世界を見た。数えられない世界を見た。
それは、彼らが終わらせないよう足掻いた結果だった。
美しくも儚い、悍ましい生存競争の結果だった。
私は彼らと共に歩んだだけだった。
だから、もう十分なのだ。
長く連れ添ってきた、右目を隠した女性。18歳までしか生きられなかったはずの彼女は、旅路の果てに人並みの寿命を手に入れた。その彼女が、涙を流しながら私を見ている。
──ああ、お迎えの時か。ようやく理解した。彼女の声が聞こえないのも、彼女の姿がぼやけて見えるのも、そういうことかと理解する。
はて、私は一体、何処に招かれるのだろうか。キガル、ヴァルハラ、エデン、アヴァロン、影の国、閻魔亭、サーヴァントユニバース、はたまた──英霊の座。
自分で考えときながら、英霊の座はあり得ないと思う。彼女のおまけならまだしも、私単体ではありえないだろう。
旅を思い出す。これが走馬灯と呼ばれるものか。懐かしい風景が流れていく。
ふと、笑う。彼女に笑ってほしいから。彼女と笑って別れたいから。
思いが伝わったのか、彼女は笑ってくれた。涙を浮かべながら笑ってくれた。
惜しむらくは「さようなら」を言えないことだ、と思い。私の意識は深く深く沈んでいった。
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何かに、呼ばれる。レイシフトのような、引き込まれる感覚。誰かに呼ばれている──否、呼び声ではない。私宛でもない。それでも、
「──って」
「──ばって」
同時に気付く。息ができない。が、苦しくはない。まるで、息をしていないのが普通であるように。
「──が出ました。あともう少しですよ!」
何が出たのだ、と思った瞬間、違和感に気付く。耳が、耳の周りに圧迫感がない。思えば、それ以外は圧迫感がある。と同時に、耳が出ているほうへ押し出されている。なるほど、出ているのは私か。
身体が、圧迫感から解放される。熱い、熱い感覚が肺に入る。それは呼吸となり、叫び声となり、鳴き声になる。
必死に叫び、泣き、ようやく理解する。
今、この瞬間。何の因果か、この
さて、そうなると疑問点は一つ。へその緒を切られ、母の胸に抱かれた私は思う。
前世の私は、一体何者だっただろうか、と。