた。
まなつは、湧き上がるわくわくを抑えきれないように、その眼を爛々と輝かせ、爆発せんばかりの期待とともにその口を開いた。
「ねえ……! 私たちも行ってみようよお……っ!」
もう我慢できない、と言った風に、まなつが勢いよく駆けだしていく。
「おい……、こらあ!? 言ったそばから……、待てやあーっ!!」
ローラが、大きく腕を振りかざして、その後を追っていった。
再び、広い室内にあすかたちは取り残された。
「……まったく」
あすかが、まるで唸るようにこぼした。
だが、その口元には、やがて笑みが浮かんでいった。
「……行くか」
あすかの視線の先には、同じように、やれやれと口元を緩ませた二人が、すでにテーブルを立っていた。
※
広い波打ち際には、村人たちが、どこまでも列をなして広がっていた。
強い日差しと、絶え間なく繰り返す波音にさらされながら、村人たちは、彼方へと浮かぶ水平線をただじいっと眺めていた。
浜辺に連なる家々から、一人、また一人と、人びとが列に加わって、その規模をさらに大きく、太いものへとしていく。
海面にうねる波が、照りつける日差しを反射させて、人びとの身体に鈍く光を当てていた。
「……」
広間から出てきたまなつたちは、その光景に、まるで魅入られたように、立ちつくすことしかできなかった。
「――マナぁーッ!」
遠くの列で、アニがぶんぶんと手を振っていた。
まなつが嬉しそうに笑うと、まるで引き寄せられるように、アニのもとへと駆けていった。
あすかたちも、やがてその後へと続いていった。
ざわざわ……。
村人たちが、まるでお互いを刺激するかのように会話を弾ませている。
まるで、これから始まる何かに、強く期待する気持ちを抑えきれないかのように。
「何なんだ、一体……」
あすかが、辺りを見回しながらこぼした。
たとえ、その疑問に答えられる者がいなかったとしても、そう呟かずにはいられなかった。
「なんか、運動会の開会式みたいだね……! くぅう、トロピカってる……っ!」
瞳を輝かせたまなつが、あすかの隣で、まるで破裂寸前の風船のようにその言葉をかみしめた。
「くるる~ん!」
くるるんが、砂の上で興奮したように飛び跳ねている。
「トロ、ピカ……?」
アニが、まなつの隣で、初めて聞いたであろうそのおかしな言葉を、ゆっくりと復唱した。
その表情に、やがて自分でもおかしくなったように、崩れるような笑顔が浮かび上がった。
コーン、コーン……。
二回、乾いた木同士がぶつかり合うような音が響いた。
列の中央を見てみると、他の村人たちよりも丈の長い、厚手の白い衣服をまとった男性が、手に持った流木の破片を再びたたきだした。
コーン、コーン……!
再び音が響き渡ると、男は流木を、砂の上へと静かに放りだした。
村人たちは、ただ一心に、自分たちの目の前に広がっている海を見つめていた。
まるで、波間にひっそりと漂っている何かを、懸命に見つけだそうとでもしているかのように。
白い顎ひげをたくわえた、カブロスと呼ばれた村長の男が、列の中央で、何かを祈るように目を閉じだした。
それに従うように、周りの村人たちも次々に目を閉じていく。
やがて、辺りには、力強い波の音と、ばたばたと耳を鳴らす風の音しか聞こえなくなった。
まなつたちは戸惑っていたが、アニがまなつの服の袖を引っ張って、「真似をして」とでも言う風に目を閉じると、やがてゆっくりと目を閉じていった。
暗闇の中……、流木を放った男の、ゆったりとした唄のようなものが聞こえてくる。
広大な海に向かって、何かを唱えるような……、まさしく運動会の選手宣誓のような雰囲気だ。
村人たちは、目を閉じながら、その一言ずつ流れてくるような祈りの言葉を、ゆったりと聴いていた。
どこまでも、波音と、祈りの声と、穏やかに吹き抜けていく風の音が、彼女たちの意識を深く、遠くへと運んでいった――
ドッパーン……!
突然、大きな波が、まなつたちの意識を現実へと押し戻した。
村人たちが、それを合図としたように、突然どこかへと走り出していく。
まなつたちは、思わず目を剥いた。
浜辺に連なっている大きないくつかの小屋の中へと、村人たちが、大人も子供も関係なく、次々に飛び込んでいく。
しばらくして、大人の男たちが、小屋の奥から、細長い舟のようなものを、力強い掛け声とともに引っ張ってきた。
それは、隣の、また隣の小屋からも、同じく、何槽も、何槽も、である。
その舟を、「待ってました」とでも言うように、残りの村人たちが周りに集まって、同じように力を合わせて引っ張っていく。
村の子どもたちが、舟を運びやすいように、次々に、小さな丸太を舟の行く先へと敷き詰めていく……。
ごろごろと音を立て、細長く、大きな舟が丸太の上をすべりこんでいった。
まなつたちは、その光景に、まるで一体の大きな生物が動いているかのような錯覚を覚えていた。
ザァン……。
微かな波音とともに、やがて舟が海面へとすべりだした。
他の舟体も、同じように波の上へと乗りだしていく。
その度に、村人たちから歓声と期待のどよめきが響き渡った。
十人ほどの男たちが、周りの村人たちに鼓舞されながら、意を決したようにそれらの舟へと乗りこんでいった。全員、肩に大きな巻き縄や、モリなどを抱えて、まるでこれから長い戦いにでも赴くかのように、引き締まった表情をたたえている。
まなつが、思わず声にならない雄叫びを上げた。
それから、一人ひょこひょこと、その舟の一槽に近づいていく。
「ねえねえっ! わたしたちも乗せてえーっ!」
一人の男性が、瞳を輝かせるまなつを見て、やがて残念そうに首を振った。
「ええぇ~……?」
まなつは落胆の声を上げると、その後も何やら男と話していた。
しばらくして、まなつは粛々とローラたちのもとへと帰ってきた。
「……何て?」みのりが尋ねた。
まなつが、しょぼくれた表情で口を開く。
「なんか……、あの舟には、男の人しか乗れないんだってぇ……」
ローラが訝しげにツッコむ。
「いや……、どうしてわかるのよ、だから」
「村の決まりみたいなものなのかも」
みのりが呟くと、海上に揺れる男たちを乗せた十槽ほどの舟が、やがて海の上をゆっくりとすべるように進みだした。
オールを懸命に漕いでいく男たちの掛け声が、力強く辺りに響いていく。
浜辺に残った人々は、彼らを見送りながら、やがてその掛け声に合わせるようにして、一斉に歌を歌い始めた。
昨夜の宴会のときとは違った、まるで、これから戦いに赴く者たちを、勇ましく、そしてどこか切なげに送りだすかのような曲調。
まなつや村人たちが見守る中、男たちを乗せた舟の群れは、ゆっくりと、海の彼方へと、徐々に、徐々に小さくなっていった。
舟がやがて見えなくなった頃、村人たちは、それぞれ、まるで役目を終えたかのように、次々と浜辺を後にしていった。
まなつたちは、まるで夢を見ていたかのような感覚で、呆然とその場に立ち尽くしていた。
ぐい、ぐい。
アニが、まなつの服の袖を引っ張って、こちらを見上げて笑っていた。
「マナっ!」
その無邪気な笑顔が、夢の中にいたまなつを、一気に現実の浜辺へと引き戻した。
「あはっ!」
やがて、まなつの表情に明るい笑顔が浮かび上がった。
「……ねえ」
みのりが二人に声をかけた。
「残りの村の人たちは、どうなるの?」
まばらな浜辺を見渡しながら、みのりが尋ねた。
「え……? ああ……、残りはねえ、えーっと……」
まなつが、答えに窮したようにアニを見た。
アニが、聞きなれない言葉で、まなつに何やら話しかける。
まなつは、その言葉に納得したように……、
「それぞれ、家で勉強したり、遊んだりい……、ごはん作ったり……、遊んだりするんだってぇ!」
「……それ、お前だけじゃないのか?」
あすかが呆れたように応えた。
「えへへ……、そんなことないってぇ……」
まなつたちは、今まで見ていたものを全て忘れていくかのように、いつもと変わらない調子で、お互いに会話を繰り広げていた。
くい、くい。
「わっ……!?」
さんごが振り向くと、さんごのジャージの裾を、サラとその友達の二人がぎゅっと掴んで、こちらを見上げていた。
その瞳は、相変わらずきらきらと輝いて、じっとさんごの瞳をのぞいている。
サラは、そのまま、「一緒に遊ぼう」とでも言う風に、ぐいぐいと、さんごを引っ張っていった。
「わわ、ちょっとぉ……!?」
さんごが、困りながらも、ちょっとずつ、ちょっとずつ、サラたちの方へと引っ張られていく。
「あはは……! さんご、きっと気に入られたんだね!」
サラたちが、さんごのリボンを指差して、再び純粋な眼差しをさんごへと向けた。
「わ、わかった、わかった……! 私が作れるものなら、みんなに作ってあげるよお……!」
言いながら、みるみるうちに、さんごは浜辺に連なっている集落の方へと、徐々に小さくなっていった。
まなつが、満面の笑みでさんごたちを見送っていた。
「マナ……、マナぁっ!」
アニが、まなつの手を、満面の笑みで引きだした。
サラたちのことを見て、自分たちも早く遊びたくなったのかもしれない。
「ん! わかった。じゃ、行こっか……」
まなつが言い終わらないうちに、アニと、その五、六人ほどの友人たちが、まなつの手をぐいぐいと引っ張っていく。
「ちょっと、まなつ……!?」
ローラが、遠ざかっていくまなつに、思わず声を上げた。
「ローラ……、ごめんねっ、また後で……!」
まなつが、申し訳なさそうに手を振りながら、やがてアニたちと一緒に走りだした。
「……必ずねえーっ!」
やがて、まなつたちは、どこまでも広がっている浜辺へと、徐々に小さくなっていった。
「……」
ローラは、黙って、まなつたちの背中を見送っていた。
じりじりとした日差しが、やがてあすかたちだけとなった浜辺を、寂しく照らしていた。
「……とられちゃったな」
あすかが、気遣うようにローラへと呟いた。
「……大丈夫。……私たちがいる」
みのりも、純粋な瞳を浮かべて、あすかの後に続いた。
「は、はああ……!?」
ローラがムキになって、すかさず声を上げた。
「ち、違うわよっ……! 私は、別に……!」
しかし、ローラはすぐに落ち着きを取り戻すと、やがてその表情に、透き通るような色を浮かべた。
「……いいのよ」
ローラは、穏やかに、切なげに揺れる瞳を静かにたたえていた。
「まなつは、あれで」
静かな時間が、三人の間に流れていった。
「……よっし」
あすかが、やがて空気を変えるように声を上げた。
「……ここは、先輩である私たちが、この島のことを調べよう」
「え……?」
「何の手掛かりもないんじゃあ、不安だろ……? どうせ、いつかはここから出ていかにゃならないんだ」
「今日の部活は『探検部』。……燃える」
あすかとみのりが、その後も、場を盛り上げんと、次々と会話を重ねていった。
「……」
少なくとも、ローラのことを落ち込ませまいとする意図は、当のローラ自身には見え見えだったにもかかわらず、だ。
ローラは、しばらく黙って聞いていたが、やがて口元ににやっと微笑を浮かべた。
「……仕方ないわね」
いつもの元気が、少しずつローラに戻ってきていた。
「そんなに、あすかとみのりが寂しいっていうんなら……。付き合ってあげるっ!」
その笑顔に、思わず、あすかとみのりからも嬉しそうな笑顔がこぼれた。
「ま……、私は次期女王なわけだし? みんなの気持ちには寄り添ってあげないとねえ~」
「調子のいいやつめ」
「でも、それでこそローラ……」
「そーゆうこと。さ! 二人とも、私についてきなさいっ!」
「おい、待てっ!?」
走り出すローラを、慌てて二人が追いかけた。
広大な浜辺には、真夏にも見紛う日差しが、依然としてじりじりと照りつけていた。